2019 Fiscal Year Research-status Report
Optimization of the RNAseq analytsis to identify valuable variation of the breast cancer
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18K08564
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坂東 裕子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00400680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 恵美子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40344882)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乳癌 / molecular signature / RNAシークエンス / がん特異的変異 / ネオ抗原 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、患者腫瘍における様々な遺伝子異常に基づいたmolecular signatureが新たながん診断の指標となりつつあり、乳癌領域においても、個々の患者に最適な治療法を見出すことがますます重要となっている。特に、再発乳癌、トリプルネガティブ乳癌など予後不良のサブタイプについては、膨大な遺伝子変異情報を基に、化学療法・免疫療法の治療標的となりうる変異を効率よく検出する手法の開発が急務であるが、既存の解析手法で一連の解析を行うのは容易ではない。本研究では、乳癌患者の正常乳腺組織-腫瘍組織のペアサンプルの転写産物をRNAシークエンス(RNA-Seq)により配列決定し、がん特異的変異および、治療標的となりうる変異を効率よく見つけ出す解析手法を確立する。RNA-Seqに基づいた解析では実際に腫瘍組織で発現している変異タンパク質の配列を検出できるほか、融合遺伝子等、治療の標的となりうる分子の同定も1回の解析で明らかにできる。今後、癌の個別化治療法の開発において、免疫療法が有望視されているが、本研究で得られる配列情報には、各患者の腫瘍組織におけるネオ抗原候補配列および、その発現量データも含まれる。そのため、本研究で得られる成果は、新規薬剤標的候補の同定だけでなく、効果的な個別化免疫療法の確立にもつながると考えられる。 本研究では、乳がんの正常-腫瘍ペアサンプルを使用してRNA-Seqによる腫瘍特異的変異の同定法を確立する。各患者の腫瘍に固有のネオ抗原、融合遺伝子を複数のソフトウェアを用いて探索し、一連の解析方法を最適化する。また、RNA-Seq 解析から得られた“actionable変異”の結果をDNAシークエンスから得られた結果と比較し、本研究の解析手法の有用性を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで7症例(正常各1サンプル、腫瘍部各2サンプル、合計21サンプル)のRNA-seqを行い、そのうちの6症例(1症例は死亡のため除外)については正常部・腫瘍部の全エクソンシークエンス(WES)を追加した。 正常・腫瘍部ともにRNA-seqのデータを用いて体細胞変異解析を行った場合、正常部で発現がないものについては変異を検出できず、偽陰性が非常に多いことが明らかとなった。そのため正常部にWESのデータ、腫瘍部にRNA-seqのデータを用いた手法で体細胞変異解析を行なった。これらの解析結果と、正常・腫瘍部ともにWESのデータを用いて行う通常の体細胞変異解析の結果を比較したところ、腫瘍部のRNA-seqでカバレッジがないものや、変異アレルが発現していないものについては検出できないことが明らかとなったが、そのような転写されていない体細胞変異はネオ抗原の候補としては適切ではないため、偽陰性は容認できると考えられた。 ネオ抗原候補予測はpVACseqというソフトウェアを用いて行った。RNA-seqとWESを組み合わせた解析では特に免疫グロブリン可変領域の遺伝子をターゲットとしたネオ抗原が多く検出され、これらはマッピングエラーによる偽陽性である可能性が高いことから、このような多様性に富む遺伝子についてはフィルターする必要があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seqを用いた解析手法で検出し、通常の体細胞変異解析では検出できなかったネオ抗原候補についてはサンガー法などで検証を行う。これらの結果を統合して、RNA-seqデータを用いてネオ抗原を同定する解析手法を最適化する。
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Causes of Carryover |
解析手法を最適化する目的で本年度はサンプル数を絞って解析を行ったため次年度使用額が発生した。次年度はさらに検体数を増やして全エクソンシークエンスや遺伝子発現解析を行い、検証のためのサンガーシークエンス等も行う。次年度使用額は、核酸抽出試薬・シークエンス受託費・シークエンス試薬に使用する予定である。また、2020年3月に会議及び出張を予定していたが、Covid19に伴う社会情勢により会議中止、出張中止となった。情勢を鑑みつつ、次年度に予定を再調整する。
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