2019 Fiscal Year Research-status Report
酸性微小環境におけるリンパ管内皮細胞の機能変化が癌のリンパ節転移を誘導する
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18K08580
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
中西 雅子 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60437382)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 酸性微小環境 / リンパ管内皮細胞 / 酸感受性受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌のリンパ節転移における酸性微小環境の影響を検討するため、ヒト正常リンパ管内皮細胞(HDLEC)を用い、pH6.4の培養液で刺激した際の遺伝子変化について検討している。これまではE-selectinに着目して検討を進めていたが、細胞のLotによる発現誘導の差が大きく認められたことから、ターゲットをVCAM-1に変更した。 HDLECに酸刺激を行うと、経時的にVCAM-1 mRNAの発現が誘導された。ウェスタンブロットにおいても発現の増加が認められた。このシグナルに関与する受容体を明らかにするため、Gタンパク共役型受容体の一つであるGPR4に着目した。siRNAによりGPR4をノックダウンしたHDLECでは、酸刺激に伴うVCAM-1 mRNAの発現誘導が抑制され、ウェスタンブロットにおいても同様の結果が認められた。同じく酸感受性受容体であるTRPV1やOGR1をノックダウンした場合には、このような効果は認められなかった。また、VCAM-1リガンドであるVLA-4を発現しているマウス悪性黒色腫細胞株B16F10は、酸刺激を行ったHDLECへの接着が有意に増加した。さらに、HDLECにVCAM-1中和抗体を処置した場合や、GPR4をノックダウンした場合には、酸刺激に伴う接着促進効果が阻害された。 また、ケモカインの一つであるCXCL6についても検討を進めたところ、HDLECへの酸刺激によりCXCL6のmRNA発現が誘導された。培養液中へのCXCL6の産生増加もELISAにより明らかとなった。これらの効果もGPR4のノックダウンによりmRNA、タンパク共に抑制されることが示され、CXCL6の発現誘導にもGPR4が大きく関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
E-selectinの検討を続けることができなかったが、酸刺激によるVCAM-1ならびにCXCL6の発現誘導について解析を進めることができた。また、様々な酸感受性受容体の関与を検討した結果、HDLECにおけるGPR4の重要性を明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
HDLECにGPR4を過剰発現させる実験がうまく行っていないため、導入遺伝子あるいは導入手法を変更するなどして検討を続ける。また、今後は、マウスのリンパ節転移モデルを用い、GPR4あるいはVCAM-1を阻害することによる転移への効果を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
概ね予定通りの使用であるが、残額については次年度の経費とともに物品ならびに試薬の購入費とする。
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