2018 Fiscal Year Research-status Report
緊急手術で使用可能な新規止血薬およびnectin-2を標的とした抗血小板薬の開発
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18K08587
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
上妻 行則 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (90550145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二宮 治彦 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10198533)
山本 隆敏 熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (10746233)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 血小板 / 止血薬 / 血小板機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、抗血小板薬であるアスピリン使用時においても重炭酸塩が血小板機能を増幅するか否かを明らかにし、新規止血薬の候補となるか検討することが目的である。本研究は、ヒト血液を用いる研究であるが、申請者の所属機関が変更になったため、熊本保健科学大学のライフサイエンス委員会に申請し、人を対象とする医学系研究に関する倫理審査において、研究計画の承認を得た。本研究の出発点は、申請者が神経内視鏡手術で用いられる人工髄液 (aCSF) およびその構成成分である重炭酸塩が血小板活性化を増幅することを見出したことにある。従って、まず aCSF を使用し、アスピリンによって抑制された血小板機能が回復するか検討した。Platelet rich plasma (PRP) を採取した後、アスピリン添加し、collagen で刺激すると血小板凝集能は約 25% に抑制されていたのに対して、aCSF の使用により50% 程度まで回復した。この傾向はADP で PRP を刺激した際にも認められた(アスピリン:50%, アスピリン + aCSF: 75%)。次に、洗浄血小板を作製し、同様の検討を行ったところ、アスピリン添加後、collagen で刺激すると約 10% 程度に抑制された血小板凝集能が、aCSF 添加により 40% 程度まで回復した。また thrombin で洗浄血小板を刺激した際にも同様の傾向が認められた。 次に、flow cytometry を用いて各種血小板活性化マーカーの測定を行った結果、phosphatidylserine (PS) 露出, 活性化 GPIIb、P-selectin 陽性率いずれにおいてもアスピリン添加により抑制されが、aCSF に使用により回復した。以上のことより、重炭酸塩を含有する aCSF はアスピリンにより抑制された血小板機能をも回復することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来本年度は、アスピリンなどの抗血小板薬を使用した際における血小板活性化への aCSF 及び重炭酸の影響を検討する予定であった。しかし、申請者の所属機関が変更になったため、前職で承認されていた倫理審査について現在の所属先に申請すると同時に研究環境の変化に伴い使用機材の変更、測定条件の変更などが生じたため、研究環境・条件のセットアップから開始した。人を対象とする医学系研究に関する倫理審査において、研究計画の承認を得た後、該当年度は、アスピリンおよび aCSF を使用したこれまでの予備検討の再検証を行い、測定機材・試薬が異なっても予備検討と同様に、アスピリン添加により抑制された血小板凝集能が回復することを確認した。 さらに、PS 露出, 活性化 GPIIb、P-selectin 陽性率など血小板活性化マーカーにおいても aCSF の使用により回復することが明らかとなった。現在は、抗血小板薬投与マウスによる出血を重炭酸塩の使用により低減できるか否かを検証すべく、動物実験計画書を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
抗血小板薬使用時における aCSF または重炭酸塩の血小板機能増幅効果を明らかにし、将来止血薬として使用するためには、より臨床に近い条件、すなわち臨床で使用される抗血小板薬;アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールを単剤または 2 剤併用下においてaCSF または重炭酸塩が血小板機能を増強するか検証する必要がある。従って、これまで実施していないクロピドグレル、シロスタゾール使用により抑制された血小板機能を aCSF または重炭酸塩が回復させるか検討する。さらにaCSF または重炭酸塩を止血薬として使用する際には aCSF または重炭酸塩使用による各組織への影響を検証する必要があるため、電子顕微鏡などを使用して病理学的・組織学的に評価する予定である。また、臨床への応用を考え、抗血小板薬を投与したマウスモデルにおいても aCSF または重炭酸塩の使用が血小板機能を回復するか否か、さらには出血時間に影響を与えるか検討する予定である。
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Causes of Carryover |
購入を計画した試薬(キット)が見積もりを依頼したところ、受注生産品のため納品まで数カ月要すること、本年度内に納品できないことが判明した。代替品の検討も行ったが、以前販売されていた製品(他社製)は現在販売中止となっており、本製品を発注しなければならない。本製品は本研究を申請する段階では予想されていなかった結果により急遽購入する必要が生じたものである。従って、次年度に予算を繰越し、発注・納品を行うため、次年度の使用額が生じた。
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