2019 Fiscal Year Research-status Report
内因性抗菌タンパクの潰瘍性大腸炎・回腸嚢炎への病態関与およびバイオマーカーの検討
Project/Area Number |
18K08611
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 和宏 東北大学, 大学病院, 院内講師(助教) (30569588)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 家族性大腸腺腫症 / 回腸嚢炎 / 抗菌タンパク / 抗菌ペプチド / RELMβ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で予定している内容については、当院での倫理審査委員会に研究計画書を提出して承認を得た。大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術後の潰瘍性大腸炎(UC)29症例、家族性大腸腺腫症(FAP)7症例の回腸嚢の内視鏡観察および回腸嚢粘膜生検を行った。内視鏡所見から、内視鏡的重症度(Pouchitis disease activity indexの内視鏡的炎症スコア)を判定し、UC8症例で回腸嚢炎の所見を認めた。回腸嚢炎発症例、あるいは、疾患によって、Resistin-like molecule beta(RELM-β)を中心とした抗菌タンパクの発現に差異があるのか、生検検体からRNAを抽出し、RELM-βのRT-PCRを行った。有意差は認めなかったが、UC症例において、回腸嚢炎症例は正常回腸嚢の症例とくらべてRELM-βの発現量が多い傾向にあった。また、有意差は認めなかったが、UC症例ではFAP症例よりもRELM-βの発現が少ない傾向があった。 一方、UCおよびFAPにおける大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術後の便を採取し、便のpHについて経時的に調べた。その結果、術後1年以上経過した症例では便のpHが大きく酸性に傾くことを我々は同定した。大腸全摘・永久回腸人工肛門造設術後の人工肛門からの排便のpHは経時的な変化は認めておらず、回腸嚢に便が貯留することによってpHが酸性に傾くようになったことが示唆された。これまでの研究で、回腸嚢の細菌叢は経時的に変化していくことを報告しており、細菌叢の変化によって代謝環境が変わり、短鎖脂肪酸のような有機酸が増加し、pHが低下するという仮説を我々は想起した。経時的な腸内細菌叢の変化について確認するため、今後、便中の16SrRNAを調べ、スーパーコンピューターを用いて解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
潰瘍性大腸炎・家族性大腸腺腫症の症例数も増えてきており、予備実験で抗菌タンパク定量も問題なくできるようになってきており、概ね計画書通りに順調に経過している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、回腸嚢における抗菌タンパクの発現を定量することで、回腸嚢炎の発症と抗菌タンパク発現との関係や、疾患別の抗菌蛋白の発現の際について検討を行っていく、また、今回の我々は、UCおよびFAPにおける大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術後の便を採取してpHの検討を行ったところ、術後1年以上経過した症例では便のpHが大きく酸性に傾くことを同定した。回腸嚢の細菌叢が経時的に変化していることが示唆される結果であり、経時的な腸内細菌叢の変化について確認するため、今後、便中の16SrRNAを調べ、スーパーコンピューターを用いて解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は、実験に用いる試薬の量が少なかったことにより、実支出額が予想よりも 少なくなった。次年度では回腸嚢内の腸内細菌叢を、便中の16SrRNAを調べ、スーパーコンピューターを用いて解析を行う予定であり、次年度に助成金をまわして使用する予定とした。
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