2018 Fiscal Year Research-status Report
肝胆膵領域がんにおける腫瘍応答性T細胞の同定と個別化がん免疫療法への応用
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18K08637
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
鈴木 利宙 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 特任研究員 (50530135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中面 哲也 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 分野長 (30343354)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肝胆膵領域がん / 自己腫瘍反応性の評価 / TCR遺伝子決定 / シングル細胞解析 / ネオアンチゲン予測パイプライン / 腫瘍内免疫環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、再発率の高い肝胆膵領域がんと転移性肝がんにおいて、これまで開発を行ってきたGPC3のような共通がん抗原に加え、ネオアンチゲンを標的としたがん免疫療法が有効か検証し、多様性を保持した固形がんに対し、有効ながん免疫療法を提案することを目的とする。2018年度、肝胆膵領域がん120症例を収集し、腫瘍内T細胞を回収し、自己腫瘍に対する応答をCD107a assayにより評価した。その結果、約半数の患者で自己腫瘍応答性分画を確認することができ、肝細胞がんでは他のがん種に比較し陽性率が高いことが分かった。興味深いことに、多重免疫染色により肝細胞がんの腫瘍内免疫学的環境を評価したところ、T細胞の増殖・活性化の指標のであるKi67陽性CD8+T細胞の腫瘍内浸潤と自己腫瘍反応性に関連があることわかり、in vitroで抽出した自己腫瘍反応性CD8+T細胞が、in vivoにおいても腫瘍局所で機能的である可能性が示唆された。 肝細胞がんならびに膵がん各1例について、CD107a陽性分画のTCR遺伝子をシングル細胞解析により決定し、さらに腫瘍内でのその頻度を測定した。その結果、自己腫瘍反応性分画の腫瘍内頻度は1%以下であり、大部分が非特異的浸潤である可能性が示唆された。今後、解析症例数を増やすと共に自己腫瘍反応性T細胞の腫瘍内での遺伝子発現パターンをTCR遺伝子配列と併せて解析することで、バルクの腫瘍内浸潤T細胞から腫瘍応答性分画を同定することが可能か、検討を進めている。 収集した患者の腫瘍における遺伝子変異ならびにその発現量を次世代シークエンスにより同定し、ネオアンチゲン候補の予測パイプラインを確立した。現在、ネオアンチゲン由来ペプチドを合成し、自己腫瘍反応性T細胞の認識するネオアンチゲンの同定を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、検体収集について、計画より早く予定収集症例数(肝細胞がん:30例、転移性肝がん:40例、膵がん:30例)に達することができた。また、それらを用いた自己腫瘍反応性の評価を行った。膵がんは、腫瘍組織が小さく評価できない症例が4割程度あり、今後の評価系を見直す必要がある。胆道がんについては、肝内胆管がんを中心に収集したが予定症例数には達しておらず、引き続き収集を継続する。 多重免疫染色による腫瘍内免疫環境の評価とin vitroの腫瘍反応性の関連性を、肝細胞がん20症例について評価した。その結果、in vitroで自己腫瘍に対し反応性が確認できた症例では、腫瘍内においても活性化CD8+T細胞の密度が高いことがわかり、in vitroの自己腫瘍反応性の評価の有用性を示すことができた。 今年度、10x Genomics社のChromiumを用いた、TCR遺伝子のシングル細胞レベルでの解析系を立ち上げ、TCRα・β遺伝子の全長決定、ならびにその頻度を測定できることを確認した。現在、TILのシングル細胞レベルでの遺伝子発現とTCR配列を同時に解析可能か、検討を進めている。次年度以降、解析症例を蓄積する。TCR遺伝子の再構築を行う目的で、T細胞へのエレクトロポレーション法によるTCR mRNA導入系の立ち上げを開始した。次年度以降、導入したTCRの細胞表面への発現系を確立する。 ネオアンチゲンの同定について、腫瘍組織の全エクソンならびにトランスクリプトーム解析からネオアンチゲンを予測するパイプラインを構築し、20症例(肝細胞がん10例、転移性肝がん、膵がん各5例)について予測を終了した。今年度、末梢血T細胞ならびにTILを用いたin vitroでのペプチド反応性の評価系を立ち上げ、肝細胞がんについて、各症例50ペプチドを目標にT細胞のペプチド反応性の評価を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、胆道がんについて収集を継続する。ネオアンチゲンの抗原性の評価について、予測したペプチド群の末梢血T細胞ならびに腫瘍内浸潤T細胞(TIL)の応答性の確認を継続して行う。また、分離した自己腫瘍応答性T細胞が認識する抗原の同定を並行して行う。ネオアンチゲンのみならず、分担者の中面らがこれまでに同定した共通がん抗原グリピカン-3(GPC3)やHSP105についても、認識するTILの分離ならびにその認識するペプチドの同定を試みる。これまでに、HLA-A02・A24についてこれらのがん抗原由来ペプチドが同定されているが、患者体内でTILが認識するエピトープについては明らかとなっていない。ネオアンチゲン予測と同様に、これらの共通がん抗原についてもそのエピトープを予測し、反応性の評価を行う。 腫瘍の免疫環境との関連について、引き続き肝細胞がんについて症例を蓄積するとともに、他のがん種についても多重免疫染色を行い、評価を継続する。 初年度に引き続き、自己腫瘍反応性または同定されたペプチド反応性TILの腫瘍内における頻度とそのトランスクリプトーム解析を行い、バルク腫瘍TILからの腫瘍反応性T細胞の分離マーカーを探索する。 自己腫瘍応答性TILやがん抗原ペプチド応答性T細胞のTCR遺伝子を決定し、それらを再構築し強制発現させるTCR導入T細胞の作製を行う。TCRα・β遺伝子をP2A配列で連結した人工一本鎖mRNAをエレクトロポレーション法によりT細胞やJurkat細胞に導入し、その発現を評価する。必要であれば、内在性TCRのノックダウンまたはCRIPAR-CAS9によるノックアウトにより、発現効率の増強を試みる。TCR遺伝子の発現ならびにその腫瘍反応性、抗腫瘍効果について、前年度までに樹立したPDXモデルを用いて検証し、個別化TCR遺伝子導入T細胞療法への応用の可能性を模索する。
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Causes of Carryover |
今年度、T細胞のシングル細胞解析について、用いるキットおよび解析条件の検討を行った。その結果により今後の解析方法を決定し、次年度以降に複数症例での解析を予定している。そのため、今年度、シングル細胞解析に予定していた費用を次年度以降に繰り越し、解析を行うこととした。
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Research Products
(6 results)