2019 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞癌の発育進展に於けるオートファジー・マイトファジーの役割と分子機序の解明
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18K08647
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池上 徹 九州大学, 大学病院, 講師 (80432938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
間野 洋平 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 肝胆膵外科医師 (10792244)
副島 雄二 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (30325526)
戸島 剛男 九州大学, 大学病院, 医員 (40608965) [Withdrawn]
本村 貴志 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (50719507)
吉住 朋晴 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80363373)
原田 昇 九州大学, 大学病院, 講師 (80419580)
伊藤 心二 九州大学, 大学病院, 助教 (90382423)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肝癌 / オートファジー / マイトファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーはオートライゾゾームにより障害された蛋白質の自己消化を介して細胞内エネルギーの維持あるいはタンパク質の供給によって細胞内器官を再構成することで細胞のホメオスタシスを維持する生体機構である。肝細胞癌症例のLC3免疫組織染色を行ったところ、腫瘍部にてBeclin-1、LC3-II、Atg5の高発現とp62の低発現を認め、オートファジーが活性化している肝細胞癌症例と非活性化症例が存在することが明らかとなった。オートファジーKOにて核の増殖能の低下(BrdU取り込み率の低下)、障害蛋白質の蓄積(p62蛋白質の蓄積)を認めた。その一因としては、p21蛋白質に起因する細胞周期の遅延(細胞周期G2やS期の減少、CyclinDの低発現)や、肝組織中ATPの低下、細胞老化の促進が考えられた。また、肝細胞癌臨床検体を用いてLC3の免疫組織染色を行ったところ、3cm以上の中大型肝細胞癌に於いてLC3陽性肝癌は陰性症例に比し有意に予後不良であった。すなわち非比較的径の大きい肝細胞癌に於いてはオートファジー活性化を示すものは自己細胞器官のリサイクルによるマテリアルの供給あるいはエネルギー産生により癌細胞の発育進展に関与している可能性が示唆された。さらに52例の肝細胞癌症例うおいてマイトファジーのマーカーであるミトフシンによる免疫組織染色を行ったところ、ミトフシン陽性群では有意に腫瘍サイズが大きいことが明らかとなった。また肝切除後の無再発生存率はミトフシン陽性群は陰性群に比し有意に不良であることが明らかとなった。一方マイトファジーのもうひとつの定量的マーカーであるパーキンを用いて免疫組織染色を行ったところ、こちらは肝切除後の無再発生存率に有意差は認めなかった。多変量解析ではミトフシン陽性(ハザード比3.86、p=0.01)はそれぞれ肝細胞癌に対する肝切除後の再発危険因子であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
a細胞内オルガネラの自己消化によるはアミノ酸の供給を介して細胞内エネルギー状態の維持を行うオートファジー、そして障害ミトコンドリアの選択的排除により健常ミトコンドリアによるエネルギー産生を維持するマイトファジーの2つの生体機構が肝細胞癌の発育進展に於いてどのように作用し、またどのような分子機構により関与しているのかを明らかにすることである。従来の肝細胞癌研究に於いては、肝細胞癌のゲノム解析や免疫学的側面からその発育・浸潤・転移を明らかにするようなアプローチが殆どであり、細胞のエネルギー代謝・エネルギー産生やミトコンドリアサイクルからのアプローチは殆どされてこなかった。本研究の学術的独自性と創造性は、オートファジー・マイトファジーという来と異なるアプローチから肝細胞癌の増殖進展のメカニズムを明らかにする。52例の肝細胞癌症例うおいてマイトファジーのマーカーであるミトフシンによる免疫組織染色を行ったところ、ミトフシン陽性群では有意に腫瘍サイズが大きいことが明らかとなった。また肝切除後の無再発生存率はミトフシン陽性群は陰性群に比し有意に不良であることが明らかとなった。一方マイトファジーのもうひとつの定量的マーカーであるパーキンを用いて免疫組織染色を行ったところ、こちらは肝切除後の無再発生存率に有意差は認めなかった。多変量解析ではプロトロンビン時間、血管侵襲陽性、輸血あり、そしてミトフシン陽性(ハザード比3.86、p=0.01)はそれぞれ肝細胞癌に対する肝切除後の再発危険因子であった。
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Strategy for Future Research Activity |
オートファジー・マイトファジーの存在をそれぞれLC-3およびミトフシンを用いて免疫組織染色を行い、臨床病理学的因子の相関を解析する。プレリミナリーではあるが3cm以上の肝細胞癌に於いてLC3陽性症例は有意に予後不良である傾向を示した。症例を追加し、腫瘍分化度・腫瘍による血管侵襲・肝内転移との関係を明らかにする。マイトファジーの指標としてミトフシンの他、PINK-1、パーキン、P62等のマイトファジー関連蛋白と腫瘍因子の臨床病理学的指標との関係の有無を明らかにする。以上によりオートファジー・マイトファジーが肝細胞癌の進展に如何なる意味を有するか明らかとなる。またヒト肝細胞癌株であるHuh7を低酸素環境(0.1%O2)下に培養し、GFP-LC3にて免疫組織学的染色を行うことでオートファジー活性を評価する。既に同培養系に於いて電子顕微鏡によるオートファゴソームの観察を行ってみたところ、低酸素環境に於いて明らかにオートファゴソームの形成を認めた。オートファジー関連タンパク質の発現を評価するために、低酸素培養0、0.5、1、2、4 時間後の培養肝細胞癌細胞を回収し、ウェスタンブロットにてBeclin-1、LC3-1/2、Atg5、p62 蛋白の発現を評価する。さらに細胞内エネルギー産生の評価としてオートファジー阻害剤である3メチルアデニンあるいはAtg4B-C74Aを導入したHuh7細胞株とコントロール群に於いて細胞内ATP濃度、ミトコンドリア膜透過性、ベータ酸化の指標としてベータハイドロキシブチレート、そしてミトコンドリアベータ酸化に関連遺伝子(中鎖脂肪酸アシルコエンザイム、カルニチン、L-脂肪酸結合蛋白)の発現をRT-PCRを用いて評価する。
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Causes of Carryover |
当初予定していたミトコンドリアベータ酸化関連遺伝子の分子生物学的評価の実験が当該年度では終わらなかった為。当初予定していたミトコンドリアベータ酸化関連遺伝子の分子生物学的評価の実験を次年度行う為に必要な試薬を次年度繰越金25,000円で購入する
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