2018 Fiscal Year Research-status Report
ミニ小腸を利用したヒト多能性幹細胞由来神経堤細胞の細胞治療への応用
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18K08666
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
菅原 亨 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 細胞医療研究部, (非)研究員 (70553460)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 神経堤細胞 / Hirschsprung病 / RET遺伝子 / CRISPR/Cas9 / ヒト人工多能性幹細胞 / ヒト胚性幹細胞 / 疾患モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
神経堤細胞(Neural crest、NC)は脊椎動物の発生過程で神経管と表皮外胚葉との間に形成される構造であり、そこから全身に細胞が遊走し神経・軟骨細胞・メラノサイト・平滑筋など様々な細胞に分化する。神経堤細胞の機能不全は神経堤症(Neurocristpathy)と呼ばれ、腫瘍の他に心臓・腸管の機能不全や発達障害・先天奇形など様々な疾患の原因となる。 Hirschsprung病も神経堤症の一つで、腸管の動きを制御する腸の神経節細胞の形成不全により、生後数日の間に機能性の腸閉塞症状がみられる。初年度は主に神経堤細胞分化方法の確立とHirschsprung病の原因遺伝子であるRET遺伝子へCRISPR/Cas9を用いて変異を導入し病態を再現できる細胞クローンの作製を実施した。 神経堤細胞の分化は、Fukuta et al. (2014)に従い、低分子化合物(SB431542とCHIR99021)を用いておこない、PAX3、TFAP2A、NGFRなどの発現を定量PCRで確認した。また、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術をヒト人工多能性幹細胞やヒト胚性幹細胞に応用し、RET遺伝子に点変異や短い挿入や欠失(Indel)を導入することで遺伝子発現を抑制した疾患モデル細胞を作製した。これにより、遺伝的にほぼ同一なオリジナルの細胞をコントロール細胞としてゲノム編集を施した細胞と比較することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度はヒト多能性幹細胞から効率的な神経堤細胞の分化誘導法の検討とヒト多能性幹細胞にゲノム編集技術を応用し、Hirschsprung病の原因遺伝子であるRET遺伝子に変異を導入した細胞を作製することを目的としていた。 現在までに1週間程度でヒト多能性幹細胞から神経堤細胞を分化する方法を確立した。また、RET遺伝子に変異をもつヒト多能性幹細胞を複数クローン樹立することに成功した。申請した研究課題は計画通りに順調に進められていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Hirschsprung病では、腸管の動きを制御する腸の神経節細胞の形成不全により、生後数日の間に機能性の腸閉塞症状がみられる。腸管の自律神経系は、胎生初期に口側から遊走した神経堤細胞が肛門にかけて分布することで形成されるが、その過程に異常生じることで発症すると考えられている。 これからの2年間で樹立したヒト多能性幹細胞から実際に神経堤細胞に分化誘導し、さらには神経細胞に分化誘導することで、変異導入により分化誘導効率の変化を確認したい。また神経細胞の遊走性に違いがみられるかについても解析したい。さらに、三次元小腸オルガノイドへの分化誘導にも取り組みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由) 試薬の納入が遅れたため。 (使用計画) 消耗品の購入費用として用いる。
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