2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of precision medicine for pancreatic cancer combining near infrared imaging and biological information
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18K08671
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉富 秀幸 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (60375631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 重紹 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (20436380)
安西 尚彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70276054)
大塚 将之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90334185)
賀川 真吾 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (90507302)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膵癌 / 近赤外線 / 腫瘍進展 / 癌間質 / 血小板 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は新たに開発している近赤外線イメージング法を用いて、膵癌の腫瘍進展範囲の同定、および腫瘍学的特徴の解析を行うことである。 近赤外線イメージは1400-1600nm波長付近では水分と油分にその吸収が大きく異なることから、通常の可視光では判別できない物質の特徴を捉えることができる。そこで、我々はこの方法を悪性腫瘍の浸潤範囲の判定に用いることに応用するという発想に至った。これが判別できれば、外科切除の際に至適な切除範囲を同定し、過不足のない外科切除を行うことができるようになる。 そこで、膵癌切除標本を近赤外線カメラにより撮像し、病理所見と対比することで、癌組織と正常組織のイメージ上の差を検討した。すると、腫瘍部は低吸収域(黒色)としてとらえられ、その先進部位を同定できることが確認された。しかし、深部までの観察ができないこと、コントラストが弱いことが問題点としてあげられた。現在、近赤外線光の光量を調整している。また、反射型ではなく透過型にすることで、深部組織の特徴まで把握することを目指している。 一方、膵癌では癌組織周囲において末梢性の血液凝固がおこり、癌細胞の悪性化を引き起こしている可能性がある。そこで、そのような因子を同定することで血管内凝固状態の把握を行い、近赤外線イメージとに関連がないかについても検討を進めている。その候補として、血小板由来蛋白であるX因子に注目した。これまで、この因子の患者血中における濃度をELISAで測定したところ、腫瘍径とリンパ節転移数とに関連していることを見出した。免疫染色法でその発現を検討すると、癌細胞における発現の強弱は術後の全生存期間と有意な関連を認めた。よって、癌組織から本因子が分泌されている可能性も含め、今後、その癌悪性化における役割を細胞実験などを用いて検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵癌切除標本を近赤外線によるイメージで解析した。2018年より9例の症例でのイメージの蓄積を行った。癌組織と正常組織の差が最も著明になる波長は1450nmであった。HE染色像との比較では、腫瘍先進部が低吸収域に撮像できることが判明した。しかし、症例によってはコントラストや明暗の調整が必要であった。また、組織の数ミリ以上の深部には近赤外線は到達できておらず、深部の情報を得ることはできなかった。そこで、イメージング方法の改良が必要であると考えられた。 因子Xは血小板中から分泌され、Tリンパ球の局所への遊走を惹起することが示されている。膵癌切除患者の術前血漿における濃度をELISA法で測定した。68例の膵癌患者、5例の健常者、4例の慢性膵炎患者の血漿の因子Xの測定を行ったところ、健常者に比べて膵癌患者ではその濃度が優位に上昇していた。また、慢性膵炎患者より高い傾向を示した。膵癌患者における予後に最も差がつく血中濃度の閾値を決定し、血中濃度が高い症例では全生存期間は短い傾向を示し、無再発生存期間は有意に短かった。臨床病理学的因子との比較では濃度が高値の症例では低値の症例と比較して、CA19-9値が高く、腫瘍内リンパ管と静脈侵襲が高度であることを認めた。加えて、リンパ節転移数が4個以上の症例、大動脈周囲リンパ節転移が多い症例の比率が高かった。 105例の膵癌切除標本にて免疫染色でその発現を検討した。正常膵組織では膵管上皮、血管内皮、中膜細胞に弱く発現をしていた。癌組織での発現は癌細胞に症例により強度が異なる発現を認めた。血管中膜をinternal controlとして用い、その発現の程度で2分すると、高発現が63例、低発現が42例に分類され、高発現症例は有意に予後不良であり、無再発生存期間も悪い傾向を認めた。このようなことから、本因子は癌の悪性化にかかわっていることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
近赤外線イメージング法の改良:前述したように近赤外線イメージではその線量が十分でないこと、反射イメージであることから観察深度標本表面に限られていることが問題である。そこで、現在、新たなイメージング機器の開発を行っている。新たな機器は線量を強くすること、透過光型のイメージング法を採用することでよりコントラストが付きやすく、また、深部まで観察が可能なものとする。特に脂肪組織内に埋もれたリンパ節の観察には至適と考えており、転移リンパ節と非転移リンパ節を鑑別して至的なリンパ節郭清範囲を判断できるものと考えており、膵癌切除標本の観察を継続する予定である。また、手術野において使用可能な小型モデルの開発も目指している。 癌部発現蛋白の解析:前述のように膵癌組織における免疫染色の結果、癌部において因子Xが強発現していることが予後不良に結びついていると考えられる。本因子は血小板からも放出されるとされ、癌組織周囲の末梢血管内凝固状態と関連している可能性が高い。凝固亢進が起こることにより、組織内水分分布も大きく変わることが予想され、本因子の発現と近赤外線イメージとの間に何らかの関連があることが予想される。そこで、血中濃度や癌組織内の因子の発現強度との関連を検討する。 また、癌細胞内での本因子の役割を検討するため、膵癌細胞株を用いた研究を行う予定である。すでにいくつかの膵癌細胞株ではWestern blot法にて本因子が発現していることを確認している。そこで、siRNAまたはshRNAを用いて本因子の発現を低下することにより細胞の遊走能、浸潤能に変化がないかを検討する。この様な研究を通し、本因子の膵癌における役割を検討する。
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Research Products
(5 results)