2018 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢プロファイリングによる肝性脳症の分子機序解明と革新的治療の開発
Project/Area Number |
18K08684
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
副島 雄二 九州大学, 大学病院, 准教授 (30325526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
間野 洋平 九州大学, 大学病院, 助教 (10792244) [Withdrawn]
戸島 剛男 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40608965) [Withdrawn]
本村 貴志 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (50719507) [Withdrawn]
吉住 朋晴 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80363373)
原田 昇 九州大学, 大学病院, 講師 (80419580)
池上 徹 九州大学, 大学病院, 講師 (80432938)
伊藤 心二 九州大学, 大学病院, 助教 (90382423)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 肝硬変 / 肝移植 / 門脈圧亢進症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、末期肝不全患者の腸内細菌叢の肝移植後のプロファイリングを行う目的で腸内細菌叢とその代謝産物である胆汁酸および短鎖脂肪酸の組成を明らかにし、生体肝移植における腸内細菌叢の組成や術後経過との関連性について検討した。 【対象・方法】対象は2017年6月から2018年6月までに当科にて生体肝移植を施行したレシピエント18名と健常人コントロールとしてドナー17名。術前の便と血清を採取した。1)腸内細菌叢の同定:便中の16s rRNAの解析により細菌叢を同定した。2)短鎖脂肪酸・胆汁酸解析:糞便・血清の質量分析により血清中の短鎖脂肪酸及び胆汁酸、便中の短鎖脂肪酸の質量分析を行った。3)臨床因子との関連を検討した。 【結果】1)腸内細菌叢の同定:レシピエントではドナーに比してFirmicutes門が有意に少なく(p=0.023)、Proteobacteria門が有意に多かった(p=0.032)。2)短鎖脂肪酸・胆汁酸解析:レシピエントでは、一次胆汁酸値が有意に高く(p=0.0427)、血清短鎖脂肪酸ではレシピエントで血清中のプロピオン酸(p=0.049)がドナー群と比較して有意に高かった。3)臨床因子との関連性:レシピエントの開腹時門脈圧は、Bacteroidetes門及び便中プロピオン酸値と有意に正の相関を示した(R2=0.260、p=0.0307、R2=0.588、p=0.0014)。 本解析でレシピエントの腸内細菌叢の組成は、既報での肝硬変患者の腸内細菌叢と同様の傾向を示した。また腸内細菌叢、短鎖脂肪酸および臨床因子間の解析では、Bacteroidetes門とその代謝産物であるプロピオン酸値と門脈圧が互いに正の相関を示した。腸内細菌が代謝産物を介して門脈圧上昇に寄与する可能性を示唆し、肝硬変治療標的開発にむけた新たな知見といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床肝移植患者での研究であり、初年度より18名の肝移植患者、17名の健常者(ドナー)の便、血清の解析ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに症例を増やし、腸内細菌叢と短鎖脂肪酸、門脈圧亢進症、肝性脳症との関係につき検討する。
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Causes of Carryover |
(理由) 当該年度は、物品費が未執行となり、また旅費による支出が、当初の計画より少なかった。その結果、486,108円が次年度使用額として発生した。 (使用計画) 次年度は、当初の計画通り、肝不全モデルマウスに対するウアレーゼ低産生性腸内細菌カクテルの開発を行い、肝不全・肝性脳症に対する効果を検証する。
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