2018 Fiscal Year Research-status Report
原子間力顕微鏡を用いた血管の「硬さ」測定による動脈硬化病変の評価法の確立
Project/Area Number |
18K08729
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
松尾 映里 三重大学, 医学系研究科, 技術補佐員 (40751665)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島本 亮 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (90324524)
岡本 貴行 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (30378286)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、動脈硬化における内皮細胞の機能に及ぼす微小環境の力学的性質(硬さ)の影響を分子生物学的に検討します。血管内皮細胞を硬さの異なる細胞外基質において培養し、基質の硬さにより細胞機能を制御に影響を与えるか検討します。さらに、動脈硬化マウスでの組織弾性の変化と病態、細胞で影響を受けた遺伝子の発現と局在を解析し、組織弾性の変化と病態との関係を明らかにします。 今回は、ヒト臍帯静脈内皮細胞を1,2,4,8,25kPaの硬さの異なるコラーゲンコートしたポリアクリルアミドゲルシャーレ上で培養し、内皮細胞刺激因子を添加し、細胞の形態の変化を観察しました。内皮細胞刺激因子の添加濃度、添加後の培養時間等を検討し、内皮細胞刺激因子の添加前後で細胞の大きさ、縦横比を測定しました。その結果、各条件で細胞の大きさに差は観察されませんでした。また、各硬さにおいて、内皮細胞刺激因子添加の有無で、縦横比の値に差はなく、内皮細胞刺激因子添加による影響は確認されませんでした。しかし、軟らかいほど縦横比が大きく細胞が長い形状を示す条件があることを確認できました。そこで、同じ条件で培養した細胞から、mRNAを抽出し、血管新生に関わる遺伝子の発現量をリアルタイムPCRにて解析しました。内皮細胞刺激因子添加の有無両方の条件で、硬さに比例して発現が減少する遺伝子があることを確認できました。また、同じ硬さで比べた場合、内皮細胞刺激因子添加により、発現量は多い傾向が確認できました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回は、ヒト臍帯静脈内皮細胞を1,2,4,8,25kPaの硬さの異なるコラーゲンコートしたポリアクリルアミドゲルシャーレ上で培養し、内皮細胞刺激因子を添加し、細胞の形態の変化を観察しました。内皮細胞刺激因子の添加濃度、添加後の培養時間等を検討し、その結果、軟らかいほど細胞が長い形状を示す条件があることを確認できました。また、内皮細胞刺激因子添加による影響は確認されませんでした。さらに、mRNAを抽出し、血管新生に関わる遺伝子の発現の増減をリアルタイムPCRにて解析し、内皮細胞刺激因子添加の有無両方の条件で、硬さに比例して発現が減少する遺伝子があることを確認できました。また、同じ硬さで比べた場合、内皮細胞刺激因子添加により、発現量は多い傾向が確認できました。つまり、血管内皮細胞において、基質の硬さにより影響を受ける遺伝子を見つけることができたため、予定していた、in vitro におけるその遺伝子の発現局在を解析することができることから、順調であると考えられます。一方、進んでいない点としては、1,2kPaのゲルは、軟らかいため、ゲルに傷をつけないで、安定してシリンダーを固定することが困難で、細胞が付着していない領域をゲル上に作成することができていません。そのため、周辺の細胞が増殖・遊走する様子を解析することができていません。また、マウス組織の硬さ測定のために、組織を固定する方法の確立が困難で、まだ、マウス組織の硬さ測定ができていません。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒト臍帯静脈内皮細胞を1,2,4,8,25kPaの硬さの異なるコラーゲンコートしたポリアクリルアミドゲルシャーレ上で培養し、今回とは異なる内皮細胞刺激因子を添加し、内皮細胞刺激因子の添加濃度、添加後の培養時間等を検討し、さらに、mRNAを抽出し、今回とは異なる血管新生に関わる遺伝子の発現の増減をリアルタイムPCRにて解析し、内皮細胞刺激因子添加の有無、硬さに対する影響を検討します。また、増減が確認できた遺伝子に関連したタンパク(受容体など)について、タンパク量及びリン酸化される量をELISA法およびウェスタンブロッティングで定量し、基質の硬さが及ぼす影響を解析します。 硬さの異なるゲル上に、シリンダーを置いて、内皮細胞を播種し、細胞付着後、シリンダーを除いて、一部細胞が付着していない領域に周辺の細胞が増殖・遊走して細胞が増殖する速度、形態を顕微鏡下で観察する実験については、シリンダーではなく、シリコン栓等、他の材料をゲルにのせて、細胞が付着していない領域を作成する方法を検討します。 また、基質の硬さにより影響を受ける遺伝子を見つけることができたため、今後、マウス血管組織におけるその遺伝子の発現局在性とマウス血管組織の硬さの分布を比較するため、マウス血管組織の硬さを測定します。しかし、マウス組織の硬さ測定のために、組織を固定するなど、方法の確立が困難であることから、マウスを多く扱っている研究室に出向し、血管組織の固定方法等を習得する予定です。
|
Causes of Carryover |
実験試薬が、安く入手できたため。 実験試薬の購入に、使用する予定。
|