2019 Fiscal Year Research-status Report
拡張型心筋症に対するiPS心筋細胞に基づくドラッグリポジショニング
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18K08732
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小田 紀子 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (90373092)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ドラッグリポジショニング / 拡張型心筋症 / 血管新生作用 / 抗線維化作用 / βブロッカー / 併用投与 / 相乗効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
iPS心筋細胞等を用いて市販医薬品類から、血管新生、抗線維化、及び体内再生因子誘導作用等をメルクマールとしin vitroてスクリーニングを行った。その結果、選択された有望医薬品類を用いて、自然発症拡張型心筋症(J2N-k)ハムスターモデルを用いて、無毒性量にて20週齢から8週間反復経口投与を行い、心機能(LVEF)の改善効果を確認した結果、媒体群に比し6種(PDE阻害剤、気管支拡張剤、蛋白分解酵素阻害剤、キナーゼ阻害剤、TGF-β抑制剤、 PG関連薬等)の医薬品類で有効性が確認された。また、これらの6種の医薬品類を用いて、各々の臨床投与量での有効性を確認した。その結果、作用機序の異なる以下の4種の医薬品で媒体群に比し、有意なEFの低下を抑制した。即ち、①気管支喘息薬として使用されているオザグレル(OZ)、②慢性動脈閉塞症及び脳梗塞再発抑制剤として使用されているシロスタゾール、③特発性肺線維症として使用されているTGF-β抑制剤であるピルフェリドン(PF)、及び、④特発性肺線維症薬として使用されているチロシンキナーゼ阻害剤であるニンテダニブスルフォン酸塩(NS)が拡張型心筋症の悪化抑制作用が確認された。一方、⑤本態性高血圧症や虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全薬として臨床応用されているβブロッカーであるカルベジロール(CV)投与でも同程度の抑制効果が確認された。 今回、臨床にて使用されているβブロッカー(CV)に加えて、臨床投与量にて選択された作用機序の異なる2種の医薬品である、OZとPFの各々単独投与、及びCV+OZ又はCV+PFの2者併用投与、及びCV+OZ+PFの3者の併用投与で媒体群と心機能を比較検討した。その結果8週間投与にて、作用機序の異なる医薬品類の併用投与(配合剤)は拡張型心筋症に対して相乗効果が期待できることが示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然発症拡張型心筋症(J2N-k)ハムスターモデルを用いて、無毒性量にて20週齢から8週間反復経口投与を行い、心機能(LVEF)の改善効果を確認した結果、 媒体群に比し6種(PDE阻害剤、気管支拡張剤、蛋白分解酵素阻害剤、キナーゼ阻害剤、TGF-β抑制剤、PG関連薬等)の医薬品類で有効性が確認された。今回、 これらの6種の医薬品類を用いて、各々の臨床投与量での有効性を確認した。 その結果、気管支拡張剤であるオザグレル塩酸塩水和物(OZ;3.3㎎/kgx2回/日)、PDE阻害剤であるシロスタゾール(CS;1.7㎎/kgx2回/日)、TGF-β抑制剤であるピルフェニドン(PF;15㎎/kgx2回)、 及びチロシンキナーゼ阻害剤であるニンテダニブエタンスルホン酸塩(NS;2.5㎎/kgx2回)の4種の医薬品で、媒体群に比しEF値の有意な低下抑制作用が確認された。一方、本態性高血圧症や虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全薬として臨床使用されているβブロッカーのカルベジロール(CV;0.17㎎/kgx2 回)投与群でも上記4種と同程度のEF値の低下が抑制された。 今回、同ハムスターの5週齢から8週間、①オザグレル塩酸塩水和物(OZ)、②ピルフェニドン(PF)、及び③カルベジロール(CV)の3つの医薬品での単独及び併用投与し、4週後及び8週後の心機能検査にて媒体投与群と比較し、各々の単独投与群と併用投与群(CV+OZ、CV+PF、CV+OZ+PF)を比較検討した。その結果、βブロッカー(CV)に加えてこれらの作用機序の異なる2種の医薬品類の併用投与(配合剤)は拡張型心筋症治療薬として相乗効果が示唆された。 現在拡張型心筋症に対して臨床使用されているCVと同程度の効果を示す、全く作用機序の異なる医薬品類を見出し、併用投与にてさらに相乗効果が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、我々はiPS心筋細胞等を用いたin vitroスクリーニングにて選択された幾つかの既存医薬品類を用いて、δ-筋グリカン欠損自然発症拡張型心筋症ハムス ター(J2N-k)モデルにてin vivoスクリーニング(その1)を実施した。各投与量は長期毒性試験における無毒性量を基準として設定し評価した結果、6種の有望医薬品類が選択された。これらの選択された医薬品類から、さらに臨床投与量を基準としたin vivo再評価(その2)を行った。さらに、これらの有望医薬品類を用いて、現在本態性高血圧症や虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全薬として臨床応用されているβブロッカーであるカルベジロール(CV)との比較、及び作用機序の異なるこれらの併用投与等を含めて、相乗効果の検討を行った(その3)。 本研究の目的は、これらの作用機序の異なる医薬品類の併用投与(配合剤)から拡張型心筋症に加えて虚血性心筋症に対する最適医薬品の組み合わせを選択し、医師主導治験開始準備を行うことにある。 本研究の第一の目的は、これらの医薬品類(配合剤を含む)の効能追加(ドラッグリポジショニング)を目的とするが、さらにこれらの選択された最適医薬品類の生体分解性高分子(PLGA)含有マイクロスフェアー(MS)徐放性製剤への検討を行いより、さらに利便性のよい製剤検討を行う。また、これらのリード化合物の作用機序解明から、新しいスクリーニング系を再構築し、再生創薬としてさらに有用な画期的新規医薬品を開発(リーバースドラッグディスカバリー)することを最終目的とする。
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Causes of Carryover |
iPS細胞を用いたin vitroスクリーニング、及び自然発症拡張型心筋症ハムスターモデルにより無毒性量での検討、及び臨床投与量で有効性を検討した結果、4種の化合物の有用性が確認された。選択された4種の医薬品類は、現在拡張型心筋症の治療薬として使用されているβブロッカーであるカルベジロール(CV)と同程度の効果が確認された。 作用機序の異なるこれらの医薬品を用いてCVとの比較、及びCVとの併用投与での相乗効果が確認された。今後、4種の医薬品類を含めて虚血性心筋症ラットモデルを用いて有用性を確認し、CV単独に比し、拡張型心筋症に加えて虚血性心筋症に対するより有用な併用薬(配合剤)の可能性を検討する。さらに、選択された4種の有望化合物の生体分解性高分子(PLGA)内包マイクロスフェアー(MS)製剤を作製し、より有用な製剤検討を行う予定である。
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