2021 Fiscal Year Research-status Report
ティッシュエンジニアリングを応用した人工胸膜の開発
Project/Area Number |
18K08776
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
木村 大輔 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (70396406)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人工胸膜 / 胸膜中皮 / 積層培養 / ティッシュエンジニアリング / 人工臓器 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
呼吸器外科手術患者において、肺切除後の肺瘻は入院期間延長のみならず、膿胸などの合併症を引き起こす可能性がある。慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎などの患者は肺瘻遷延を引き起こしやすく、今後も肺瘻の発生数は増加することが予想される。また、将来人工肺胞の開発研究が進めば、それらを被覆する人工胸膜も必要となると考える。ポリグリコール酸(PGA)シートは呼吸器外科領域で胸膜欠損部の被覆に頻用される吸収性補強材であり、最終的には水と二酸化炭素に分解される。肺瘻防止としては、現状としてPGAシートとフィブリン糊による補強が一般的であるが、胸膜再生までに時間がかかるという欠点がある。最近PGAナノファイバーシートが開発され、従来のものと比べると線維が細く、線維間の空隙が小さい、加水分解のスピードが速いといった特徴を有する。本研究はティッシュエンジニアリングの技術を応用してPGAシート上で胸膜中皮細胞を培養し、人工胸膜の作成を模索するものである。まず人工胸膜を作成するためにある程度厚みのある組織が必要と考え、PGAナノファイバーコーティングシート上に線維芽細胞を積層培養技術を用いて4層に培養した。これをヘマトキシリンーエオジン(HE)染色および電子顕微鏡で観察した。コーティング剤としてはゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチンを使用した。HE染色での観察では、コラーゲンコーテイングで他のコーティング剤に比べ細胞配列が整然としており、コーティング剤としてはコラーゲンが適切と考えた。今年度は人工胸膜をラットへ移植する実験をおこなった。直径6mmの人工胸膜を作成し、ラットの胸膜欠損モデルに移植したが、人工胸膜が胸膜損傷部からはずれ、ラットが死亡し長期観察が困難であった。今後はより面積の大きな人工胸膜を作成予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は人工胸膜をラットへ移植する実験をおこなった。 移植実験の際にラットへの挿管失敗により実験継続困難な症例を認めた。直径6mmの人工胸膜を作成し、ラットの胸膜欠損モデルに移植したが、人工胸膜が胸膜損傷部からはずれ、ラットが死亡し長期観察が困難であり、移植した人工胸膜の評価が困難であったことが研究課題の進捗が遅れた原因として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
人工胸膜の面積は使用するトランズウェルの面積によって決定される。トランズウェルを24ウェルから12ウェルに変更して作成することで、より面積の大きい人工胸膜の作成することと、ラットへの挿管手技の確立に努め、来年度の研究をすすめる予定である。
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Causes of Carryover |
人工胸膜への移植実験がうまくいかず、原因について点検するため本年度は研究を一旦中断したために次年度使用額が生じることとなった。 次年度については、先に述べたように人工胸膜の面積をさらに大きくして作成し、また確立したラット胸膜欠損モデルに対する胸膜移植実験を重点的におこない、電子顕微鏡で胸膜修復について観察するとともに、免疫組織学的染色をおこなうための物品購入に使用する計画である。
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