2020 Fiscal Year Research-status Report
高齢化に伴うサルコペニアを基軸とする術後認知機能障害の統合的理解
Project/Area Number |
18K08808
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
合谷木 徹 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (30302277)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | POCD / サルコペニア / BDNF / 運動療法 / トレッドミル / 骨格筋萎縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身麻酔を受ける患者の約半数は65歳以上となり高齢で手術を受ける患者が増えてきている。合併症である術後認知機能障害(POCD)は高齢者で頻度が増加し、その予防低下させることが急務である。高齢化によるサルコペニアの発症率が増加し、サルコペニアと認知機能の関連性も報告されてきている。しかし、術前のサルコペニアの発症と術後認知機能障害との関連性は未だ不明である。本研究では、サルコペニアと術後認知機能障害について関連性を解明するのが目的である。基礎研究で、初年度に2次性サルコペニア動物モデルを確立した。次年度は、術前の筋肉量が手術後の認知機能及び炎症性サイトカインに及ぼす影響を検討した。その結果、術前の骨格筋量減少がPOCDのリスク因子となることが示唆された。今年度は、術前の尾懸垂による筋萎縮をトレッドミルによる運動負荷で、POCDを改善するか検討した。術前2週間の尾懸垂による骨格筋量を減少させた22週齢Sprague Dawley (SD) ラットを用いて4群、コントロール群(運動手術なし)、コントロール+手術群、運動群、運動+手術群に分け、運動はトレッドミルによる運動を5日間継続した。気管挿管後、呼吸状態を動脈血液ガス分析で評価し、正常範囲内となるよう調節した。30%酸素と3%セボフルラン吸入下で2時間暴露させ、手術は肝左外側葉切除及び3分間腸間膜牽引を施行した。認知機能評価は、モーリス水迷路 (MWM)と恐怖条件付け文脈学習試験 (FCT)を行った。また、手術1週後に海馬内脳由来神経栄養因子 (BDNF) を評価した。MWMの遊泳距離、遊泳時間において、手術有りなしでも運動群は有意に短縮した。遊泳速度に両群間で有意差はなかった。FCTでは、運動群で有意に時間が延長した。海馬内BDNFは運動群で有意に高値であった。 この研究より、筋萎縮があっても術前の運動によりPOCDが改善されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨格筋量減少でも術前の運動がPOCDを改善することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
サルコペニア動物モデルを作成し、術前の運動が、全身麻酔下の手術(腸管露出、肝臓結紮)を施行した後の認知機能にどう影響するかを、行動試験と組織学的検査、及びバイオマーカーの検討を実施していく
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Causes of Carryover |
今年度の予算が少ないため、余剰金を次年度にまわした。今年度も実験用動物、機材に使用する予定である。
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