2018 Fiscal Year Research-status Report
慢性痛成立過程の脳ー脊髄可塑性変化:抑制性神経回路の役割の解明
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18K08811
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
倉部 美起 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (30635579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 美佳 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20774061)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 慢性痛 / 脊髄後角 / 可塑性変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神経損傷初期から慢性痛成立までの脊髄可塑性変化において、抑制性神経回路の変性とその果たす役割を、主に下行性抑制系に注目して解明することを目的とした。そのために、初年度は神経損傷初期~慢性痛までの脊髄後角におけるシナプス伝達の経時的変化を電気生理学的に明らかにした。さらに、慢性痛に関与するとされる下行性抑制系に注目し、下行性抑制系をコントロールした際の脊髄後角神経活動を解析するために、起始核である青斑核ノルアドレナリン(NA)ニューロンのみを特異的に制御可能なラットを化学遺伝学的手法を用いて作成することに着手した。 1.具体的内容・結果:成熟Wistar系ラットを用いた。in vivo パッチクランプ法により、神経障害性痛モデル動物(CCI;坐骨神経結紮モデル)とコントロール動物とで、神経損傷時から7, 14, 21, 28日目の興奮性シナプス伝達・抑制性シナプス伝達を記録し比較した。その結果、興奮性シナプス電流は14日目まではコントロールに比較して頻度・振幅ともに増大したが、その後は減少に転じた。抑制性シナプス電流の頻度は神経損傷初期にはむしろ増加し、その後減少するが、14日目以降はコントロールと同程度にまで回復した。一方で振幅はいずれの時点でも減少していた。同時に、アデノ随伴ウイルスを用いた化学遺伝学的手法により、青斑核NAニューロンのみを特異的に活性化可能なラットを作成し、免疫組織学的に特異的な発現を確認した。 2.意義・重要性:従来、局所でしか解析されていなかった脊髄後角の抑制性電流が、in vivoでははるかに強力に作用していること、神経損傷初期には興奮性の過剰興奮と共に、抑制性入力の過剰興奮も生じること、を示した。今後の研究により、さらに神経損傷から慢性痛に至るまでの詳細が明らかにされ、慢性痛成立のメカニズムに迫ることが可能であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一段階の、慢性痛モデル動物とコントロール動物間の電気生理学的解析については、既に解析を終えることができた。また、当初時間を要すると考えられた、化学遺伝学的手法を用いたウイルスの導入についても、すでに青斑核で特異的に発現していることが確認できた。現在、ウイルスを導入した動物において慢性痛モデル動物を作製し、同様に電気生理学的解析を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、AAVを導入して作製した青斑核NAニューロンを制御可能な動物を用いて、NAニューロンを外部から制御した際の慢性痛への発症過程を解析する。まず、行動学的実験により、NAニューロンを持続的に活性化させた場合の慢性痛への移行過程を明らかにする。続いて、電気生理学的に脊髄後角シナプス応答の変化を明らかにするする予定である。
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Causes of Carryover |
予定していたよりも電気生理学的解析がスムーズに進行した。また、ウイルスの導入に関しても、早期にとりかかることができ、当初予想したよりも消耗品代が抑えられた。今後は、さらに、免疫組織学的解析に必要な物品の購入、電気生理学的解析の消耗品の購入に予算が必要となると考えられる。
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Research Products
(1 results)