2018 Fiscal Year Research-status Report
exploring perioperative clinical indicators of surgical patients from big database
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18K08813
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
長瀬 清 岐阜大学, 医学部附属病院, 准教授 (90345786)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 周術期医療 / 医療の質 / ビッグデータ / 医療安全 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに進捗した研究の概略を述べる。一例として手術をうけた患者の体温が術後1週間までの推移を可視化した上で、体重がどのように影響したのかを調べた。背景として、現在までに術前から術中さらに術後までの幅広い周術期の経過を対象として、体温推移やそれに影響する因子を一元的に明らかにした全数調査の報告は散見しない。この研究では、手術前日、手術当日、手術開始時、およびその後30分毎、手術終了時、およびその後30分毎、当日の病棟に帰室後、翌日から術後7日間までの16ポイントにおける体温推移を、全身麻酔を受けた成人手術患者に対して解析している。この解析結果からは、体重が30kg未満の患者、30-50kg、50-70kg、70kg以上の4群に分けると、30kg未満の患者は術中低体温に陥りやすく、手術終了後も体温上昇の程度が悪いという点が明らかになった。70kg以上の患者は手術開始時以降の体温低下はなだらかであり、体温低下も軽度であるが、手術終了時も早期から体温上昇を認め、生体の体温調節機構への応答が速やかであることを示している。一方で術翌日以降に大きな差は認めなかった。当然ながら患者の体重には、年齢や性別なでの交絡因子が混入するため、これらの解析結果には一定の条件が求められるが、しかし日常臨床現場で直感的に経験している事実を明確化でき、またその条件も可視化できたことは有意義であった。この研究結果は普遍的であり手術を行うすべての病院で参考にできる知見であるため、簡素な視点で行った解析であるが、この研究成果として発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、研究を推進するにあたり、取り組んでいる大きな課題は3つである。まず周術期を網羅する新たなデータベースの構築に取り組んでいる。このデータベースは従前に整備したデータベースに、患者アウトカムに関わる項目を更に追加する予定である。データベース上のデータ項目の定義やデータベースの構成について再確認作業を実施している。また得られたデータベースの信頼性を確認するために、データ分析を繰り返しながら、実臨床データが反映できているのかという妥当性の検証を重ねている。次の課題として、得られたデータを統計解析する手法の精査が要求されている。扱うデータ量が多岐にわたるとおもに膨大であるため、また後ろ向き研究におけるデータの活用では、統計方法の選択は重要な視点である。従来の用いていた多変量解析などの統計手法では解析できない課題に対する新たな方法論の導入が課題である。交絡因子の調整や傾向スコアを用いた解析だけでなく、非線形回帰分析など研究開始当初に見込んでいなかった手法も、より適切な手法を応用したいと考えている。最後に、医療現場で使用される医療情報システムにおける記録様式や使用するマスター情報の一元化には引き続き注力する予定である。業務の標準化はビッグデータを活用した臨床指標の探索における重要な条件であり、この条件を達成するためには、研究活動だけでなく不断の臨床活動から得られる知見が重要となる。そのため、クリニカルパスにおける観察記録の改訂作業の継続など今後もデータが抽出できる環境整備に時間をかけることで、より精緻なデータベースの構築を目指したいと考えている。この他にも、大量のデータを扱う作業環境の整備は難しく、現在までに整備できている処理能力は解析環境の上限に近いため、この条件と折り合いをつけながら研究を推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は次の2点である。よりよいデータベースを構築するために、データベースの検証を繰り返しながら、業務の標準化の推進と医療情報システムの改良を目指す。次にすでに構築されたデータベースから可能な分析結果を得るために、研究計画書に挙げた視点で順に分析を実行する。その際に、様々な統計手法を導入する必要があれば、それは改めて解析手法として検討する。 上記2点を現実的な視点から述べると、生体監視情報の中で第5バイタルサインと言われる疼痛スコアの標準化を最優先に目指したい。これはすべての病棟における疼痛スコアの標準化が求められるが、同時に達成することは困難なため、クリニカルパスの改定を通じて、その疼痛評価方法を広く標準化する方策を検討する。これにより、周術期を通して術前から術後までのすべての基本バイタルサインが可視化できるようになり、これらの基本データ活用が可能になれば周術期医療の質管理の指標を検討する様々な視点から分析できるようになる。またビッグデータを取り扱う上での統計手法には留意が必要であり、交絡因子の存在に常時留意しながら、RCTでないために信頼できるデータといえないが、母集団が小さなイベントであっても参考にできるデータ活用を可能にするため、解析方法の工夫に取り組みたいと考えている。
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