2020 Fiscal Year Research-status Report
発達期の脳の臨界期とGABA調節因子の役割:麻酔薬の鎮静と毒性作用の解明に向けて
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18K08820
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
西川 光一 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 博士研究員 (00334110)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | GABA / 受容体 / プロポフォール |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、全身麻酔薬の鎮静作用の分子基盤、特に脳内のGABA濃度変動による麻酔効果のはばらつきの解析(麻酔薬力学)、麻酔薬による発達期の脳へ毒性 作用に焦点を当てて研究することである。これまでの我々の 研究成果から、全身麻酔薬の鎮静作用の発現には、抑制系GABA受容体の関与が強く示され、特に細胞外(シナプス領域外)のGABA濃度の変化が重要であることを基礎研究として公表してきた(Neuropharmacology, 2011)。一連の研究結果から、全身麻酔薬はGABA受 容体のアロステリック修飾薬として働くことで鎮静作用を発揮するが、痛みやストレスなど様々な要因によって脳内のGABA濃度が変動することがあり、これに よって麻酔効果のばらつきが起こると考えられる。 月経周期に伴うホルモンバランスの変動によって、脳内のGABA濃度が変動することが知られている。これを間接的に検証するために、月経中の女性患者の全身麻酔において、麻酔導入至るプロポフォール濃度を調べた。月経中の患者の入眠濃度は平均で3.1 ug/mlと非月経時の患者の入眠濃度よりも明らかに高かった。特に、麻酔前に不安や頻脈(HR > 100)、生理痛などを訴える患者において特に入眠に必要なプロポフォール濃度が高かった。これらの結果は、これまでに我々が得ている動物実験結果と一致している。プロポフォール は、GABA受容体に対して強い作用を持つアロステリック修飾薬であり、したがって脳内GABA濃度の変動によってその薬効が大きく影響される。我々のこれまでの研究で明らかにしてきたように、痛みや不安によってGABA濃度が変動して麻酔効果が変化するだけでなく、性周期サイクルによる影響を受ける可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロポフォール麻酔の鎮静に関する研究は進行しているが、その毒性基盤に関する研究には遅れがある。特にこの点に関して重点的に継続の予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎研究と臨床でのデータを関連づけするような、研究の方向性を探りながら、最終的にはより安全な麻酔に貢献できるような成果を求めて行きたい。
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Causes of Carryover |
研究成果の公表のための学会参加が難しかったためである。COVID感染収束後には、積極的な学会発表を行いたい。
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