2019 Fiscal Year Research-status Report
吸入水素の心筋虚血再灌流における予防効果とその関連メカニズムの解明
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18K08824
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山田 徳洪 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90457995)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 吸入水素 / 虚血再灌流障害 / プレコンディショニング |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究では吸入水素(3%、1時間)が心筋虚血再灌流障害に対してプレコンディショニング効果を有していることが判明した。本年度はこの機序にミトコンドリアのオートファジー機能の関与について調査することとした。水素吸入を行ったSD系ラットの単離心筋細胞を用いて、オートファジーを抑制する3-メチルアデニン(3-MA、10μM)の同時投与を行って、酸化ストレスに対する細胞内カルシウム動態とミトコンドリア脱分極に関するプロトコールを実施した。 ①共焦点顕微鏡のステージ上で過酸化水素(100μM)の灌流を行い、細胞内カルシウムイオン濃度を調べ、次いで、カフェイン(10mM)灌流を行い、小胞体からのカルシウムイオンの動員について調査した。3-MAは水素吸入を行った心筋細胞では有意な細胞内カルシウムイオン濃度の減少と小胞体からのカルシウムイオンの流入の抑制を著明に減弱することが認められた。吸入水素のプレコンディショニング効果はオートファジーが関与するミトコンドリア機能の維持が関連する可能性があることが示唆された。 ②ミトコンドリアの脱分極はミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)の開口により膜電位が減少することを意味する。TMRE染色を行った単離心筋細胞を共焦点顕微鏡上でレーザー照射を行い、MPTPの開口時間の評価はミトコンドリア機能を反映することとなる。水素吸入を行った心筋細胞は有意にMPTP開口時間を有意に延長させるが、3-MAを前処置させておくと開口時間が完全に抑制されることが示された。吸入水素のプレコンディショニング効果はミトコンドリア機能が維持されMPTPの開口に抵抗することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調にプロトコールの実施が行えており、サンプル数も予定数に到達している。 今後、新規のプロトコールの実施する必要が生じる可能性があり、その際には遅れが生じるかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
3%の水素吸入後のラットは虚血再灌流時に発生する酸化ストレス反応に対して、プレコンディショニング効果を有することを示されており、オートファジー機能に代表されるミトコンドリア機能が保持されることが関与することが考えられる。 今後の研究の展開はMPTPの開口に関するERK等の細胞内のカスケードの発現が関与して間接的にオートファジー機能が保持されるかどうかについて研究を進めていきい。 また、水素吸入後の時間を変化させることにより、最適なプレコンディショ効果を得られる間隔を調査したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の予定とは異なり、水素マイクロセンサーを購入せずに、実験計画を変更して吸入水素の効果発現に関する実験を積み重ねることを優先したので、本年度の支出額が低くなっている。 次年度に持ち越した助成金は吸入水素の心筋虚血再灌流障害への関係性を明確にするために、心筋内の残存水素濃度を測定するマイクロセンサーと保護効果に関する特異抗体を購入することで使用する予定である。今後は当初の研究計画を遂行することにより支出を行うことを見込んでいる。
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