2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K08831
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松田 光正 東海大学, 医学部, 講師 (10384918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 正信 東海大学, 医学部, 准教授 (90276791)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | モルヒネ / 疼痛 / NMDA受容体 / Dセリン / 脊髄 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでDセリンはNMDA受容体グリシン結合部位の内在性リガンドとしてN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受 容体活性を調節すること、D-セリン脳室内投与は鎮痛作用を、髄腔内投与は疼痛作用を有すること、などを明らかにしてきた。モルヒネはオピオイドμ受容体 と結合し、鎮痛作用を示す。しかし、疼痛患者へモルヒネを高用量、長期間にわたり硬膜外投与した場合、アロディニアなどの疼痛が引き起こされることが報告されている。また、モルヒネをマウスあるいはラットに慢性あるいは高用量硬膜外投与するとアロディニアなどの疼痛が引き起こされることが知られている。このモルヒネ誘発性疼痛はナロキソンで拮抗されず、ケタミンを併用することで疼痛が抑制できることから、NMDA受容体の関与が考えられている。本研究ではDセリン代謝関連酵素遺伝子の改変動物などを用いてDセリン代謝、Dyn代謝、モルヒネ誘発性疼痛との関連性を明らかにすることを目的とした。本年度の研究により、ラット脊髄マイクロダイアリシス法を用いて、高濃度モルヒネをラット脊髄内へ灌流し還流液を質量分析機により網羅的に解析した結果、脊髄シナプス間隙中に多量のmorphine-3-glucuronide (M3G) ならびにmorphine-6-glucuronide(M6G)が遊離することを明らかにした。モルヒネを慢性あるいは高用量ラット髄腔内投与すると脳脊髄液中のダイノルフィンA(Dyn)量が増加することが知られている。高用量 Dynをラット脊髄内投与するとNMDA受容体を介する疼痛作用を示すこと、Dynをラット髄腔内に投与して生じる疼痛はNMDA受容体グリシン結合部位アンタゴニストにより拮抗されることなどを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モルヒネ慢性投与あるいは高用量投与して生じる疼痛はNMDA受容体グリシン結合部位アンタゴニストにより拮抗されること、脳脊髄 液中のダイノルフィンA(Dyn)量が増加することが知られている。高用量 Dynをラット脊髄内投与するとNMDA受容体を介する疼痛作用を示すこと、Dynをラット髄腔内に投与して生じる疼痛はNMDA受容体グリシン結合部位 アンタゴニストにより拮抗されることなどを明らかにした。また、ラット脊髄マイクロダイアリシス法を用いて、高濃度モルヒネをラット脊髄内へ灌流し還流液を質量分析機により網羅的に解析した結果、脊髄シナプス間隙中に多量のmorphine-3-glucuronide (M3G) ならびにmorphine-6-glucuronide(M6G)が遊離することを明らかにした。これらの成果により、おおむね順調に進展していると考える。現在、in vivoニューロペプチドサンプリングシステムによる脊髄内Dyn分析システムを構築している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は脊髄後角におけるDyn量をin vivoニューロペプチドサンプリングシステムにより、グルタミン酸量、Dセリン量はマイクロダイアリシス法により定量する。また、モルヒネ誘発性疼痛モデル の脊髄後角におけるpreprodynorphin、Dセリン合成酵素 (Serine racemase: Srr)、 Dセリン分解酵素 (D-amino acid oxidase; DAO), Dセリントランスポーター(アラニンセリンシステイン-1; Asc1), NMDA受容体などの発現量の変化を免疫組織化学的、In situ hybridization(ISH)法で定性解析するとともに、脊髄後角の組織における各種タンパク質、遺伝子発現をWestern blot (WB)法、qRT-PCR法にて定量的に解析する。また、Srr,DAO欠損マウスなどの遺伝子改変動物を用い、ラットを用いた実験と同様な実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度にSrr-KO, DAO-KOなど遺伝子改変動物を使用する予定であったが、改変動物の繁殖が予定より遅れたため実施できず未使用額が生じた。今後は、遺伝子改変動物を用いて詳細な解析を行う予定である。また、2019年度の実験結果を踏まえてin vivoニューロペプチドサンプリングシステムによる脊髄内Dyn分析を行う予定である。
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