2019 Fiscal Year Research-status Report
複合性局所疼痛症候群の機序解明に基づく新規治療戦略の開発
Project/Area Number |
18K08837
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
柴田 志保 福岡大学, 医学部, 助教 (50708063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田頭 秀章 福岡大学, 医学部, 講師 (90735028)
鈴木 沙理 福岡大学, 医学部, 助教 (30804611) [Withdrawn]
山浦 健 九州大学, 医学研究院, 教授 (70264041)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複合性局所疼痛症候群 / Na+/Ca2+交換輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
複合性局所疼痛症候群(CRPS)は発症率10万人あたり5.46人の稀な疾患であるが、その症状は激しく、四肢の堪え難い痛み、浮腫、血流障害、運動障害、萎縮性変化などを伴い、日常生活が著しく障害される。CRPSの症状は多彩で、時期によっても変化するが、発症初期に着目すると、浮腫や色調変化などの炎症を示唆する症状が発現することが多い。CRPSの発症には炎症性サイトカインの関与が推察されるが、その詳細な病態形成機序は不明であり、CRPSの発症機序の全容解明と新規治療薬の開発が望まれている。 我々が独自に開発したCRPSモデルマウスは、実際の患者に類似した患肢の腫脹と色調変化が出現し、痛み閾値の顕著な低下が慢性化することを見出している。また、このCRPSモデルマウス坐骨神経を用いて、マイクロアレイ解析を行った結果、TNF-αなどの炎症性サイトカインに加えて、Na+/Ca2+交換輸送体(NCX)の各アイソフォームの発現が増加していることを見出している。この知見より、CRPS の発症機序(痛みの増悪および慢性化)には、NCXを介するCa2+過剰負荷が関与しているという作業仮説を立てて研究を進めている。昨年度は、NCX3欠損マウスにおいて、CRPSモデルを作製した際の痛みの閾値変化は野生型と変わらないことを確認した。本年度は、NCX調節因子の欠損マウスを用いて、坐骨神経結紮モデル(pSNL)を作製し、痛み閾値変化を検討した結果、野生型マウスと比較し、痛み閾値低下が改善していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のとおり、NCX調節因子の欠損マウスを用いて、pSNLモデルを作製し、痛み閾値変化を検討すると、野生型マウスと比較して痛み閾値低下が改善していることが分かった。さらに、治療薬としての有用性を検証するため、NCXの調節因子の阻害剤の投与実験を行った。予備検討段階ではあるが、pSNLによる痛み閾値の低下が改善する傾向がみられている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、NCX調節因子の阻害剤による痛み閾値低下改善メカニズムを、遺伝子欠損マウスおよび神経培養細胞を用いて検討していく予定である。また、CRPSモデルマウスを作製した際に、同様の改善作用がみられるか検証予定である。さらに、NCX3以外のアイソフォームがCRPSを含む痛み疾患に関与している可能性について、各種NCX遺伝子改変マウスを用いて検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)本年度の実験計画は概ね予定通りに進行したが、NCXアイソフォームの遺伝子改変マウス、およびNCX調節因子の遺伝子改変マウスの作製などの準備に時間がかかったため、使用額が予定より少なくなった。 (使用計画)来年度は、メカニズムの検討のためにマイクロアレイ解析および培養細胞を用いたCa2+ imagingを予定しているため、全体では予定通りの金額を要すると思われる。
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