2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K08840
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
境 倫宏 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (10448681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀井 政孝 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (60443503)
浜本 隆二 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (80321800)
島岡 要 三重大学, 医学系研究科, 教授 (40281133)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 環状RNA / ホールゲノムシークエンス / バイオインフォマティクス / 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでのRNA解析は線状構造をもつものが対象であり、環状RNAの解析はまだ開発段階である。環状RNAの存在は全RNAシークエンスのバイオインフォマティクス解析によって可能になってきているが、その定量性はシークエンスのベースとなるリードの数、内部標準設定による検体間の補正をよりどころにしており、より客観性の高い手法の確立が待たれていること、臨床応用については全RNAシークエンスベースとするにはコスト的な問題が大きいことが挙げられる。本研究では血液検体をPAXgeneRNA採血管で処理することで高品質のRNAを抽出することができ、全RNAシークエンスを行う研究動線を確立した。環状RNAの検出法として、全RNAシークエンスとバイオインフォマティクス手法を組み合わせることにより、生体内の環状RNAを900~1900個同定することに成功した。バイオインフォマティクスの手法としては、環状RNA特有の配列である「back splicing junction」を検出することで環状RNAの存在を提示するものであり、環状RNAの全配列を明らかにできるものではないという問題点がある。また、同定されたback splicing junction配列を示すリードの数も10~2000とばらつきがあり、シークエンス上のアーチファクトの混入も否定できない。これらの問題点を克服するため、PCRベースでのback splicing junctionの検出と定量を行う実験系の確立の必要性に迫られている。今年度までの研究実績により、シークエンスのバイオインフォマティクス解析による環状RNA解析からPCRベースの環状RNA解析に移行するための基盤的成果が得られたと言え、今後、各種臨床検体の環状RNA検出系の確立に展開していくことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PAXgeneRNA採血管による血液検体の処理はシークエンスベースの環状RNAの検出に適用可能であることを証明することができた。文献で報告されている環状RNAの種類は3000種類以上と言われているが、本研究では現時点で1900種類ほどの環状RNAを同定することができている。今後はPCRベースでの環状RNAの検出と定量の実験系の確立を行う必要があるため、現在環状RNA特異的プライマーの設計とPCR反応条件検討を行っている。プライマーの設計コンセプトとしては環状RNA特異的構造であるback splicing junctionを挟むような設計になるが、back splicing junctionからの距離、PCRプロダクトの大きさ、塩基配列によるアニーリングのしやすさなどがあり、プライマー設計ソフトを活用しながら行っている。シークエンスベースで同定された環状RNAの中で、PCRによって存在が証明された環状RNAを今後の臨床的意義の検討に用いるバイオマーカー候補とする。
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Strategy for Future Research Activity |
敗血症のバイオマーカー候補となる環状RNAの選定をシークエンスベース、PCRベースの実験を組み合わせて行っていく。環状RNAのバイオマーカーとしての臨床的検出はPCRで行えるレベルに持っていくことを目標とする。それとは別に、現時点で生体内の環状RNAの「総量」を検出する実験系として確立したものがないので、本研究ではそれについても検討していく。その手法としては、ノザンブロット法、RNA分解酵素法、二次元電気泳動法、一次元ゲルトラップ法などが候補としてあり、PCRベースの定量をコントロールとして、各手法の臨床的活用性の検討を行う。将来的には環状RNAの総量が重症患者のバイオマーカーとなり得るかどうか検討していく。また、バイオマーカーの候補となる環状RNAの検討と合わせ、臨床研究の立ち上げを行う。現時点で考えられる研究対象は術後集中治療室に入室する予定の外科手術患者とし、術前と術後の環状RNAの測定を行う研究デザインを検討する。主要評価項目を環状RNAの総量と個別の環状RNAのPCR定量とし、それの推移と相関する臨床的事象の探索、特に重要臓器の傷害との関連について解析する。その時には従来の統計学的手法だけでなく、機械学習の手法も取り入れて行っていくこととする。
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Causes of Carryover |
解析費用と薬剤購入のためほぼ使用した。 さらに解析費用が必要となるほか、現在準備中の英語論文の英文校正費、国内の学会参加費の支出予定である。
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