2019 Fiscal Year Research-status Report
分子進化工学的手法を用いたNav1.7阻害薬の開発
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18K08852
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
石田 高志 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (60531952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清澤 研吉 信州大学, 医学部附属病院, 助教(特定雇用) (50624772)
木村 忠史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (60344214)
中田 勉 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (70452141)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 局所麻酔薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
無痛症患者が痛みを感じないメカニズムとして電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)1.7の変異がある。無痛症は運動機能や触覚は保たれており、痛覚のみの感受性低下があり、急性痛に対する鎮痛状態として理想的である。今回、我々は無痛症患者に対して遺伝子解析を行った。当患者では先行報告と同様にNav1.7に関する遺伝子の変異が見られた。しかし、当患者では先行報告とは異なり完全なNav1.7の発現停止は起こっておらず、Nav1.7のNa+イオン透過部位(ポア)周辺の新たな一塩基のミスセンス変異であった。この変異Nav1.7は、電位―電流曲線を変移させることなくNa+電流を低下させ、これまでのNav1.7阻害作用とは異なったチャネル抑制機序を認めた。当患者では電気刺激、熱刺激、機械刺激に対して著しく痛みの感度が低下しており、Nav1.7の軽度な構造的変化でも痛みの感受性を著しく低下させることができる可能性が示唆され、この変異部位が痛みの知覚・伝達に重要な役割を果たしていると考えられた。そしてこの変異部位をターゲットとすれば、新たな種類のNav1.7阻害薬を開発できると考えた。 そこでin vivoでも変異Nav1.7のチャネル機能の評価が行えるように変異Nav1.7をもつ遺伝子組み換えマウスを作成し、このマウスでも痛みの受容性の低下を認めることが明らかとなった。今後、この遺伝子組み換えマウスを用いて生体内でのNav1.7の機能変化を明らかとしたうえで、Nav1.7阻害薬として機能する蛋白のスクリーニングを行いNav1.7阻害薬の開発を進めて行く方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Nav1.7の変異が痛みの受容や感覚にどのような影響を与えるのかを調べており、Nav1.7のポア周囲に結合するペプチドスクリーニングに関しては現時点ではまだ 行えていない。一方、無痛症患者と同様のNav1.7変異を持つマウスの作成ができており、Nav1.7変異マウスではホルマリンテスト、熱刺激に対する疼痛感受性が明らかに低下しておりこのNav1.7変異が痛み受容に強く関わっていることが示された。今後、同部位を対象としペプチドスクリーニングを行っていけば効率良く行えると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
無痛症患者と同様のNav1.7変異を持つマウスを用いて生体内での変異Nav1.7の機能変化を明らかにし、ペプチドスクリーニングのターゲットを絞り込んでいきよ り効率よくNav1.7阻害薬の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度はペプチドスクリーニングに必要な費用を計上していたが、KOマウスの作成に時間を要しペプチドスクリーニングを行えなかったため、次年度にこの費用を使用するため計画と差が生じた。次年度では差額を用いてペプチドスクリーニングを行う。
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Research Products
(3 results)