2018 Fiscal Year Research-status Report
造影剤投与による急性腎障害の機序解明および医薬応用
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18K08899
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐々木 淳一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (90235250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本間 康一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10383762)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 造影剤腎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
造影剤による急性腎障害に対する新規治療法としての水素ガスの効果および機序を解明するにあたり、水素ガスを吸入させたラットの組織内溶存水素濃度を高感度水素モニターを用いて測定し、複数臓器で濃度変化を観察、水素の臓器分布動態を考察した。具体的には、SDラットに、水素濃度3%の混合ガスを流速0.2L/分で吸入させ、脳、肝臓、腎臓、腸間膜脂肪、および大腿筋腹を露出させて、水素濃度モニター先端を臓器表面から深さ1mmまで挿入し、水素濃度を0.5秒ごとに測定した。水素濃度測定値は生体外および生体内で各測定毎に補正を行った。水素濃度曲線から、最大水素濃度、水素飽和時間、および濃度変化を定量的に反映する複数の測定値を算出し、臓器ごとに比較した。水素飽和時間は筋肉で平均20.2分であり、その他臓器の6.3~9.4分と比較し有意に長かった。また、90%、63%、10%濃度到達時間も筋肉のみで有意に長く、筋肉では緩徐な水素濃度上昇を認めた。一方で、水素濃度上昇開始時間に関しては、全臓器間で有意な差を認めなかった。また、最大水素濃度は臓器ごとに異なり、最低濃度は腎臓で18μmol/Lであったが、最高濃度は肝臓で29μmol/Lであり、投与水素濃度の22.1μmol/Lよりも高い濃度を示した。これら水素濃度変化に関する測定値の比較結果に基づき水素の臓器分布動態を考察すると、濃度上昇開始時間に臓器間で差を認めず、分時血流が相対的に低い筋肉のみで緩徐な濃度上昇を認めたことから、水素は拡散単独によって分布しているのではなく、血流によっても分布している可能性が高いことが示唆された。また、得られた水素濃度曲線が、拡散単独分布による予測水素濃度曲線よりも血流単独分布による予測水素濃度曲線に近似していることから、血流により強く依存した水素の臓器分布が示唆された。今後は、造影剤腎症モデル動物を使用して研究を遂行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の基盤となる水素ガス吸入後の腎臓を含めた臓器別評価を行うことに成功し、意義深い知見を得ることができた。この内容は既に論文発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
造影剤腎症モデル動物も用いた検討、水素分子含有造影剤を用いた検討を行う。造影剤に水素分子を含有させる技術については複数の方法を検討し、もっとも高濃度になった造影剤を使用することで成果に結びつけたい。
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Causes of Carryover |
水素ガスボンベを使用せず、水素ガス発生器を使用することができたため、水素ガスボンベ費用を抑えることができた。一方で、本年度は実験用動物や各種抗体などの費用が当初の想定を上回るため、その部分に充当させていただきたい。
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Research Products
(1 results)