2018 Fiscal Year Research-status Report
新たな血管収縮薬投与法の確立を目指した心肺停止状態におけるRAA系動態の解明
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18K08908
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大嶋 清宏 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60361375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 周一 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (20455992)
澤田 悠輔 群馬大学, 医学部附属病院, 医員 (90805897)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 心肺蘇生 / 心肺停止 / エピネフリン / アンギオテンシンⅡ |
Outline of Annual Research Achievements |
日本蘇生協議会による心肺蘇生ガイドライン2015では、心肺停止(CPA)症例に投与する血管収縮薬として標準用量のエピネフリン投与が提案されているが、その有益性に関しては未だcontroversialで、CPA症例におけるカテコラミン血中濃度とその予後に関しても不明である。そこで、CPA症例における病院到着時の血中カテコラミン濃度と病院搬送後の自己心拍再開(ROSC)との関連について臨床的に検討した。本研究は前向き観察研究で、実施にあたり本院倫理委員会から承諾を得た。2014年7月~2017年7月までに当院救急外来へ搬送されたCPA症例に対し病院到着直後に採血し血中カテコラミン(エピネフリン:Ep、ノルアドレナリン:NEp、ドーパミン:DOA)を測定した。このうち、Ep投与前に採血可能であった102例から末期悪性腫瘍3症例を除いた99例に関して、ROSCの有無で2群に分け、来院時の血中カテコラミン濃度に関して比較検討した{結果はMedian (Q1, Q3)で表記}。結果として、ROSC(+)群:36例、ROSC(-)群:63例であった。来院時、Ep投与前の血中EpおよびNEp濃度は、ROSC(-)群に比較してROSC(+)群で有意に低値であった{Ep;ROSC(+)群:0.59 (0.12, 2.35) pg/ml、ROSC(-)群:2.28 (0.65, 7.28) pg/ml、p=0.017、NEp;ROSC(+)群:1.06 (0.23, 2.18) pg/ml、ROSC(-)群:1.68 (0.77, 4.80) pg/ml、p=0.045}。これに対し、DOAは2群間で有意差はなかった。【結語】CPA症例において、Ep投与による血中カテコラミン濃度上昇はROSC獲得と関連しない可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心肺停止症例に投与する血管収縮薬として、現状では標準用量のエピネフリン投与が提案されているが、我々の研究結果では、心肺停止症例に対し、蘇生中のエピネフリン投与によるエピネフリン血中濃度上昇は自己心拍再開に結びつかない可能性が示唆された。 これまで心肺蘇生におけるエピネフリンの有効性に疑問を呈する報告は散見されるが、本研究の如くカテコラミン血中濃度からの観点でエピネフリンの有効性を検討した報告はほとんど見られず、有益な研究結果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目的である心肺蘇生における新たな血管収縮薬の探索のための研究を行う。搬送された心肺停止症例に対し来院直後に血液採取を行い、カテコラミン(エピネフリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)、バゾプレシンおよびレニン、アルドステロン、アンギオテンシンⅡの測定を行い、それらの心肺蘇生中の血中動態とそれぞれの関連を検討する。また、その結果を踏まえ、動物実験を行い、新たな血管収縮物質投与の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
研究の進行が順調であり予定額よりも低値で研究遂行が可能であった。検体測定や得られた結果の更なる発表等を行うことで、研究費使用を推進していく所存である。
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