2018 Fiscal Year Research-status Report
ドラッグリポジショニングを用いた非VEGF経路に対する新規抗血管新生薬開発
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18K08944
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
道上 宏之 岡山大学, 中性子医療研究センター, 准教授 (20572499)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 悪性脳腫瘍 / ドラッグリポジショニング / 抗血管新生薬 / VEGF / 脳腫瘍幹細胞 / 集学的治療 / アバスチン / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の悪性脳腫瘍治療では外科手術、放射線療法、化学療法を用いた集学的治療である。最も悪性度の高い膠芽腫では治療技術の発達向上にもかかわらず、平均生存期間約1年数か月、5年生存率数%と極めて予後不良である。また、悪性腫瘍への抗血管新生療法の概念は古く1970年代より提唱されており、抗ヒトVEGFモノクローナル抗体のベバシズマブ(アバスチン; 中外製薬)が、国内外において切除不能進行・再発大腸癌に対する標準治療と認可された後、卵巣癌、非小細胞肺癌、子宮頸癌等に対しても承認されている。悪性脳腫瘍(膠芽腫)に対する抗血管新生薬を用いた代表的な北米臨床試験AVAglio studyにて、標準治療に抗血管新生薬アバスチン(ベバシズマブ)追加群に生存期間延長は認めなかった。そこで我々は、膠芽腫の抗血管新生療法抵抗性の原因の一つが、がん血管新生阻害薬の多くの作用点がVEGFR/VEGF-R経路にあることに着目した。言うまでも無く、VEGF経路は腫瘍血管新生において最も中心的役割果たす代表的な経路である。そこで我々は、「悪性脳腫瘍において、VEGFは腫瘍血管形成において重要な経路であるが、VEGF経路が阻害されても非VEGF経路により腫瘍血管形成が代償される機構が存在し、腫瘍血管は維持され、そのためアバスチン単独では抗血管新生治療による予後延長が得られない」との、仮説を立て実験を行った。抗血管新生薬を用いた抗血管新生療法は、理論として問題なく、抑制する経路が腫瘍により異なるのではないかと考えられた。本プロジェクトにより、VEGF非依存的な血管新生の経路を同定し、ドラッグリポジショニングに基づく阻害薬発見を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに我々は、脳腫瘍における抗血管新生薬抵抗性の理由について、抗血管新生療法による低酸素が腫瘍浸潤を高度に誘導することを報告した(Fujimura A, Michiue H, PLoS One. 2011 Mar 14;6(3):e17685)。脳腫瘍に関する低酸素の3つのマイクロアレイデータより、浸潤に関与するCyclinG2が共通して発現していることに着目し、さらにこのCyclin G2が脳腫瘍細胞浸潤の際の細胞先端部に発現し、浸潤突起を形成することを示した。これにより、抗血管新生薬による低酸素刺激が悪性脳腫瘍においては有効な治療ではなく逆に悪化させる要因となっていることを示した。低酸素刺激は、細胞障害性を誘導する場合と逆に細胞浸潤能を挙げる諸刃の剣であることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、これまで本研究課題である既存薬再開発に基づく薬剤開発を行ってきた。低酸素刺激に応答して浸潤細胞の先端部でアクチン重合により浸潤に必要な仮足形成が活性化されていることを示した。さらにこの仮足形成を特異的に阻害する薬剤を既存薬再開発(DR)にて発見することに成功した。本薬剤は抗うつ薬の一種であるSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)であり、血液脳関門を通過する薬剤であり、既に臨床で広く使用されており副作用もほとんどない。更に脳腫瘍モデルマウスにおいて、抗うつ効果を示す薬剤投与量において、抗浸潤効果を示し、生存期間の延長も認めた。さらに、抗血管新生療法で使用するVEGF経路阻害薬にて、新たにVEGF非依存的な血管新生発生し、この出現が抗血管新生療法抵抗性の原因であるとの仮説を構築した。現在、腫瘍幹細胞に起源をもつ血管内皮細胞を用いたチューブフォーメーションアッセイによる抗血管新生薬のスクリーニングを随時行っている。
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Causes of Carryover |
現在、脳腫瘍幹細胞を腫瘍内皮細胞へと分化させ、チューブフォーメーションアッセイによる薬剤スクリーニング実験を行っている。薬剤スクリーニングにより予算の執行状況が変わっているが、今後動物モデルを用いた実験を行うため、計画通り予算執行が行われると考える。
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Research Products
(11 results)