2019 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経系と全身性発生悪性リンパ腫の分子遺伝子学的比較解析による起源・病態解明
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18K08950
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
小林 啓一 杏林大学, 医学部, 学内講師 (70406990)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市村 幸一 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (40231146)
永根 基雄 杏林大学, 医学部, 教授 (60327468)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中枢神経系悪性リンパ腫 / 二次性悪性リンパ腫 / 遺伝子変異解析 / メチル化アレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
今回我々は中枢神経系原発悪性リンパ腫 (Primary Central Nervous System Lymphoma; PCNSL) の体幹部再発、および体幹部の悪性リンパ腫の中枢神経再発 (Secondary Central Nervous System Lymphoma; SCNSL) で初発時、再発時のペア検体が得られた症例で両者の遺伝学的プロファイルを比較する事で、特に中枢神経系においてドライバーとなっている遺伝子異常を検索する事を目標として研究を開始した。2018年 (初年度) はSCNSLおよびPCNSL体幹部再発の症例で初発、再発時の腫瘍検体が得られた症例に対して腫瘍由来のDNAにつき変異解析パネルを用いた遺伝子変異解析およびメチル化アレイを用いたコピー数異常の比較を行った。その結果、SCNSLでは、MYD88 遺伝子変異(4/4症例で陽性)、CD79B遺伝子変異(2/4症例で陽性)、PIM1遺伝子変異(4/4症例で陽性)が初発、再発両者でshared mutationとして認められた。また、中枢神経系再発の検体のみで認められたprivate mutationとして、3/4症例で遺伝子A変異、2/4症例で遺伝子B変異、2/4症例で遺伝子C変異が認められた。 PCNSL体幹部再発では、体幹部再発の検体でのみ認められたprivate mutationとして、2/2症例で遺伝子D変異が認められた。すなわち、いくつかの遺伝子変異およびコピー数異常が複数の症例で中枢神経系病変でのみ認められ、これらの遺伝子異常は中枢神経系においてドライバーとなっている可能性が示唆された。2019年度はこれまでの解析で得られた結果の解析を進め、中枢神経系病変に特徴的と考えられた遺伝子変異の機能解析の検討、およびこれらの遺伝子異常の有無と臨床因子との関連についての検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初発時、再発時両者の臨床検体が得られた4症例のSCNSL、2症例のPCNSL全身再発で解析を行った。まず、PCNSLに特徴的な遺伝子変異を網羅的に解析するために開発した、45遺伝子からなる変異解析パネルを使用して、Ion torrent multiplex PCR法によるターゲットシーケンスを行った。その結果、中枢神経系再発の検体のみで認められたprivate mutationとして、3/4症例で遺伝子A変異、2/4症例で遺伝子B変異、2/4症例で遺伝子C変異が認められた。PCNSL体幹部再発では、体幹部再発の検体でのみ認められたprivate mutationとして、2/2症例で遺伝子D変異が認められた。続いてInfinium Methylation EPIC kit (Illumina) を用いてメチル化アレイを施行し、その結果からMethylation profiling classifier (DKFZ) www.molecularneuropathology.orgを用いてコピー数解析を行ったところ、SCNSL 2例、PCNSL体幹部再発1例で初発・再発検体の比較データが得られた。中枢神経系再発でのみA番染色体およびB番染色体のgainがみられ、PCNSL体幹部再発の1例では逆に、初発中枢神経系病変でみられたA番染色体およびB番染色体のgainが再発の体幹部病変では認められなかった。以上の結果より、複数の遺伝子変異が中枢神経系病変に特徴的な遺伝子異常である可能性が示唆された。また、今回遺伝子解析を行ったPCNSL、SCNSL症例の病理学的所見やサブタイプ、治療内容などの臨床情報を収集し、遺伝子異常と臨床情報の関連の有無についても検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
PCNSLおよびSCNSLにおける初発、再発病巣から抽出したgenomic DNAを用いたメチル化アレイ(Infinium Methylation EPIC kit (Illumina) を使用)で得られた結果のデータ解析を進め、初発・再発検体でメチル化のパターンの変化を解析し、我々が過去に報告したPCNSL、ならびに体幹部悪性リンパ腫それぞれにおけるメチル化のパターン(Nakamura T, Acta Neuropathol 133:321-324, 2017) に合致するかどうかの検討を継続する。また、初年度に行ったPCNSLとSCNSLにおける中枢神経系および全身他臓器における腫瘍検体を用いたリンパ腫遺伝子変異パネル解析で得られた、中枢神経系に特徴的である可能性が示唆された遺伝子異常については、その意義について検討するため、in vivo, in vitroでの機能解析を行うとともに、臨床因子との関連について検討する。また、体幹部および中枢神経系悪性リンパ腫において、当該遺伝子異常の有無と予後や悪性度との関連について、TCGAデータを用いて検討する。
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Causes of Carryover |
リンパ腫に特徴的な遺伝子変異を効率的に検出することが可能となる遺伝子変異パネルを作成し、収集した腫瘍標本からDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて変異検出解析を行った。本年度の予定額を超える支出を控えて行ったため、ある程度の残額が発生したが、概ね予定の計上額に近い額を使用した。 次年度ではこの残額に加え計上している予定額を用いて、引き続きパネル解析、メチル化アレイ解析、および候補遺伝子の機能解析などを行うために使用する予定である。
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