2018 Fiscal Year Research-status Report
神経膠芽腫の放射線治療抵抗性因子の同定とその克服を目指した個別化治療の構築
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18K08957
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
井内 俊彦 千葉県がんセンター(研究所), 脳神経外科, 部長 (80370881)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | cell cycle checkpoint / irradiation / temozolomide / DNA damage repair |
Outline of Annual Research Achievements |
当院で施行された neo-adjuvant IMRT/TMZ 症例6症例を対象に、放射線化学療法直前と直後のペアサンプルにおいて発現が変化している遺伝子を、RNAseq を用いて検証した。6サンプルセットからRNAを抽出したが、うち1例は RNA quality が条件を満たさなかったため、5例での検討となった。 当初 DNA 修復に係わる遺伝子群の発現亢進を予測していたが、実際にはヌクレオチド除去修復に関与するDDB2の発現が全例で、CETNの発現が5例中2例で亢進しているのが確認されたに過ぎず、他の Homologous Recombination や Non-homologous End Joining への関与が知られている既知の遺伝子に治療による有意な発現の変化は認めなかった。 一方、cell cycle checkpoint に係わる遺伝子群には治療による有意な変化を認めた。具体的には、CDK1 ・CCNBは全例で、AURKA・PLK1・CDC25Cは半数以上の症例で発現が低下していたが、CHK1の発現亢進は認めなかった。逆にTP53の発現変化は全く認めなかったにもかかわらず、CDKN1Aは全例で、SFNまたはRPRMLの亢進を5例中4例で認めた。 これらの解析から、放射線化学療法によって神経膠芽腫細胞においては G2/M arrest が誘発されていること、これらがTP53やCHK1の発現亢進によらずに生じていることが明らかとなり、今後の治療耐性克服に向けた治療標的の候補分子として抽出された。。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予測していたDNA修復関連遺伝子よりも、cell cycle checkpoint 関連遺伝子の動きが多いことが明らかとなった。このことから、治療耐性克服を目指した分子検索においてこれらの cell cycle checkpoint 関連分子に注目すべきであることが明らかとなったが、同時に細胞周期停止した後の DNA 修復に関しては、従来の Homologous Recombination や Non-homologous End Joining といった機序ではなく、ヌクレオチド除去修復が主体である可能性も明らかとなった。 このように、治療耐性克服に向けた具体的な分子のピックアップを行うことができたため、研究は大きく前に進んだと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予測していたDNA修復関連遺伝子から、cell cycle checkpoint 関連遺伝子に主な候補遺伝子が変更されたことから、一部研究計画を変更した。 ①放射線治療前後の血液正常細胞における遺伝子発現変化の検討:本研究の目標は治療抵抗性を改善するための治療標的を明らかにすることだが、それは同時に正常組織に対する放射線障害を高めるリスクも有している。従って、腫瘍細胞のみで発現が変化している分子を同定することが必用であり、昨年度明らかにした分子の、正常組織における変化を検証する必用がある。令和元年度に倫理審査委員会に照射前後の患者血液サンプルの採取と遺伝子解析に係わる研究の申請を行い、許可を得たうえで、腫瘍組織に用いた方法と同じ方法で RNAseq による網羅的遺伝子発現解析を行い正常組織におけるDNA修復ならびに cell cycle checkpoint 関連遺伝子の発現変化をみると同時に、候補遺伝子の正常細胞における変化を realtime PCR 法で検証する。 ②neo-adjuvant の臨床試験に新たに登録された症例を対象に、前年度明らかにした候補遺伝子の変化が普遍的に現れているか realtime PCR 法で検証する。 ③DNA修復関連遺伝子の変化として DDB2 の発現亢進を認めたが、ヌクレオチド除去修復に係わる分子の動きを確認する。 これらの実験を令和元年度から令和2年度前半に終了させ、今後の初代培養細胞を用いた検証の基礎データとする。
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Causes of Carryover |
今年度は既に得られていたデータの解析も行ったため、比較的実験に要する費用が抑えられた。一方、解析の結果、新たに行わなければならない実験も明らかとなったが、実験に高額の費用がかかることが予測されたたため、今年度の助成金では足りず、次年度に実験を行う方針とした。 具体的には、令和元年度にRNAseq を用いた網羅的遺伝子発現解析を予定したが、これに約100万円が必要になると予測される。また、令和元年度には、本研究の最終実験として予定している初代培養細胞を用いた実験に向けて、手術サンプルを用いた初代培養細胞の構築が必要となるため、これらの実験にも費用がかかると予測される。また、これまで一定の研究成果がでたため、これを学会等で報告することを予定しており、これに約50万円の旅費を見込んでいる。
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