2019 Fiscal Year Research-status Report
神経膠芽腫の放射線治療抵抗性因子の同定とその克服を目指した個別化治療の構築
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18K08957
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
井内 俊彦 千葉県がんセンター(研究所), 脳神経外科, 部長 (80370881)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 神経膠芽腫 / 放射線耐性 / 遺伝子発現 / NF-kB / TNF alpha |
Outline of Annual Research Achievements |
神経膠芽腫初発5例における放射線化学療法直前と直後の腫瘍サンプルにおける遺伝子発現を RNAseq を用いて評価し、その結果を Hallmark 遺伝子セットを用いてエンリッチメント解析した。 解析した50遺伝子セットのうち21遺伝子セットで発現が亢進し、13遺伝子セットで発現が低下していた。発現が亢進していたのは IFNa・IFNg など免疫に係わる遺伝子群・アポトーシス関連遺伝子群・p53関連遺伝子群に加えて、NF-kB を介した TNFa 発現に関与する遺伝子群が含まれていた。一方、G2/Mチェックポイント・DNA修復・血管新生などに係わる遺伝子群は発現が低下しており、これは昨年度解析した結果と矛盾しない結果だった。また、治療後は、神経膠芽腫幹細胞の proneural な分化を誘導する遺伝子のう内、SLL3・PDGFa・Sox8などの発現が有意に低下していた一方、mesenchymal な分化を誘導する SERPINE1 の発現が有意に亢進していた。これらの結果から、放射線照射により免疫系が賦活され、腫瘍浸潤したマクロファージ・マイクログリアから IL6 や TNFa が分泌され、IL6が STAT3 発現を亢進させることで NF-kB の核内移動を誘導。TNFa は神経膠芽腫幹細胞を proneural から mesenchyma に分化誘導させることで放射線被曝に伴う DNA 傷害から腫瘍幹細胞を守っていることが示唆された。 遺伝子発現の変化から得られたこれらの治験は、in vitro での是までの報告と一致するところもあり、放射線耐性克服の為の分子標的を一定範囲に絞ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
neo-adjubant TMZ/IMRT 治療の臨床試験が終了し、8例の entry で終わり、今後新たなサンプルの取得が困難となった。この8例のうち5例で治療前後の遺伝子発現の変化を、エンリッチメント解析の手法を用いることで、大まかな遺伝子の動きを確認することができた。これらの遺伝子セットの変化を見る中で、放射線耐性において腫瘍幹細胞の mesenchymal な分化誘導が一定の役割を担っていることが推測され、それに係わることが予測される遺伝子群も、想定通り動いていることが確認された。一方で、mesenchymal な分化誘導は、症例によってその程度が異なることも判明し、特に mesenchymal な分化誘導が顕著だった症例では、その後 gliosacroma の形で再発しており興味深かった。これらの遺伝子発現変化は、特に免疫系細胞の関与があることから in vitro の評価は難しく、実臨床で得られたサンプルを用いて確認出来たことは、放射線耐性分子の特定において大きな意義があると思われた。また、これらの遺伝子群の変化を想定できたことで、今後の実験の道筋を決めることができ、研究そのものが大きく前進した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度までに得られた遺伝子発現変化の解析結果を基に、令和2年度は下記項目に沿って検証を行う。 ①IL6・TNFa を介した腫瘍幹細胞の分化誘導が、マクロファージの浸潤をよることを証明するために、免疫組織学的に腫瘍組織内におけるマクロファージの浸潤程度および浸潤部位と、proneural / mesenchymal な分子の発現が相関しているか確認する。 ②NF-kB による腫瘍幹細胞の mesenchymal な変化が、放射線治療による DNA 断裂そのものを不正でいるか確認するために、g-H2AX を用いて DNA 断片化の程度を評価する ③これらの変化を8例の症例で比較検討し、症例横断的な変化と、症例特異的な変化に分け、症例特異的な変化はその後の再発形式など、臨床経過との相関性を検証する。 ④遺伝子発現変化の結果ならびに、腫瘍組織における免疫染色の結果を併せ、神経膠芽腫の放射線耐性に普遍的に関与している分子を特定する。
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Causes of Carryover |
遺伝子発現データの解析を中心に行ったため、物品比を抑えることができた。また今年度の成果を元に、次年度は免疫染色による評価を多数の抗体を用いて行う予定であり、今年度の繰越金はその購入費用に充てる予定である。また、一部免疫染色での評価に加えて、遺伝子変異の検索も予定しており、翌年度分として請求する助成金と併せてその費用に充てる予定である。COVID-19 により国際学会での報告が困難となり、旅費が抑えられる予定だが、これらの解析には抗体・試薬などで多くの費用支出が見込まれている。
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Research Products
(5 results)