2019 Fiscal Year Research-status Report
ヒト神経細胞の低酸素・虚血ストレス障害発生メカニズム解明と新規治療法開発
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18K08958
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Research Institution | National Hospital Organization Osaka National Hospital Institute for Clinical Reserch |
Principal Investigator |
金村 米博 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), 先進医療研究開発部, 部長 (80344175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
正札 智子 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (40450895)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヒト神経系細胞 / ヒトiPS細胞 / 低酸素培養 / 虚血ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
低酸素環境がヒトiPS細胞由来神経系細胞に及ぼす影響を評価するため、前年度に開発を実施した気相中酸素濃度モニタリング培養法をさらに改良し、今年度は培地中に含まれる溶存酸素濃度を経時的に取得しながらリアルタイムに細胞の生死を判定し得る、溶存酸素濃度モニタリング生細胞ライブイメージング解析培養法を構築し、ヒトiPS細胞由来神経前駆細胞(iPS-NPC)の低酸素耐性能を評価した。 ヒトiPS細胞(1210B2株)からdual SMAD法を用いて神経分化誘導させた後、neurosphere法で増幅培養を行って作製したヒトiPS-NPCを接着培養に移行させたのち、脱酸素剤を用いた閉鎖培養系にて24時間連続培養を実施し、その培養経過中の溶存酸素濃度とPI染色法を用いた細胞生死判定の連続モニタリングを実施した。その結果、溶存酸素濃度が0.1%に到達するまでの過程においてはヒトiPS-NPCの細胞死の誘導はわずかであり、溶存酸素濃度が0.1%以下の超低酸素状態に到達後も、ヒトiPS-NPCの細胞死誘導はわずかで多くの細胞は生存状態を維持し、超低酸素状態が8時間以上経過した時点から、急速にその細胞死が誘発され、超低酸素状態が20時間経過した時点では大多数の細胞が細胞死に至る経過を取ることが明らかになった。 以上の結果から、ヒトiPS-NPCは超低酸素状態に対して、一定期間は十分な耐性を示し、その後、急激に細胞死が誘発される特性を有することが明らかになり、ヒトiPS-NPCの低酸素耐性に関する重要な知見を得ることに成功した。また、新たに開発した溶存酸素濃度モニタリング生細胞ライブイメージング解析培養法は、ヒトiPS細胞由来神経系細胞の低酸素環境下での細胞特性評価に有用な評価系となり得ることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新たに開発した、より厳密な低酸素培養下での生細胞ライブイメージング解析培養法を用いて、ヒトiPS-NPCの低酸素耐性能に関して重要な知見を得ることに成功した。今回開発した評価系は、他のヒトiPS細胞由来神経系細胞の低酸素耐性能評価にも同様に使用可能な評価系であり、本研究の目的の1つであるヒトiPS細胞由来神経系細胞の低酸素・虚血ストレス耐性能評価系を確立できたと評価する。また、ヒトiPS-NPCに関しては、具体的な虚血耐性時間に関する知見を得ることに成功した。研究全体としては、ほぼ予定通りの進捗であったと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、今年度開発した溶存酸素濃度モニタリング生細胞ライブイメージング解析培養法を駆使して、各種ヒトiPS細胞由来神経系細胞の低酸素耐性能に関する特性を明らかにすると同時に、それに関与する分子メカニズムの同定を実施したいと考える。更に、各細胞の低酸素耐性時間を延長させる効果を有する低分子化合物の同定を実施したいと考える。
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Causes of Carryover |
旅費において予定より支出が少なく済み、次年度使用額が生じた。 研究に必要な細胞培養関連、遺伝子解析関連の試薬・資材等の消耗品購入のための物品費、遠方の研究者との打ち合わせ・会議等に関わる国内旅費、国際学会で の情報収集・成果発表のための外国旅費、および論文作成に関わるその他経費を計上した。これらは研究を円滑に実施し、かつ研究成果を世界に発信するために 必要なものと考え、妥当な範囲内のものと考える。
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Research Products
(4 results)