重症くも膜下出血の治療法開発と臨床応用のための橋渡し研究

2018 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K08959
• Research Institution: Hirosaki University
• Principal Investigator: 大熊 洋揮 弘前大学, 医学研究科, 教授 (40211099)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 奈良岡 征都 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (10455751)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2021-03-31
• Keywords: くも膜下出血 / 脳動脈瘤 / 急性期脳損傷

Outline of Annual Research Achievements

本研究は動物実験と臨床研究を並行して行うこととしている。以下にその2つに分け昨年の実施状況を報告する。
1）動物実験
ラットを用い、頚部内頚動脈よりタングステンワイヤーを挿入し頭蓋内内頚動脈先端部を穿通することによりくも膜下出血（SAH）を作成した。1年目の目標は、early brain injury（EBI）の原因評価であり、原因の中核と推定されている頭蓋内圧亢進の程度および血腫強度の程度とEBIの諸パラメーターの変化を検討した。パラメーターとしては神経細胞アポトーシスの程度と脳浮腫の程度を、SAH作成24時間後に摘出した脳を用いて解析した。結果として、頭蓋内圧亢進と血腫強度とアポトーシスの発現程度および脳浮腫の程度は相関した。しかし、生理的食塩水注入による頭蓋内圧亢進では、アポトーシスは生じるが脳浮腫はみられず、脳浮腫は頭蓋内圧亢進と血腫の存在のコンビネーションによるものと考えられた。
2）臨床研究
脳動脈瘤性くも膜下出血の重症例（WFNS grade Ⅳ・Ⅴ）の急性期手術（脳動脈瘤頚部クリッピング術）において、開頭時硬膜切開前の脳室ドレナージ挿入による頭蓋内圧測定、くも膜下血腫のd-ROMsテストによる酸化ストレスの測定を行い、術中採取された脳組織を用い神経細胞アポトーシスの有無・程度、術前後に行ったMRIによる脳浮腫の有無・程度との相関を検討した。3例の症例が対象となり、全例で頭蓋内圧亢進と血腫の強い酸化ストレスが測定され、かつ3例中1例で神経細胞アポトーシス陽性、2例でMRI上脳浮腫が示唆された。しかし、症例数が少ないため、頭蓋内圧亢進の程度、酸化ストレスの程度と、神経細胞アポトーシス、脳浮腫の程度との相関までは分析に到っていない。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当該年度は手術に到る臨床例（重症くも膜下出血症例）が例年に比べ少なく、臨床研究の統計的分析が行えなかった。例年通りの症例数が充足すれば次年度で予定通りの進行となると考える。

Strategy for Future Research Activity

申請内容通りの内容で研究を進める予定である。

Causes of Carryover

対象として検討したラットの頭数、臨床例数ともに予定よりも少数であったため、使用する試薬が予定未満となったためである。本年度はより頭数および症例数を増やすため、これに充てる予定である。