2019 Fiscal Year Research-status Report
未破裂脳動脈瘤の増大に決定的な役割を果たす血行力学的因子の解明
Project/Area Number |
18K08961
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉山 慎一郎 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (30623152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新妻 邦泰 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10643330)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳動脈瘤 / 数値流体力学 / 医用画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、未破裂脳動脈瘤の増大に決定的な役割を果たしている「血行力学的因子」の解明である。数値流体力学(computational fluid dynamics: CFD)を用いて脳動脈瘤への流入血流量および瘤内の血液滞留時間を算出し、それらと脳動脈瘤増大速度との相関関係を検証する。 本年度の研究実績として、以下の二つが挙げられる。一つ目は、脳動脈瘤内の血液滞留時間に関する新しい可視化方法の提示、二つ目は、脳動脈瘤内の血液滞留時間と脳動脈瘤壁における石灰化との関係性の証明である。 従来、CFDを用いた脳動脈瘤の血行動態に関する研究においては、大きく二つの可視化手法が用いられてきた。一つは、脳動脈瘤内の流れ場を可視化する際に用いられる、「速度で色付けされた流線」であり、もう一つは、脳動脈瘤壁が血流から受ける「壁面せん断応力の等高線図」である。我々は、「血液滞留時間で色付けされた流線」および脳動脈瘤内腔面近傍における「血液滞留時間の等高線図」を作成することで、血液滞留時間によって一元的に脳動脈瘤の血行動態を評価する有用性を提案した。 さらに、その可視化手法を用い、血液滞留時間が大型脳動脈瘤における石灰化部位の予測因子であることを発見した。脳動脈瘤壁における石灰化は動脈硬化性変化に伴うものである。我々は先行研究において、血液滞留時間の延長と脳動脈瘤壁における動脈硬化性変化との相関について報告したが、それを支持する成果であった。 以上の結果を用いれば、CFDを用いた血行動態解析によって、脳動脈瘤が増大しにくい部位を識別できる可能性が高いものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血液滞留時間が、未破裂脳動脈瘤の病理病態に果たす役割が明らかとなった。「血液滞留時間は脳動脈瘤の成長速度と逆相関する」という当初の仮説を、おおむね支持する結果であったことから、研究は順調に進展しているものと自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
血液滞留時間と動脈瘤増大速度との関係を、直接的に証明する研究を行う。すなわち、経時的観察によって増大速度を検討可能な臨床症例を対象とする。 また、血液滞留時間の延長が増大しにくい動脈瘤の識別に有用であるとすれば、血液滞留時間と対になる血行力学的パラメータこそが、増大しやすい動脈瘤の識別因子なのではないかと予想される。いくつかの候補を挙げることができるが、そのような因子についても探索を進める。
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