2018 Fiscal Year Research-status Report
頚動脈狭窄症におけるペリオスチンの機能解明と新規治療の開発
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18K08971
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
増岡 淳 佐賀大学, 医学部, 准教授 (50359949)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 頚動脈狭窄 / 脳梗塞 / ペリオスチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、頚動脈狭窄症のプラークに高発現しているペリオスチンに着目し、頚動脈狭窄症におけるペリオスチンの果たす役割について検討を行っている。頚動脈内膜剥離術で摘出したプラークを用いて、免疫組織化学的検討を行った。プラーク内に高度の出血が認められる不安定プラークと、出血を含まない安定プラークに分けて検討を行ったところ、ペリオスチンは不安定プラークにおいて、より強く発現している傾向が認められた。腹部大動脈瘤では、炎症細胞の浸潤が著明な部位でペリオスチンが特に強く発現していることが報告されている。動脈硬化は慢性の炎症性疾患であり、炎症が病変の発症・進展に関与し、プラークの破綻にも関与していると考えられることから、ペリオスチンの発現がプラークの脆弱性に関与している可能性が示唆された。今後症例数を増やして、ペリオスチンがプラークの脆弱性に与える影響の詳細なメカニズムを検討していく予定である。 ペリオスチンの過剰発現は様々な種類の癌でも報告されている。脳腫瘍での発現を検討したところ、ペリオスチンが原発腫瘍間質中の線維芽細胞によって発現される細胞外マトリクスの構成要素であることに一致して、脳腫瘍においてもペリオスチンは腫瘍周囲の間質に発現していた。グリオーマにおいては、悪性度があがるほどにペリオスチンが高発現しており、ペリオスチンはグリオーマの悪性化に関与していることが示唆された。ペリオスチンは髄膜腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫でも発現が認められた。これらの脳腫瘍における発現の意義についても検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
頚動脈内膜剥離術で摘出したプラークを用いて研究を行っているが、摘出時にプラークが壊れていることが多く、プラーク内のペリオスチンの分布を正確に同定できる症例が少ない。血管内治療の進歩により、現在では頚動脈狭窄症に対して、ステント留置術が行われることが多く、プラークの摘出標本を増やすことが困難な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
頚動脈内膜剥離術の際、頚動脈プラークがなるべく壊れないように、プラークを愛護的に扱い、利用できる標本を増やす必要がある。ステント留置術の増加により、大幅な標本数の増加は望めないことから、他施設とも協力しながら、標本を増やしていく予定である。 癌細胞においてはペリオスチンが細胞の接着と遊走に関わっていることが明らかとなっている。頚動脈狭窄症におけるプラークでは、血管周皮細胞の血管内皮への接着や遊走が、プラークの脆弱性に関与していることが示唆されている。血管周皮細胞との関連からペリオスチンがプラークの脆弱性に与える影響の詳細なメカニズムを検討していく。 頚動脈狭窄が形成される初期段階において、ペリオスチンがどのような役割を果たすのかを検討するには、頚動脈狭窄症モデルマウスを使用する必要があり、マウスでの研究も行っていく。
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Causes of Carryover |
学会発表を行わなかったので、旅費の使用がなかった。今後、学会発表を積極的に行って情報発信していく。
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