2018 Fiscal Year Research-status Report
Optimization of olfactory ensheathing cell suspension to be transplanted for repair of spinal cord injury – a study with in vivo and in vitro models.
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18K08980
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
吉岡 昇 帝京大学, 医学部, 講師 (20365985)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エレクトロポレーション / 幹細胞 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄損傷に関わる医療環境は、この1年間に大きく変化した。先ずは、ステミラック注の条件および期限つき承認、そして、iPS 細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療の臨床研究開始の承認があった。本研究が目指す、完全型の皮質脊髄路損傷の治療にこれらが結びつくかどうかは不明だが、ステミラック注において、自家の骨髄間葉系幹細胞を用いた治療に関し、製剤の製造販売が承認されたということは注目すべき変化であった。 本研究も、自家の嗅神経鞘細胞を移植する技術によって、脊髄損傷での神経結合の回復、機能の回復を目指すものであるが、臨床および動物実験で用いられている細胞懸濁液は、嗅神経鞘細胞を含む種々の細胞の混合物と考えられる。このことに関連して、海外の研究者との情報交流から、嗅粘膜には間葉系幹細胞が含まれ、これがオリゴデンドロサイトによるミエリン鞘形成を良く促進するという論文 (Glia. 61 p368, 2013) を知った。様々な部位から採った間葉系幹細胞など、種々の細胞を意識しながら、より優れた細胞の探索を行うこと、あるいは、嗅神経鞘細胞の他の細胞に対する優位性を検出することなども、実験的研究としては視野に入れる必要性が生じている。 そのような中、幸運なことに、学内発の細胞治療のプロジェクトに参画する機会が与えられた (ADC Letter for Infectious Disease Control. 6 p8, 2019)。この1年間の大半は、このプロジェクトの準備に費やされることとなったが、基礎研究を担当する予定となり、本研究にとって大きなプラスとなった。 そのような中、ラットに加え、C57BL/J マウス、ICR マウスでの前額断スライス培養に成功したこと、エレクトロポレーションによる遺伝子導入用装置を整備し、マウスでも遺伝子導入ができるようになったこと、などが具体的成果として挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学内発の細胞治療のプロジェクトに参画する機会が与えられ、基礎研究を担当する予定となり、本研究にとって大きなプラスとなった。しかし、そのプロジェクトの準備に多くの時間を費やしたため、本研究の当初の実験計画が予定どおり進まなかったことがあり、評価は「やや遅れている」とした。以下、進捗のあった項目につき述べる。 スライス培養系の整備ができたこと: 過去にラットでの前額断スライス培養の実績はあった。今回、C57BL/6 マウス、あるいは ICR マウスでの培養にも成功した。 エレクトロポレーション用の装置の整備を進めたこと: 現有の DsRed2 発現プラスミドを用いた場合、マウスの皮質錐体細胞へのエレクトロポレーションによる遺伝子導入は、ラットに比べ、成功率が低いことが判った。そこで、エレクトロポレーション中の動画および音声をモニターできる装置を導入し、系統的に条件検討ができるようにした。このことで、エレクトロポレーションを行うときに添加する プラスミド溶液の量を半定量的に測れるようになり、また、添加した後電流刺激を与えるまでの間隔を定量的に測れるようになった。今後の条件検討により、マウスの皮質錐体細胞へのエレクトロポレーションによる遺伝子導入の成功率を向上させてゆく準備ができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
新しく参画することとなった学内発の細胞治療のプロジェクトとの協力関係を、本研究のための推進力とすることが、目下の最大の課題といえる。新しいプロジェクトの対象疾患は脳性麻痺だが、脊髄損傷と同様、進行性ではないが重篤な神経の傷害が原因である点は共通している。軸索の再生が、治療につながり得るという点も共通しているので、脳性麻痺のモデル動物に有効であった細胞を、脊髄損傷でも試し、またスライス培養系でも試すという流れが理想的である。 場合によっては、嗅神経鞘細胞に固執せずに、最も有効な細胞とその調製法を探すという方向に動いて行くのが良い場合もありうると考える。 新しいプロジェクトは、準備段階なので、協力関係を活かした具体的方策はまだ立てることができないが、実験的研究が始まった段階で、協議の上、方策を立てたい。 しかしながら、嗅神経鞘細胞が脊髄損傷治療の切り札となる可能性は依然として高いので、当面、GFP 発現動物から採取した嗅神経鞘細胞をスライス培養系に適用する実験を最優先に進める。
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Causes of Carryover |
備品については、高価なステージトップインキュベータの購入を延期または中止した。その代わりに急務となった安全キャビネットヘパフィルターの交換を行い、また、エレクトロポレーション中の動画と音声の保存ができるシステムを三眼の実体顕微鏡を中心とした構成で購入した。この差額が B - A に大きく反映されている。 2019年度は、実験の実施量も大幅に増える予定であり、多光子顕微鏡に対応した高倍率の対物レンズを購入する必要も生じているので、この B - A は吸収される予定である。 なお、ステージトップインキュベータは、ライブ観察に使っている中央機器室のレーザー顕微鏡の保守期限が切れ、使えなくなる可能性があり、しばらくは現在ある古いものを引き続き使用して行くのが得策である。
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