2020 Fiscal Year Research-status Report
Optimization of olfactory ensheathing cell suspension to be transplanted for repair of spinal cord injury – a study with in vivo and in vitro models.
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18K08980
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
吉岡 昇 帝京大学, 医学部, 講師 (20365985)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | in vitro エレクトロポレーション / スライス培養 / 新生児虚血性低酸素性脳症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、嗅神経鞘細胞を含む生体材料の移植による中枢神経系白質の再生、ひいては軸索再生の成功率を飛躍的に向上させることである。そのために、in vitro スライス培養系での実験、および in vivo モデル動物での実験を通して、移植用生体材料の最適化を行う。 これまで、嗅神経鞘細胞による軸索再生のメカニズムを解明するための、in vitro 実験系の構築を行って来た。白質を通る軸索を可視化できる新規な系である前額断スライス培養系の実験技術において、エレクトロポレーションによる蛍光タンパク質発現技術の改良を継続。2020年度は、その成功率を飛躍的に向上させることができた。作製した前額断スライス培養にエレクトロポレーションを行い、安定に多数の細胞を含む細胞塊を標識することができた。そして、正中を越える多数の軸索の伸長を、35例中 34例で観察することができた。現在、この培養系を正中線で切断し、その切断面を越えて伸長する軸索を観察する実験を実施中である。 in vitro スライス培養以上に注力したのは、in vivo 実験系の構築である。当初は皮質脊髄路を切断し、その後の軸索の再生と運動機能の回復を観察する計画であった。しかし、in vitro の系との対応をとり、脳梁などに障害が起る動物モデルを利用することが、臨床へとつなげる上で有利である。採用したのは、新生児虚血性低酸素性脳症を動物に起し、成長過程における脳梁などの白質を含む脳組織の障害や行動学的評価による機能障害を評価できる Rice-Vannucci のモデルである。現在までに、手術手技の鍛錬、低酸素条件をつくる新規な装置の構築、行動学的評価系の構築、脳組織の障害を検出する手順の構築を行った。現状で、脳組織の障害をつくるすることには成功しており、今後、行動学的障害を長期間に渡って検出できるよう、進めて行きたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳スライス培養系を用いた研究により、嗅神経鞘細胞が軸索経路を再構築するメカニズムを解明し、移植用生体材料を最適化し、in vivo の動物モデルを立ち上げ、最適化した移植用生体材料の効果を示すための実験を進めているという状態が実現していることが、3年目を終えた時点での目標であった。移植用生体材料の最適化という項目が遅れてはいるが、in vitro および in vivo の評価系の整備が進んだという点で、おおむね順調と考えている。 in vitro の実験系に関しては、エレクトロポレーションによる皮質神経細胞の蛍光蛋白質による標識技術が大きく進歩した点が予想を越える成果であった。 in vivo の実験系に関しては、新生児虚血性低酸素性脳症を動物に起し、成長過程における脳梁などの白質を含む脳組織の障害や行動学的評価による機能障害を評価できる Rice-Vannucci のモデルを立ち上げたことは重要な成果であった。 この in vivo の系を構築するには、先ず手術手技の熟練が必要となる。実際に採用した手術は、オリジナルの Rice-Vannucci モデルでの片側総頚動脈の結紮に加え、外頚動脈の結紮も行い内頚動脈への血流を完全に止めるというものであった。手術後の3時間30分の低酸素負荷により、大脳皮質の片側に大きな壊死領域を観察することができた。また、行動学的評価系としてビームウォークテストをまず採用し、系の構築を行った。現在、週1回の手術を継続的に行いつつ、行動学的評価を組み入れて進めていく手順が実現している。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitro の評価系と in vivo の評価系を、ひとつずつ手にすることができたので、今後の最も大きな課題は、移植用生体材料の最適化ということとなった。この課題を解決するために今後行わなければならないことは、嗅神経鞘細胞のラットからの種々の単離精製方法を試み、それぞれを in vitro の系、in vivo の系に適用して行くことである。 中枢神経系疾患に対する細胞治療による治癒のメカニズムとして考えられているものは、 3 通りほどあると考えている。それは、(1) 神経細胞の補充、(2) 神経細胞と接触しながらの神経細胞機能の補助、(3) 移植した細胞が放出する因子による内分泌・傍分泌的効果、である。当初考えていたメカニズムは、(2)に相当するものである。これに対応する細胞の投与方法は、in vitro スライス培養系であれ、in vivo の実験系であれ、白質の切断部位に細胞を埋め込むという形になる。しかし、(3) の効果があるのであれば、細胞の髄腔内投与、あるいはさらに静脈内投与も有効となりうる。これは、臨床研究の実施において、障害部位への細胞の直接投与よりは、はるかに有利な投与法となる。したがって、in vitro においても、神経組織に直接細胞が触れない共培養を実施することにも意味がある。幸い、現行の培養系では、膜を隔てた両側に脳スライスと移植細胞を別々に置いて培養することができる。 移植用生体材料の調整方法のみならず、投与法も直接投与と非直接投与の両方を試みて行きたい。
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Causes of Carryover |
今なお、ステージトップCO2インキュベータの購入を差し控えた分があること、リージョンジェネレーターも未購入であることが次年度使用額が生じた主な理由である。しかしながら、ラットの購入代金、試薬の購入代金などが予想以上に高額であり、上記備品を購入する余裕がない可能性がある。ライブ観察に使っている中央機器室のレーザー顕微鏡は、旧来のまま使用できる状況にあるので、ステージトップCO2インキュベータの購入は不要となる可能性がある。リージョンネネレーターのみを購入し、残額が出るようであれば、ラットの購入代金、試薬の購入代金に充てるようにしたい。
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