2021 Fiscal Year Research-status Report
Optimization of olfactory ensheathing cell suspension to be transplanted for repair of spinal cord injury – a study with in vivo and in vitro models.
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18K08980
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
吉岡 昇 帝京大学, 医療共通教育研究センター, 准教授 (20365985)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 脳性麻痺 / モデル動物 / 細胞治療 / 骨髄単核球 / 嗅神経鞘細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は中枢神経系の損傷に対する細胞治療を目指すものである。脊髄損傷の細胞治療を促進すべく、嗅神経鞘細胞による治癒メカニズムの解明を目指して研究を開始し、実験系として、前額断スライス培養系を確立した。この実験系では、脳梁を通過する皮質錐体細胞軸索の再生過程および共培養した細胞の挙動を経時観察することができる。 この研究を継続する過程において、学内での共同研究体制構築が進み、中枢神経系の細胞治療研究をより強力に推進する体制が整いつつある。この共同研究体制においては、出生1000人中2人ほどが患う脳性麻痺を対象疾患として設定している。これは脊髄損傷と同様、神経細胞や白質が障害を受ける疾患であり、細胞治療が成功すれば脊髄損傷にも適応の拡大を望むことができる。 現在までに、高効率に脳性麻痺のモデル動物を作成する技術の開発を進めており、古典的な Rice-Vannucci モデルを、7日齢のラットにて作成し、9日齢の動物50%の脳に120 立方ミリメートル以上の壊死を作成することに成功している (参考文献: J Neurosurg Pediatr 22 p513、Sakaiら)。この方法は、動物1匹に対し、新規開発した低酸素負荷チェンバー1つを使う方法である。チェンバー内の温度を適切に制御しつつ、動物の行動も記録観察できる系となっている。 障害の行動学的評価法の確立も進めている。幅 15 mm のアルミ角材の上を 1 m 歩行させ、それに要する時間および後肢脱落回数を計測するビームウォークテストを実施し、生後 21 日時点でコントロール動物との間に有意な差を検出した。また、このビームウォークテストで検出される差が、生後28日、35日と経つにつれ、小さくなって来ることも確認した。現在、オープンフィールドテストを追加し、モデル動物の行動にどのような特徴が見られるかを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学内の共同研究体制の構築が進んだことが、非常に重要な前進であった。対象疾患として脳性麻痺が追加され、ややもすればモデル動物作成効率が不安定となりがちな Rice-Vannucci モデル作成を安定に行う技術の確立という難しい課題が生じた。これに対し、手術の方法に改変を加え、1匹ずつ別々に低酸素負荷をかけることができるチェンバーを新規開発し、モデル動物作成効率を大幅に向上させることができた。また、行動学的に障害を検出する技術である、ビームウォークテストに加え、オープンフィールドテストを導入し、動物の位置移動や姿勢の変化を解析できるようになった。 細胞治療の効果を検出する上で、行動学的評価は非常に重要な技術となる。しかし、ラットはヒトに比べて、大脳の障害などが行動の障害として現れにくいという問題がある。現在採用している Rice-Vannucci モデルでは、片側の総頸動脈に加え外頸動脈の血流も止めるモデルで、低酸素負荷も非常に強いものとなっている。この方法で、左半球前脳のほとんどが欠失した動物も、日常の行動において、コントロールとの違いがほとんどわからない場合もあった。この点に留意し、今後、モデル動物作成技術の更なる改良と共に、行動学的評価法のさらなる拡充が大きな課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
[モデル動物作成技術の更なる改良] 新規に開発した低酸素負荷チェンバーでの観察で、動物は周期的に激しい走行運動を繰り返すことがわかった。この激しい運動の量を定量的に計測し、その評価に基づいて低酸素負荷を調節できるようにするために、本研究では、DeepLabCut-Live! (Vogt, Nature Methods, 18, 123, 2021) での深層学習を使う。運動量と脳組織の障害との相関をとり、十分な障害が出る運動量を決定する。リアルタイムでの計測によって、その運動量に到達するまで低酸素負荷を続けるのである。具体的には、サンプル動画を使って DeepLabCut に四肢の先端などの座標を追跡できるよう学習させる。そして、低酸素負荷中に、それらの座標の動きの総和などを時事刻々計算し加算して行けばよい。DeepLabCut は、種々の行動学的評価にも応用が可能である。 [行動学的評価法の拡充] Rice-Vannucci の 脳性麻痺モデルでは、大脳の障害が顕著である。そして、遠隔期にあるラットは、基本的な運動能力は無処置の動物と大差がない。ラット脳性麻痺モデルでの行動学的評価においては、遠隔期での障害を感度良く検出する方法を開発する必要がある。本研究においては、オープンフィールドテスト (移動の距離と方向)、シリンダーテスト(前肢の機能)、などにつき、DeepLabCut での解析を加え、多次元の情報源から障害を感度良く検出する方法を見出す。 [細胞治療による障害改善の検出] インドの Sharma、ベトナムの Liemらは、自家骨髄単核球を素早く大量に髄腔内に移植する治療法での脳性麻痺遠隔期における著効を報告している。そこで、まずは、骨髄単核球のモデル動物遠隔期での有効性を確立する。そして、単核球のどの細胞分画が、どこで障害の改善に働いているのかをつきとめる。
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Causes of Carryover |
学内の共同研究体制が整い、研究の方向性や優先順位も変ったため、利用すべき研究機器も大きく変化した。その内容は多岐に渡ったため、麻酔装置や手術装置・用具などを学内での借用によって急遽調達した。これらは、順次購入して揃えて行く必要がある。まずは今後、現在残っている助成金で、イソフルラン麻酔装置、手術中の動物を保温する装置、動画解析用のコンピューターなどを購入して行きたい。
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