2022 Fiscal Year Research-status Report
Optimization of olfactory ensheathing cell suspension to be transplanted for repair of spinal cord injury – a study with in vivo and in vitro models.
Project/Area Number |
18K08980
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
吉岡 昇 帝京大学, 医療共通教育研究センター, 准教授 (20365985)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 脳性麻痺 / モデル動物 / 細胞治療 / 骨髄単核球 / 嗅神経鞘細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中枢神経系白質再生、軸索再生の成功率を飛躍的に向上させる細胞治療を見い出すことである。そして、モデル動物での実験などを通して、移植用生体材料の最適化を行うことである。現在、学内の研究プロジェクトチームの中で、まずは脳性麻痺を対象とした細胞治療を目指す方向で研究を進めている。プロジェクトチームでは、脳性麻痺のモデル動物における、格段に有効な細胞治療を見い出し、それの臨床応用を模索するという計画である。本基盤研究 (C) においては、その細胞治療を脊髄損傷をはじめとした他の白質の損傷を伴うモデル動物に拡大するという方針である。 前回の報告書には、脳性麻痺モデル動物作成技術の開発について記載したが、昨年度はこのモデル動物作成技術を大幅に改善した。生後7日齢の動物でモデルを作成し、ラット大脳の片側全体が消失する障害が 40 % 以上の確率で得られるようになった。これに伴い、継続して行ってきたビームウォークテストにおいて、生後 35 日の動物においても、コントロールとの比較において有意差を検出できた。ラットにおける生後 35 日は、ヒトにおける 5 歳程度、あるいはそれ以降に相当し、これは十分な遠隔期において障害を検出したことに相当する。 しかし、差の絶対値は小さく、大脳の片側全体が消失した動物も、細いビーム上を走ることができる。 モデル動物での病態の評価においては、ヒトの典型的な病態を反映しなくても、なんらかの大きな差が得られる行動学的試験が必要と考え、種々の行動学的試験のセットアップも行った。それは、Rota-Rod テスト、オープンフィールドにおける長期記憶テスト、瞬目反射条件づけテスト、新規物体認識テスト、といった試験である。今後はこれらについても、モデル動物での評価を進め、細胞治療の有効性を判定できる体制を整えて行きたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学内の共同研究体制の構築が更に進み、メンバーも拡充され、研究体制が課題に対して幅広く対応できるものとなった。モデル動物作成効率が不安定となりがちな Rice-Vannucci モデル作成を安定に行う技術も獲得し、病態の遠隔期での障害の検出もできた。種々の行動学的試験のための実験系セットアップも進んだ。現在は、モデル動物作成法と、それで得られた行動学的試験の結果を論文にまとめる作業を実施中である。今後は、細胞移植によって障害の改善を検出し、移植用生体材料の最適化、移植方法の最適化へと進めて行く。
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Strategy for Future Research Activity |
[モデル動物作成技術の更なる改良] 大脳の片側全体が消失するほどの大きい障害を半数近くの動物で得ることができ、それを反映して遠隔期での行動学的障害も有意に検出できたのだが、モデル作成後数日で死んでしまう動物の数も実は増えている。前回の報告で記載したとおり、独自に開発した低酸素負荷チェンバーでの観察で、動物が周期的に激しい走行運動を繰り返すことがわかっており、この運動の量のコントロールを DeepLabCut-Live! (Vogt, Nature Methods, 18, 123, 2021) での深層学習を使って行うことで、より安定なモデル作成を実現する。 [行動学的評価システムの拡充] Rota-Rod テスト、オープンフィールドにおける長期記憶テスト、瞬目反射条件づけテスト、新規物体認識テスト、のセットアップを行ったが、これらでのモデル動物での障害の評価を実行に移し、行動学的評価システムの拡充を目指す。遠隔期での大きな障害を検出できる実験系を見い出し、それを細胞移植の効果検出に用いる。 [細胞治療による障害改善の検出] 前回の報告に記載したとおり、まずは骨髄単核球移植のモデル動物遠隔期での有効性を確立する。その上で、どのようなメカニズムで有効性が得られるのかをつきとめる。
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Causes of Carryover |
学内の共同研究体制の構築が更に進み、研究の幅が広がると同時に、必要な備品や消耗品の種類も増加した。前回の報告に記載したように、現在はこれらの多くを借用によって調達している。行動学的試験のための機材、手術中の動物を保温する装置、小動物用 MRI のための機材、などの購入や成果の発表のために助成金を使用して行きたい。
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