2018 Fiscal Year Research-status Report
脳虚血再灌流障害におけるATMキナーゼ経路の役割解明と新たな脳梗塞治療への応用
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18K08994
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
細田 弘吉 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (90403261)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠山 隆司 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (10379399)
甲村 英二 神戸大学, 医学研究科, 教授 (30225388)
篠原 正和 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (80437483)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳虚血再灌流 / ペントースリン酸経路 / 熱ショックタンパク / 脳梗塞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はメタボローム解析により,脳虚血再灌流においてペントースリン酸経路(PPP)が大きく変動することを見出した.その分子機構を調べると,Ataxia telangiectasia mutated kinase (ATMK)を上流とする Signaling pathwayが,Heat shock protein 27 (HSP27)をリン酸化することで,PPPの律速酵素であるglucose-6-phosphate dehydrogenase (G6PD)を活性化しNADPHを増加させ,内因性抗酸化機構として働いていると考えられた.実際,ATMKを阻害すると脳梗塞のサイズが増大した. 次に,HSP27誘導実験を行い虚血再灌流障害に対する神経保護作用を示すかどうかを検討した.HSP27誘導作用が示唆されるGeranylgeranylacetone (GGA)を定位的にratに脳室内投与し,中大脳動脈閉塞60分後再灌流24時間の後に抜脳し,以下の4群を作製した,Group DS: DMSO投与+Sham MCAO, Group GS: GGA投与+Sham MCAO, Group D: DMSO投与+MCAO, Group G: GGA投与+MCAO (n=5 each).Western blot, 酵素活性,脳梗塞体積などを調べた. Western blotでは,HSP27とリン酸化HSP (pHSP27) は虚血再灌流により有意に増加していたが,Group GはGroup DよりさらにpHSP27が有意に増加していた.G6PD酵素活性も虚血再灌流により有意に増加していたが,Group GはGroup D よりさらに増加していた (2.0 vs 1.1 nmol/min/mg protein, p=0.03).Oxidative stressの指標となるカルボニル化蛋白は,Group GがGroup Dよりも有意に低かった (2.4 vs 4.0, p=0.02).脳梗塞体積もGroup GはGroup Dより有意に縮小した (31% vs 20%, p=0.004). 以上のことより,HSP27リン酸化促進を介するG6PDの活性化によるNADPHの増加が脳虚血再灌流障害に対する内因性の抗酸化機構として働いている可能性が示された.GGAは,この抗酸化作用を増強することで再灌流障害に対する治療につながるかもしれない.実臨床への応用を目指すため,投与時期・投与経路のさらなる検討を行っていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のごとく,脳虚血再灌流の際にペントースリン酸経路が亢進して内因性抗酸化機構として働いていることをATMKの阻害実験まで行って,ほぼ同定できた.この抗酸化機構において,HSP27はG6PDの活性化という重要な役割を果たす.そこで,治療への応用の可能性を探るために,HSP27の誘導役であるGGAを投与したところ,脳梗塞のサイズが縮小することを確認できた.それ以外の生化学的指標も虚血に対する保護を示唆する結果であり,我々の仮説を支持するものであった.現在これらの結果をまとめた論文を執筆中である. 以上のごとく,順調に進捗していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の結果より,GGAによるHSP27の誘導が中大脳動脈閉塞後再灌流により引き起こされた脳梗塞のサイズを縮小させることが判明した.この分子機構を明らかにするために,HSP27の増加自体が有効なのか,あるいはそのリン酸化が有効なのかを決定する必要があり,HSP27のリン酸化酵素であるMAPKAPK-2の阻害実験などを行う予定である. また,前述の実験のGGA投与は虚血前である.臨床応用のために虚血後にGGAを投与した場合の効果を見る必要がある.また,脳室内投与は臨床応用が困難であり,静脈内投与の効果を見る必要もある.これらに関する研究も行う予定である. さらには,HSP27を誘導する他の薬剤,すなわち,celastrol, FLZ, carbenoxoloneなどの薬剤の投与下での脳虚 血再灌流時の代謝変化や梗塞サイズの変化,機能予後に対する影響を調べ,脳梗塞治療の新たなターゲットを明らかにしていきたい.
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Causes of Carryover |
(理由) 消耗品などの費用が当初の予定より安価であったため
(使用計画) 次年度の本来の予算と合わせて消耗品などに使用する予定である.
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Research Products
(5 results)