2019 Fiscal Year Research-status Report
神経膠腫アルキル化剤治療後の高度点変異誘導機序解明による個別化療法の開発
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18K09004
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
野口 明男 杏林大学, 医学部, 講師 (30311971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永根 基雄 杏林大学, 医学部, 教授 (60327468)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 神経膠腫 / 遺伝子異常 / 高度点変異誘導 / アルキル化剤 / 個別化治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経膠腫の標準治療薬であるテモゾロミド(TMZ)の主たる殺腫瘍効果であるO6-メチルグアニン (O6-MG)形成は、DNA複製の際に点突然変異が生じる源泉となり、hypermutator化及び悪性化の原因となるリスクが指摘されている。実際、2020年のASCOではgrade II/IIIの低悪性度神経膠腫がTMZ治療後再発時に悪性転化した際hypermutatorとなり、予後が不良であったとの報告がなされた。 本研究では、前年に引き続き、我々の研究室で保有するヒト・グリオーマ細胞株、TMZおよびニトロソウレア薬のACNUへの耐性の主因であるMGMTを強制発現した細胞株を用いて、TMZならびにACNUを低濃度、長期間暴露し、生存した細胞を継代し、再度同濃度、あるいは僅かに高濃度とした薬剤暴露を継続することで、これら薬剤への耐性を獲得するサブクローンの樹立を試みている。さらに、これらの既存の神経膠腫細胞株および薬剤耐性を獲得した細胞のサブクローンを複数樹立し、それらの細胞を用いた各種アッセイを実施している。実際に薬剤耐性を獲得しているかを確認するための細胞生存解析を薬剤の濃度勾配を用いてMTSアッセイなどで検討した。これらの薬剤の耐性に強く関与することが知られているMGMTやMMR関連タンパクであるMSH2, MSH6, MLH1, PMS2について、それぞれ特異的抗体を用いたimmunoblot法によるタンパク発現量の解析を行っている。また、持続的な薬剤暴露の結果、遺伝子へのダメージと修飾が生じている可能性を検討するため、MLPA (Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification) 法を用いて神経膠腫で高頻度でみられる遺伝子異常の特にDNAコピー数解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、我々の研究室で保有するヒト・グリオーマ細胞株、TMZおよびACNUへの耐性の主因であるMGMTを強制発現した細胞株を用いて、TMZならびにACNUを低濃度、長期間暴露し、生存した細胞を継代し、再度同濃度、あるいは僅かに高濃度とした薬剤暴露を継続することで、これら薬剤への耐性を獲得するサブクローンの樹立を試みている。複数の培養dishで薬剤の存在下に生存するbulkの細胞が得られてきている。この細胞集団からcell lysateを抽出し、MGMTおよびミスマッチ修復機構(MMR)に関与する遺伝子の発現状況をWestern blot法を用いて再度評価検討した。特に薬剤存在下で培養継続が可能であったU251MG株とLNZ308株を中心とし、複数のサブクローンを用いて解析をしたところ、これらの細胞では全てTMZ耐性の主因であるMGMT の発現亢進がみられ、一方、MMR関連タンパクであるMSH2, MSH6, MLH1, PMS2の発現レベルに親株との著変はみられなかった。一方、ACNUを暴露し耐性化がみられたサブクローンでは、MGMTの高発現は顕著でなく、むしろMMR関連タンパクの発現に変化がある所見も散発的認められている。さらにこれらのサブクローンにおける遺伝子変異を解析するため、MLPA法を用いて神経膠腫に特徴的な複数の遺伝子のDNAコピー数解析を行った。その結果は、U251MG親株とこれらサブクローン間に明かな遺伝子欠失や増幅の変化は認めなかった。現時点まで、安定したMMR蛋白の変動は検証できておらず、引き続き治療-耐性細胞収集-因子解析を行っていく。また他の細胞株も使用する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
U251MGやLNZ308株以外の細胞株も用いて、治療感受性に関与が予想される分子の遺伝子異常や発現状況について検討する。特にTMZ、ACNU感受性に関与する遺伝子・因子(MGMT, MSH1, MSH6, MLH1, PMS2など)に加えて、hypermutatorに関連しえる遺伝子異常(TP53, IDH1/2, Rad51, Chk1/2など)、神経膠腫におけるdriver mutationなどをCancer Panel等を用いて検索し、それら遺伝子異常とTMZ治療後のhypermutationの有無の相関を検討する。遺伝子異常や蛋白発現異常を検出し、細胞の治療に対するcharacterizationを行う。 これらの細胞をTMZ及びACNUで治療する。最終的に初年度に開始したTMZ及びACNU耐性株を作成を成功させたい。親株⇔耐性株間におけるMGMT statusとMMR機能・発現・遺伝子変異の変化の有無を解析する。樹立した細胞及び各親株のペアに対し、遺伝子変異の解析を行う。 その上で、当教室で以前より確立しているヌードマウス脳腫瘍モデルを用いて、遺伝子異常背景が明らかとなっているTP53野生型、TP53変異型の双方の細胞株の移植後、TMZあるいはACNUでマウスを治療し、治療後の再発腫瘍を摘出し、移植した親細胞と遺伝子変異にどのような差が生じているか、解析、比較評価する。 これらの実験結果から、グリオーマ細胞において、hypermutationを惹起する因子として、MGMT、MMR、使用薬剤(TMZ/ACNU)の組み合わせ、その他有意な因子を総合解析する。
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Causes of Carryover |
これまで、当研究室に保管しているヒト・グリオーマ細胞株U251MGとLNZ308を主に使用し、テモゾロミド(TMZ)およびACNUを用いてin vitroでの治療を継続し、これら薬剤に対して生存し、増殖できる耐性株を、治療濃度を徐々に増加させながら作成することを実験の中心として行った。それら耐性を示す細胞のサブクローンから、蛋白を抽出し、これら薬剤に対する感受性を規定する主因子と考えられているMGMTおよびミスマッチ修復機構(MMR)関連因子の発現状況や変化をWestern blot法を用いた解析を行ってきた。またMLPAによる遺伝子コピー数解析も行ったが、全体計画の中に含まれる、がん遺伝子パネルを用いた次世代シークエンサーでの遺伝子解析、また中核となると判断された遺伝子導入実験や、マウスを用いた動物実験は前年度には実施しなかったことから、計上した前年度予算より、実際の使用額は少なく済んでいることが理由である。 最終年度では、使用する細胞株を増やすこと、治療の継続と、耐性株の樹立をより多く確保すること、その上での上記諸解析、特にパネルシークエンスや動物実験を開始することで、前年度に持ち越した研究費を最終年度の予定額に加えて使用していく予定である。
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[Journal Article] Reduced neoantigen expression revealed by longitudinal multiomics as a possible immune evasion mechanism in glioma2019
Author(s)
Nejo T, Matsushita H, Karasaki T, Nomura M, Saito K, Tanaka S, Takayanagi S, Hana T, Takahashi S, Kitagawa Y, Koike T, Kobayashi Y, Nagae G, Yamamoto S, Ueda H, Tatsuno K, Narita Y, Nagane M, Ueki K, Nishikawa R, Aburatani H, Mukasa A, Saito N, and Kakimi K
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Journal Title
Cancer Immunol Res
Volume: 7
Pages: 1148-1161
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] DNA demethylation is associated with malignant progression of lower-grade gliomas2019
Author(s)
Nomura M, Saito K, Aihara K, Nagae G, Yamamoto S, Tatsuno K, Ueda H, Fukuda S, Umeda T, Tanaka S, Takayanagi S, Otani R, Nejo T, Hana T, Takahashi S, Kitagawa Y, Omata M, Higuchi F, Nakamura T, Muragaki Y, Narita Y, Nagane M, Nishikawa R, Ueki K, Saito N, Aburatani H, Mukasa A
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 9
Pages: 1903-1914
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A randomized, double-blind, phase III trial of personalized peptide vaccination for recurrent glioblastoma2019
Author(s)
Narita Y, Arakawa Y, Yamasaki F, Nishikawa R, Aoki T, Kanamori M, Nagane M, Kumabe T, Hirose Y, Ichikawa T, Kobayashi H, Fujimaki T, Goto H, Takeshima H, Ueba T, Abe H, Tamiya T, Sonoda Y, Natsume A, Kakuma T, Sugita Y, Komatsu N, Yamada A, Sasada T, Matsueda S, Shichijo S, Itoh K, Terasaki M
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Journal Title
Neuro-Oncology
Volume: 21
Pages: 348-359
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Phase 1/2 study of depatuxizumab mafodotin (ABT-414) monotherapy or combination with temozolomide in Japanese patients with/without EGFR-amplified recurrent glioblastoma2019
Author(s)
Yoshitaka Narita, Yoshihiro Muragaki, Takashi Maruyama, Naoki Kagawa, Katsunori Asai, Junichiro Kuroda, Kazuhiko Kurozumi, Motoo Nagane, Masahid Matsuda, Keisuke Ueki, Christopher Joseph Ocampo, Ikiru Matsumoto, Reiko Odagawa, Yasuko Nishimura, Kazuhiko Mishima
Organizer
2019 ASCO Annual Meeting
Int'l Joint Research