2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒアルロン酸の変形性関節症に関する分子生物学的解析
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18K09024
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
松本 和 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40422711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 治彦 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60402830)
小川 寛恭 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 特任助教 (70464104)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヒアルロン酸 / 変形性関節症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒアルロン酸(HA)は関節軟骨の主要構成成分の一つで、関節機能の維持、恒常に重要な役割を果たしている。HA合成酵素であるHAS2は、軟骨におけるHA合成の中心的な役割を担う分子として知られる。変形性関節症(Osteoarthritis, OA)ではHAの減少や低分子化が認められ、HAがOAの発症と密接に関わっていることは間違いない。しかし、本邦ではHAは関節内注射として臨床ではよく使用されるが、欧米ではその効果については懐疑的で、2003年の米国整形外科学会(AAOS)は、OA治療に関する臨床診療ガイドライン改訂版ではHAを推奨しないと明記した。その理由の一つは科学的エビデンスに欠けるためである。したがって本研究はHAのOAに与える影響について科学的根拠を与える極めて重要な研究になりうる。 申請者らは一貫して軟骨細胞外マトリックスの研究を行っており、これまで、軟骨でのプロテオグリカンとリンク蛋白の結合様式、軟骨での役割を明らかにしてきた。また、HAコンディショナルノックアウトマウスを作製し、発生時に置けるHAの役割を明らかにし、関節形成には必要不可欠であることを証明した。さらには脊椎、長管骨でのHAの役割についても詳細に解析を加え発表しており本研究を行うにあたり、同分野には極めて造詣が深く適任であると思われる。 本研究では、その知見を踏まえ、ヒトのOA発症に及ぼすHAの役割について分子生物学的観点からメカニズムを解明しようとするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
軟骨は細胞成分に乏しく、その90%は細胞外マトリックスによって構成される。細胞外マトリックスは二大構成成分であるコラーゲン繊維と、プロテオグリカン会合体で構成され、後者の主要構成成分の一つがヒアルロン酸(Hyaluronic Acid, HA)である。HAは、プロテオグリカンやリンク蛋白と結合し、関節軟骨の発達や機能維持に極めて重要な働きを演じている。HA合成酵素であるHAS2は、軟骨におけるHA合成の中心的な役割を担う分子として知られ、変形性関節症(Osteoarthritis, OA)ではHAの減少や低分子化が認められる。HAがOAの発症と密接に関わっていることは疑いの余地はない。しかし、本邦ではHAは関節内注射としてよく使用されるが、欧米ではその効果については懐疑的で、2003年の米国整形外科学会(AAOS)は、OA治療に関する臨床診療ガイドライン改訂版ではHAを推奨しないと明記した。その理由の一つは科学的エビデンスに欠けるためである。 本研究では、その知見を踏まえ、ヒトのOA発症に及ぼすHAの役割について分子生物学的観点からメカニズムを解明しようとするものである。現在、Prg4-Cre x ROSA、Col2a1CreERT2 x ROSAマウスラインを確立し、Cre発現パターンを確認する作業を行っている。また、同時にHas2f/f x Prg4-Cre、Has2f/f x Col2a1CreERT2マウスラインを確立すべく準備を進めている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はHas2f/f x Prg4-Cre、Has2f/f x Sox9-CreERT2マウスラインを確立し解析を進めていくこととなる. 本ラインでは自然発症型のOAを発症するかどうかを膝関節中心に解析する。解析は生後0日、4週齢、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月のマウスを使用して①組織染色、②免疫学的組織染色、③in situ hybridization(ISH)、④エックス線学的解析を行う。同時にCre誘導性のマウスにて時期特異的にHAをノックアウトし、時期特異的なHAの役割について検討を加える。膝関節を採取、ホルマリン固定後、0.5M EDTAにて脱灰処理を行う。その後パラフィン包埋を行い切片作製する。染色はHE染色、Safranin O/Fast Green染色で行う。免疫学的組織染色ではOAの初期では関節軟骨が肥大化することが知られているため、肥大化軟骨のマーカーであるCol10、Mmp13での免疫染色を行う。また、軟骨変性の程度を評価するためマトリックス分子であるHA、Col2、Aggrecanの染色を行い変性の程度を評価する。また、HAの欠損がマトリックス分解酵素であるADAMTS-4、-5の発現やLubricin(Prg4)の発現に影響しうるかどうかを検討する。 免疫学的組織染色に引き続き遺伝子発現を検討する。ISHにて、上記のCol10、Mmp13、Col2、Aggrecan、ADAMTS-4、-5、Prg4の発現を検討する。さらにHA欠損によるOAの発症のメカニズムに迫るため、Fgf、Fgfr、Bmp7のISHを行う。 以上の解析により、HAがOAの発症に関与することが判明した場合には、HA関節内投与の効果を検討する。また、自然発症型のOAが得られなかった場合には、運動負荷および半月板(+靭帯)切除モデルを用いてOAの発症に差異があるかどうかを検討する。
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