2019 Fiscal Year Research-status Report
The clarification of the role of Mpp7 in bone tissue
Project/Area Number |
18K09057
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
近藤 直樹 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (70543388)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 骨粗鬆症 / 骨密度 / 骨密度決定候補遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨粗鬆症は骨折のリスク因子であり、生活の質の低下に直結する疾患である。ヒトゲノムワイド関連解析により、membrane palmitoylated protein 7(MPP7)遺伝子が骨塩密度に関与することが示された。その際、MPP7の発現低下が骨塩密度の低下と相関した。 申請者らは、MPP7遺伝子の欠損マウスを樹立し、生体内におけるMPP7の機能を解析した。 MPP7欠損マウスは野生型マウスと同頻度で生まれた。雌のMPP7欠損マウスは野生型マウスよりも低い体重を示した。この体重の差は、雄のマウスでは観察されなかった。体重を除いては、MPP7-KOマウスに特異的な異常は同定できなかった。骨組織のヘマトキシリンエオジン染色および三次元骨構造解析でも、MPP7-KOマウスの脛骨と大腿骨に異常は認められなかった。ヒト細胞株を用いて、MPP7の蛋白の発現を調べたところ、MPP7は複数の骨肉腫由来の細胞株に発現していることが示された。 また、U2OS細胞において、MPP7蛋白の発現が免疫沈降実験で確認された。U2OS細胞において、MPP7をノックダウンすると、DLG1蛋白の発現が低下した。Stuckeらは、MPP7がDLG1蛋白の発現を上皮系細胞株において制御すること、MPP7とDLG1が上皮系細胞株のタイトジャンクションの形成に関与することを明らかにした。従って、体重あるいは骨塩量に対するMPP7の機能の一部はDLG1を介する可能性がある。MPP7は骨肉腫細胞株U2OSの分化誘導活性には影響を与えなかった。 以上の結果は、MPP7が生体内において体重の制御に関与すること、および樹立したMPP7マウスがMPP7による骨密度の制御機構を解析する上で、有用なモデル動物になることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予備実験では、骨密度に差を見出せた。つまり、雌の骨密度が遺伝子変異マウスで低下していたことが示されていたが、申請者らの本実験での検討では骨密度には差を見いだせなかった。また組織学的な検討も幼若なマウスから行う予定であったが、交配の結果からは必ずしも十分なノックアウトマウスを得ることができず、組織学的検討も少数例のマウスでの解析にとどまっていた。また、MPP7を同定できる質の高い抗体がなかなか得られず、in vitroの実験ではノックダウン実験を含め進捗が遅延した。
|
Strategy for Future Research Activity |
MPP7が体重に関して2つの相反する作用を持ち、これらが性(雄と雌)によって異なる活性を示すことを示唆している。性ホルモンであるエストロゲンとテストステロンは体重と骨塩量の制御に関することが知られている。体重と骨塩量にも性差が存在する。従って、MPP7が骨密度と体重の両方を類似のメカニズムで制御している可能性もある。今後、MPP7がいかにして体重を制御するのかを解明することが重要である。また、これらの解析がMPP7による骨量の制御機構の解明へと繋がる可能性がある。 MPP7-KOマウスの脛骨と大腿骨には、構造学的あるいは病理学的な異常は検出されなかった。しかしながら、解析した個体数が少なかったこともあり、現在は個体数を増やし経時的な解析などをおこなっている。また、大腿骨と脛骨以外の骨組織(腰椎、足関節、股関節)の解析も重要である。骨染色非脱灰標本を用いた骨形態計測の検討も予定している。 卵巣を摘出すると、雌のマウスでは骨粗鬆症を発症することが報告されている。この骨粗鬆症発症マウスとMPP7-KOマウスとを組み合わせることにより、MPP7の機能をより詳細に解析することも可能である。それ以外にも、骨折モデル、関節炎モデルなどとMPP7-KOマウスを組み合わせた解析が重要である。
|
Causes of Carryover |
ほぼ全額使用できたことから、計画通り使用できたと考えられる。 翌年度もほぼ同額の助成金を研究試薬、実験動物の飼育管理、論文作成時の校正料、掲載料などに用いる予定である。
|