2018 Fiscal Year Research-status Report
The therapeutic potential of GLP-1 receptor antagonists for the treatment of spinal cord injury
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18K09084
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
加藤 裕幸 東海大学, 医学部, 講師 (40348678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 雅彦 東海大学, 医学部, 教授 (40220925)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / アポトーシス / 小胞体ストレス / GLP-1受容体作動薬 / エキセナチド / マクロファージ / オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC) |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄損傷後のアポトーシスにおける小胞体ストレスの関与を示してきた.糖尿病治療薬グルカゴン用ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬に小胞体ストレス応答能増強作用があるため,脊髄損傷の治療薬としてGLP-1受容体作動薬であるエキセナチドの効果を検証する研究を開始した. 10週齢雌SDラットでIH impactorを用いて第10胸椎高位に脊髄圧挫損傷を作成した.治療群では,損傷直後と受傷後7日にエキセナチドを,対照群ではPBSを皮下投与した.エキセナチドによる低血糖の有無を検証するため,血糖値を測定した.損傷前及び損傷翌日より損傷後14日目まで隔日でBBBスコアによる後肢機能評価を行った.損傷脊髄を摘出し,小胞体ストレスの際に発現するGRP78とCHOPを指標として、タンパク定量を行った。また損傷脊髄で凍結切片を作成し,オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)やアストロサイトにおけるGRP78・CHOP陽性率とマクロファージのM1/M2比の比較検討を行った。 現段階までの結果として,エキセナチド投与群においてDay 7以降,対照群と比較し有意にBBBスコアが改善することを確認した.低血糖は発生せず,2群間で血糖値に有意差はなかった. Western blotと免疫染色ではDay 3でGRP78発現量が有意に増加し,Day 14でCHOP発現量が有意に減少し,小胞体ストレス応答能の増強が確認された.OPC細胞数はDay14においてエキセナチド投与群で有意に高かった.また損傷周囲に浸潤したマクロファージに関しては組織障害性のM1型は2群間で差はなかったが,免疫制御や組織修復作用のあるM2型はエキセナチド投与群が早期に有意に高かった. 以上より脊髄損傷後のエキセナチド投与は血糖値への悪影響はなく,ERストレス応答能の増強を通じてOPCのアポトーシスを抑制し,機能回復をもたらしたと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究は,おおむね申請計画書に沿った内容で進行している.SDラットにおける脊髄圧挫損傷モデルを作成し,GLP-1受容体作動薬であるエキセナチドの投与がERストレス応答能の増強を通じてOPCのアポトーシスを抑制し,免疫制御や組織修復作用のあるM2型マクロファージを誘導し,機能回復をもたらすことを確認した. 計画書からの変更点としては,以下が挙げられる:1)機能評価の期間は受傷後28日間を計画していたが,研究を開始すると受傷後7日から有意差が認められたため,14日目までの観察に変更した.2)小胞体ストレスに関わる多くの因子をwestern blotで検討することを計画していたが,研究予算と大学院生の時間を考慮して,研究対象を絞ることにした.正常に折り畳まれなかったタンパク質の処理を誘導するストレス応答を仲介する受容体は3つ存在するが,特にATF6の長期活性化がアポトーシスに直接関わるCHOPの転写を誘導することが知られているため,今回はATF6に注目した.3)炎症性マクロファージのM1・M2比は当初RNAを抽出して,RT-PCRでの強化を計画していたが,RNA抽出中のトラブルで実施できなかった.その代わり,M1マーカーとしてiNOS, M2マーカーとしてArginase1を用いて,損傷脊髄の免疫染色を行い,M1・M2マクロファージを定量化した. 炎症性マクロファージのM1・M2比に関する研究は研究協力者である野口俊洋を中心に現在も継続しているが,それ以外の研究成果は研究協力者である野村慧が現在まとめており,平成31年度中の論文投稿を予定している.
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Strategy for Future Research Activity |
炎症性マクロファージのM1・M2比へのエキセナチドの効果をより詳細に検討するため,新たな脊髄損傷動物を作成する.一部の動物を用いて,蛍光活性化セルソーティングによるM1型とM2型のマクロファージを定量する.損傷脊髄内のマクロファージをM1マーカーであるiNOS, M2マーカーであるArginase1で標識し,セルソーティングでM1型とM2型のマクロファージ数を定量し,回収した細胞からRNAを抽出する.残る動物はマクロファージに関するエキセナチドの作用機序を検証するため,損傷脊髄からタンパク質とRNAを抽出し,M2型への誘導に関わるpathwayを検証する.エキセナチドによるM2型への誘導に関しては,Arginase1, CD206, IL-4の関与が報告されており,これらのmRNAをRT-PCRにより評価する. 本年度の後半は,GLP-1受容体拮抗薬 Exendin(9-39)を用いた研究を行う.今まで同様,SDラットにおける脊髄圧挫損傷モデルを作成し,PBS投与を受ける対照群,エキセナチド投与群,エキセナチドとExendin(9-39)を同時に投与する群を作成する.Exendin(9-39)投与群でエキセナチド単独投与で認められる改善効果が消失することを確認し,エキセナチド投与による改善効果がGLP-1受容体を介するものであることを証明する.小胞体ストレスマーカーであるGRP78やCHOPの発現,マクロファージのM1・M2比,そしてオートファジーのマーカーなどへの影響を検証する計画である.
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Causes of Carryover |
研究に使用する動物・試薬は採用前に購入して研究を開始していたため,本年度の物品・消耗品の費用は計画を大きく下回った.また例年出席しているOrthopaedic Research Society Annual Meetingで研究協力者の野村慧は発表したが,申請者はスケジュールの都合上,参加することができず,旅費も計画を下回った.更に昨年度は論文投稿が間に合わず,投稿費の予算も未執行であった. 本年度はマクロファージのM1・M2比に関する研究,そしてExendin(9-39)を用いた研究の両者で新たな脊髄損傷動物の作成をそれぞれ計画しているため,動物購入費用が必要となる.また,抗体や試薬などの消耗品も昨年度で多くを使い切っており,本年度に補って購入する必要がある.また本年度はOthopaedic Reseach Societyに加え,International Spinal Cord Society 2019 Annual Scientific Meetingにも参加を予定しており,旅費も多くなる見込みである.更に,昨年度の研究成果を論文にまとめており,本年度に英文校正費と論文投稿費が発生することが見込まれ,昨年度と本年度の助成金を計画通り執行することになる見込みである.
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