2019 Fiscal Year Research-status Report
分子機構と臨床情報の統合型データベースに基づく癌骨転移テーラーメード治療指針策定
Project/Area Number |
18K09086
|
Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
若尾 典充 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 医長 (80528802)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 転移性骨腫瘍 / 骨関連有害事象 / 放射線治療 / 分子標的薬 / Runx2 / NFAT1c / IL-11 / MMP-9 |
Outline of Annual Research Achievements |
データベースに登録した計222例の転移性脊椎腫瘍患者のうち、治療介入前から介入後6か月以上経過観察が可能であった163例を対象に解析を行った。内訳は肺がん49例、大腸がん29例、乳がん28例、前立腺がん23例、胃がん10例、腎がん8例、甲状腺がん3例、子宮がん3例、卵巣がん3例、悪性リンパ腫3例、膵がん2例、胆のうがん2例であった。目的変数をCT画像上の骨硬化像とし、説明変数を家族歴、既往歴、出身地、嗜好品、職業、運動、画像情報(MRI, CT, PET-CT)、原発癌、組織型、stage、癌治療歴、分子標的薬使用の有無に設定した多変量解析の結果、放射線治療後の腫瘍縮小に有意に寄与する因子は原発癌(前立腺がん、乳がん、肺がんで腫瘍縮小効果良好。それぞれp<0.05、一方膵癌、胃がん、腎がんの放射線治療後の腫瘍縮小効果は不良)。これは昨年度の結果と同様であった。また転移性脊椎腫瘍の確定診断生検時の検体およびその後の手術時検体を採取できた計15例(肺がん3例、乳がん5例、前立腺がん5例、子宮がん2例)において採取した腫瘍検体を用いて骨芽細胞に関わる転写因子Runx2・破骨細胞に関わる転写因子NFAT1c、腫瘍細胞中IL-11, MMP-9をELISA法で定量した。15例中、手術前に放射線治療を施行したものが9例、施行しないものが6例、すべての症例で各癌腫に応じた分子標的薬が投与されていた。結果すべてのがん検体においてRunx2およびNFAT1cは、生検時と比較し手術検体では20%まで減少しており、放射線治療群では10%まで減少していた。放射線治療の影響は優位(p=0.03)であった。IL-11, MMP-9でも同様に生検時検体に比較し、手術時検体では30%まで減少していたが、放射線治療の影響は優位でなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度までの研究データベース構築と継続により、長期予後の追跡は概ね順調に進んでいる。 有限要素解析は医師が日常診療の合間で行うため、律速因子となっていたが大学院生とともに遅延なく行うことができている。 転写因子、IL-11, MMP-9の定量は一定量の検体をELISA法で解析することにより定量データをデータベース化できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は治療応答性を合理的に説明できる分子機構の解明がテーマであるが、骨芽細胞・破骨細胞の代表的転写因子および腫瘍内のMMP-9,IL-11の定量をあらたに進めた。生検時および放射線・分子標的薬治療後の検体でそれぞれの定量データに大きな変化が見られ、特に放射線治療と分子標的薬を事前に組み合わせた場合には骨代謝そのものが大きく変化し骨形成・骨破壊ともに抑制されていた。今後はランマークを投与した検体でも同様の解析を行い、骨強度が上昇し骨関連有害事象を抑制するための分子機構を治療経過のそれぞれの時点の定量データで合理的に説明できる結果を導きたい。
|
Causes of Carryover |
検体調査のコストが当初予定よりも大幅に安く施行できたため。
|
Research Products
(3 results)