2020 Fiscal Year Research-status Report
分子機構と臨床情報の統合型データベースに基づく癌骨転移テーラーメード治療指針策定
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18K09086
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
若尾 典充 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 医長 (80528802)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 癌骨転移 / 放射線治療 / 分子標的薬 / 有限要素解析 / 骨関連有害事象 / 生命予後 |
Outline of Annual Research Achievements |
データベースに登録した計222例の転移性脊椎腫瘍患者のうち、治療介入前から介入後2年までの追跡が可能であった125例を対象に解析を行った。内訳は肺がん49例、大腸がん29例、乳がん28例、前立腺がん23例、胃がん10例、腎がん8例、甲状腺がん3例、子宮がん3例、卵巣がん3例、悪性リンパ腫3例、膵がん2例、胆のうがん2例であった。目的変数を生存とし、説明変数を家族歴、既往歴、出身地、嗜好品、職業、運動、画像情報(MRI, CT, PET-CT)、放射線治療反応有無(縮小or 不変)、原発癌、組織型、stage、癌治療歴、分子標的薬使用の有無に設定した多変量解析の結果、放射線治療反応性が良好な群は不良群に比較し優位に生存率が高かった。(Kaplan-Meier法、p<0.001)。また原発癌では胃がん、すい癌、胆のうがんが有意に生命予後不良であった。また分子標的薬使用群でも生命予後は有意に長かった。骨修復薬の長期的効果について、CT上の骨硬化を目的変数、説明変数を家族歴、既往歴、出身地、嗜好品、職業、運動、画像情報(MRI, CT, PET-CT)、原発癌、組織型、stage、癌治療歴、分子標的薬使用の有無に設定した。多変量解析の結果、放射線治療後の転移巣骨硬化所見に有意に寄与する因子は原発癌(前立腺がん、乳がん、肺がんで腫瘍縮小効果良好。)と平成31年度報告の短期成績と同様の結果が、長期二年でも確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度までの研究データベース構築と継続により、長期予後の追跡は概ね順調に進んでいる。本年度はCovidの影響があり、通院ができずに情報収集の支障が生じたが、電話による診察で生存か否かは全例で確認できた。 今年度は定期的な通院を、Covid感染に十分配慮し定期的に午後診察の混みあわない時間帯に集中させることで診療データの蓄積を実現したい。 長期データとなったために統計解析を専門家に委嘱しているが、今後多様な切り口で研究結果をまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は癌骨転移と生命予後、これに関わる因子の解析がテーマであった。また生存率が一定以上であれば生命予後と骨転移巣における分子機構の相関を解明することも行いたい。これまで生命予後には骨転移巣の様相よりもより強く原発癌種が影響している結果であったが、年々新規薬剤が登場している分子標的薬はそれとして生命予後を有意に長くさせていた結果は興味深い。個別の分子標的薬に対する新規解析を行う予定である。これらのデータをまとめて、最終年度である今年度は、骨強度が上昇し骨関連有害事象を抑制するための分子機構を合理的に説明できる結果を導く予定である。
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Causes of Carryover |
長期追跡データを収集し、生命予後・骨転移による有害事象を目的変数とした多変量解析と有害事象に関わる分子機構の解明を目的とした臨床研究であるが、今年度はCovidの影響で外来通院による臨床情報収集が予定通りにいかなかった。またこれにともない昨年度計上していた関連経費は償却されなかった。このため、一年研究機関を延長することにより当初の研究計画を完了する予定である。
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