2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K09089
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
細山 徹 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 再生再建医学研究部, 室長 (20638803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 康素 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, ロコモフレイルセンター, 部長 (50501623)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨格筋幹細胞 / 幹細胞老化 / スリーピングビューティーシステム / マウスiPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
サルコペニアは加齢に伴う骨格筋減弱症であり、その予防法や治療法の早期開発は超高齢社会に突入した我が国において喫緊の課題である。近年、骨格筋の恒常性維持において重要な役割を果たす骨格筋幹細胞に生じる細胞老化がサルコペニア発症や増悪の一要因となり得る可能性が指摘されており、注目されている。しかし、骨格筋幹細胞における細胞老化がどのような分子機序で引き起こされるかについては明らかではない。本研究では、マウス遺伝学的手法を用いて、骨格筋幹細胞特異的にそのゲノム中に無作為に変異を挿入する方法により、骨格筋幹細胞の老化を引き起こす誘導因子の同定を試みる。初年度となる今年度は、主に、タモキシフェン投与により骨格筋幹細胞特異的に相同組換えを引き起こすことが可能なPax7CreERマウスおよびゲノム中に無作為変異を誘導し得るスリーピングビューティーマウス(SBマウス)の導入(凍結胚からの復元)、さらにPax7CreERマウスとSBマウスとの交配により得られた骨格筋幹細胞特異的SBマウスの皮膚細胞からのiPS細胞株の樹立、マウスiPS細胞からの筋系譜細胞の分化誘導方法の確立、等を行った。マウスiPS細胞から高効率に骨格筋幹細胞を分化誘導する方法論の確立には至らなかったが、低頻度ながらPax7陽性の骨格筋幹細胞の分化誘導に成功した。分化誘導効率を上げる必要性はあるものの、骨格筋幹細胞特異的SBマウス由来iPS細胞から分化誘導した骨格筋幹細胞にタモキシフェンを投与することで、骨格筋幹細胞特異的に無作為ゲノム変異が挿入されることが期待され、次年度以降に必要な研究基盤技術はほぼ整ったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画の段階では、Pax7CreERマウスとSBマウス、さらにp16ルシフェラーゼマウスを交配することによる3元交配マウスを作出する予定だったが、米国NCIから空輸したp16ルシフェラーゼマウスの凍結胚の状態が悪く、個体復元に至らなかった。また当初は、細胞老化マーカー(p16ルシフェラーゼ)を指標にin vivoイメージングシステムを用いた老化幹細胞同定を行う予定だったが、動物飼育施設のキャパシティの問題や上記の個体復元時の問題により、概算で数十匹~百匹以上の3元交配を必要とする本実験系の成立が困難であることが判明した。そのため、急きょiPS細胞技術を用いた方法に切り替えたため、研究に若干の遅れが生じた。しかし、もともとiPS細胞培養に習熟していたこともあり、比較的スムーズな切り替えができた。来年度以降は、in vitroの系に切り替えたことにより、よりシンプルな実験系で幹細胞老化誘導因子の同定に迫ることが出来ると予想され、本年度生じた遅れを取り戻すことが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験遂行上の種々の問題により、当初予定していたin vivoイメージングシステムによる老化細胞の可視化を断念せざるを得ない状況となった為、その代替え案として、本年度作出した骨格筋幹細胞特異的SBマウスからiPS細胞株を樹立し、in vitroの実験系で幹細胞に無作為ゲノム変異を挿入する方法に切り替えた。この切り替えにより若干の研究の遅れが生じたが、iPS細胞株の樹立はスムーズに進み基盤技術はほぼ確立した為、次年度以降はこのin vitro実験系を用いて、当初の計画通りに骨格筋幹細胞老化誘導機構を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
マウス復元や動物施設棟における種々の理由などにより、当初予定していた研究計画(in vivoイメージングシステムでの解析)を急遽変更し、マウスiPS細胞技術を利用したよりシンプルな方法に変更した。そのため、本年度使用予定額と実際の使用額との乖離が生じ次年度使用額が生じた。しかし、適切な判断により変更した研究計画により、生じていた研究の遅れも本年度の早い時期に取り戻すことができ、次年度繰越金も含めて適切に予算執行できる。
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