2019 Fiscal Year Research-status Report
Immunotherapy for bone and soft tissue tumors
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18K09098
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
生越 章 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (80323963)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨軟部肉腫 / 免疫療法 / 細胞障害性リンパ球 / M2マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究であった滑膜肉腫における免疫細胞の作用について Oike N, Kawashima H, Ogose A et al.Prognostic impact of the tumor immune microenvironment in synovial sarcoma. Cancer Sci 2018として論文発表した。 軟部肉腫において最多である未分化多形肉腫27例、粘液型脂肪肉腫36例、平滑筋肉腫11例、脱分化方脂肪肉腫15例、滑膜肉腫36例について CD8, FOXP3, CD163,PD-L1について切除標本を用いた発現解析を行った。いずれの腫瘍についてもCD8陽性のリンパ球浸潤が様々な割合で確認されたが、未分化多形肉腫、平滑筋肉腫、脱分化型脂肪肉腫に高い発現を認めた。CD163陽性マクロファージは未分化多形肉腫、平滑筋肉腫、脱分化型脂肪肉腫に高い発現が認められた。滑膜肉腫においてはCD8は優位な予後良好因子であった。CD163は逆に滑膜肉腫、粘液型脂肪肉腫、において優位な予後不良因子であることが判明した。 一方でPD-L1は肉腫全般に発現は低かったが、未分化多形肉腫においては優位な予後不良因子であった。特に滑膜肉腫や粘液型脂肪肉腫ではPD-L1自体に発現が極めて低く、これが現在までに臨床研究で明らかになりつつある、現行の免疫チェックポイント阻害剤が肉腫への効果が極めて限定的であることの要因をなす可能性が示された。本研究の概略は2019年に開催された米国AACRにて発表を行い、現在英語論文を作成し、最終校閲に入っている。 CD163陽性マクロファージはほとんどの組織型において有意な予後悪化因子で有ることからマクロファージをターゲットにした治療法の可能性については大いに期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PD-L1は肉腫全般に発現は低く、肺がんのように高発現を来す症例が極めて少ない。このため免疫組織化学の条件設定が必ずしも容易でなく、さらに真に発現が低いのか、組織標本の保存時間に問題があるのかなどの基礎的解析に時間を要した。同様な問題がHLAの発現についても存在し、これらの偽陰性の判断に時間を要した。ようやく安定して免疫組織化学の反応が評価可能になった。一方で組織台帳に脂肪肉腫として登録されている症例に中で、再度標本を精査してみると、脂肪肉腫ではなく、粘液線維肉腫であった、というような症例が少なからず存在し、病理医とともに再度標本の見直しが必要となる症例も存在したために研究の進行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の組織亜型のある脂肪肉腫については以下のような知見を得た。粘液型脂肪肉腫ではほとんどの症例でHLAクラスIの発現が極端に低下しており、同時にCD8陽性細胞の浸潤も極端に少ない。さらにはPDL-1陽性細胞はほぼ存在しない。すなわちこのような症例に関しては現行の免疫チェックポイント阻害剤を利用した治療は効果が少ない理由がこれで判明したと考える。一方で脱分化脂肪肉腫や、多形脂肪肉腫ではPDL-1の発現、CD8陽性細胞の浸潤、HLAクラスIの発現にはばらつきが大きい。さらにはマクロファージの浸潤が多い症例ほど予後が不良であることが全組織型に見られる傾向であった。そのためマクロファージ阻害剤の導入でこれら症例の免疫応答が調整できる可能性を模索して研究を進行している。
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