2019 Fiscal Year Research-status Report
Targeting mitochondrial calcium as a novel approach for osteosarcoma treament
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18K09121
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Research Institution | Plasma ChemiBio Laboratory |
Principal Investigator |
鈴木 良弘 一般社団法人プラズマ化学生物学研究所, 研究部, 代表理事 (80206549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 隆 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (10377492)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 低温大気圧プラズマ照射液 / 骨肉腫 / オートファジー / ネクロトーシス / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアカルシウム(MCA)変調作用で誘発される細胞死モードの解析:骨肉腫細胞は通常の培養条件下でもオートファゴソーム形成ならびにLC3-IIの発現が認められ、定常的にオートファジーが起こっていることを見出した。オートファジー阻害剤である3-メチルアデニン、クロロキンによるオートファジーフラックス抑制によって細胞死が誘発されたことから、この基礎的なオートファジーは細胞保護的に機能していると考えられる。MCAを変調する低温大気圧プラズマ照射液(PSM)はmTOR複合体キナーゼを活性化してオートファジーを抑制することを明らかにした。オートファジー抑制がPSMによる細胞死誘発の要因であることは、骨肉腫細胞にほとんど抗腫瘍効果を示さないTRAILの作用との対比で確認された。TRAILはこの細胞保護的なオートファジーを促進し、準毒性濃度のオートファジー阻害剤の併用投与はTRAILの抗腫瘍効果を著しく増強した。これに対して、PSMの効果はオートファジー阻害剤によって全く影響を受けなかった。一部の骨肉腫細胞株では、ネクロトーシスの特異的阻害剤ネクロスタチン1がPSMの抗腫瘍効果を有意に減少させたことから、ネクロトーシスの関与を検討した。その結果、これらの細胞では、ネクロトーシスに関与するRIP1ならびに RIP3キナーゼの活性化が刺激後10分から顕著に見られたことからネクロトーシスシグナル伝達が惹起されることがわかった。しかし、それぞれのキナーゼのノックダウンでは細胞死誘発が完全に抑制されなかった。準毒性濃度のオートファジー阻害剤単剤は、MCAを上昇させ、毒性濃度またはTRAILと準毒性濃度のオートファジー阻害剤の併用投与ではMCAを減少させ、またストア依存性カルシウム流入の抑制が認められた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、MCA(ミトコンドリアカルシウム)変調と関連する細胞死がどのような性質を持つか(細胞死のモード)を解析して、抗腫瘍効果との関連性を明らかにすることであった。我々は骨肉腫細胞のMCAを変調することによって、細胞のオートファジーを抑制し同時にネクロトーシスを含む非アポトーシス細胞死が誘導されることを見出した。従来MCAの変調による細胞死の誘導としては、シスプラチン等の抗がん剤がストア依存性カルシウム流入の活性化を介してMCAの過剰負荷を誘導しこれによるミトコンドリア統合性の破綻を介してアポトーシスが起こることがよく知られていた。これに対して、PSMはストア依存性カルシウム流入を阻害する一方でMCAの過剰負荷を起こした。この結果は、前年度に、TRAILと細胞膜脱分極剤の併用で観察された結果と一致している。PSMはTRAILに比べてより細胞膜脱分極を強く誘導することや細胞膜脱分極の誘導によってミトコンドリアネットワーク異常が増強されるというこれまでの発見を考え合わせると、PSMが細胞膜脱分極を介して活性化されるカルシウム流入によってMCA変調をおこし、その結果非アポトーシス細胞死を誘導しているというモデルが有力となった。また、これは同時に小胞体からミトコンドリアへのカルシウム輸送モデルにおいて、ストア依存性カルシウム流入を介した輸送とは異なる、細胞膜脱分極を介して活性化されるカルシウム流入経路の存在および細胞内におけるカルシウム流入メカニズムの違いがアポトーシス・非アポトーシス細胞死の分岐に関与していることを示唆した。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞膜脱分極を介して活性化され、MCAの調節に関与するカルシウム流入経路の同定が重要な課題の一つである。前述したようにアポトーシス細胞死はストア依存性カルシウム流入によって誘導される。我々はメラノーマ細胞を用いた実験系においてニンニクやタマネギ由来の抗腫瘍性有機硫黄化合物ジアリルスルフィドがMCAの過剰負荷を介するアポトーシスを誘発し、電位差依存性カルシウムチャネルを阻害するニフェジピン、ベラパミル、ジルチアゼムによってこのアポトーシス誘導が抑制されることを報告している。(Int. J. Mol. Sci., 2020)。 L型チャネル活性化は、ストア依存性カルシウム流入を抑制することが他の細胞で報告されており、骨肉腫でも電位差依存性カルシウムチャネル活性がストア依存性カルシウム流入活性を抑制する可能性が考えられる。これらの考察から、MCAの調節に関与するカルシウム流入経路の有力候補は、電位差依存性カルシウムチャネルである可能性が高い。一部のヒト骨肉腫細胞株でも、L型カルシウムチャネルが発現しており、骨肉腫細胞においてもL型チャネルがMCA変調に関連するカルシウム流入経路であることが考えられる。我々が使用している骨肉腫細胞株では、細胞上にL型チャネルが発現しているという報告がないので、RT-PCRにより、そのサブタイプ別に発現を確認する。発現しているサブタイプがあれば、その遺伝子をRNA干渉法でノックダウンした細胞を作成する。次に遺伝子ノックダウン細胞で、PSMによるMCAの変調、ミトコンドリアネットワークの変化および細胞死に対する影響を調べる。以上の実験を用いてL型カルシウムチャネルの関与を検討する。
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