2019 Fiscal Year Research-status Report
男性ホルモン補充に起因する虚血性心血管疾患に対する生体内NO量制御の有用性の検証
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18K09141
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
坂梨 まゆ子 金城学院大学, 薬学部, 准教授 (80363662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 俊博 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50244330)
筒井 正人 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70309962)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | テストステロン / 虚血性心疾患 / 硝酸ナトリウム / 一酸化窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内の男性ホルモンレベルの低下が認められる中高齢男性においては、男性更年期障害に対してテストステロン補充療法がしばしば施行される。ところが、 テストステロン補充には、心血管疾患に対して「有益である」とする報告と、「増悪する」という相反した報告がなされており、安全性に関して統一した見解は 得られていない。そこで本研究は、テストステロン補充における心血管疾患の増悪作用に着目し、その原因を生体内の一酸化窒素レベルの調整の側面から解明することを目的とする。2019年度は、一酸化窒素合成酵素完全欠損マウス (神経型一酸化窒素合成酵素、誘導型一酸化窒素合成酵素、内皮型一酸化窒素合成酵素のすべてが欠損しているノックアウトマウス) の腎臓を2/3亜全摘することで心筋梗塞を惹起するモデルを用いた実験を行った。心筋梗塞モデルマウスを2群に分け、精巣全摘出による低テストステロン群(高齢男性心筋梗塞モデル)と、偽手術による正常テストステロン群(若年男性心筋梗塞モデル)を作製し、これらのマウスを用いて、体内の一酸化窒素レベル増加による影響を検討した。使用薬物の検討として亜硝酸ナトリウムおよび硝酸ナトリウムの経口投与を行ったところ、両者ともに血中のNOxレベルを増加させ、その作用には有意差を認めなかった。亜硝酸ナトリウムは、劇物で取り扱いに注意を要することから、以降の実験では硝酸ナトリウムを使用することとした。次に硝酸ナトリウムの至適投与量の検討を行い、1日あたり1.8 mgの硝酸ナトリウム投与により、野性型マウスと同程度のNOxレベルを示すことを確認した。以上から確立した条件により、硝酸ナトリウムの長期投与を行ったところ、正常テストステロン群では、心筋梗塞モデルマウスの生存率の有意な改善を認めた。一方、低テストステロン群では、硝酸ナトリウム投与による生存率の有意な改善は認められていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、前年度から継続していた一酸化窒素合成酵素完全欠損マウスの薬物および投与量の条件検討を行い、実験条件を確立した。本条件による心筋梗塞モデルマウスの生存率の検討までは、順調に進捗した。しかしながら2019年末に、当該マウスの次年度以降の使用が困難となったことから、新たな実験モデルの作製が必要となった。そこで研究の推進方策を変更し、2020年1月より野性型マウスを用いた食餌誘発性の生体内一酸化窒素レベル低下モデルによる新たな実験系の条件検討を開始した。この実験系の変更に伴う研究期間のロスは、最小限に抑えられたものと考える。一方、2020年2月下旬以降、新型コロナウィルス感染症流行の影響で研究活動の縮小を余儀なくされ、計画していた実験の一部を予定通りに行うことができていないことから、実施状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度まで使用していた心筋梗塞モデルマウスを研究に用いることが困難になったことから、2020年度以降は、食餌誘発性の生体内NO2-/NO3-(NOx)レベル低下モデルを用いた実験系に変更する。NOxレベル低下モデルは、特殊飼料を手術の一週間前から投与開始した野性型マウスの両側精巣摘出(低NOx+低テストステロン群)、または偽手術(低NOx+正常テストステロン群)により作成する。実験では、動脈硬化の進展により心筋梗塞を発症することに着目し、動脈硬化により生じる血管反応性の低下や、動脈硬化の原因となる血中脂質レベルならびに酸化ストレスの測定を計画している。低NOx+低テストステロンマウス、および低NOx+正常テストステロンマウスは、さらにそれぞれ2群に分け、硝酸塩(無機硝酸塩として硝酸ナトリウム、有機硝酸塩として一硝酸イソソルビドを予定)の長期経口投与による血中NOxレベルの効果について、それぞれの実験で確認することを予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の発生は、実験系の変更に起因する。(1)使用するモデルマウスの変更により、研究分担者在籍施設でのマウス飼育を中止したため、予定よりも飼育費用額が減額となった。(2)年度の途中で実験計画が変更となったので、新たに研究で使用する機器購入の必要が生じた。年度内に使用可能な残額では購入できない機器であったため、次年度購入のために一部予算を繰り越すことにした。 なお次年度使用額は、血管反応性実験に必要な機器類の購入に充てる予定である。
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