2020 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌における免疫応答と血管新生調節因子バソヒビンを標的とした新規治療法の確立
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18K09149
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮崎 保匡 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (80445329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小坂 威雄 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30445407)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管新生 / バソヒビン / 癌化 / 上皮間葉転換 / がん微小環境 / 抗体療法 / 血管新生阻害剤 / 免疫チェックポイント阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
① 前立腺癌細胞株(DU145)のマウス皮下腫瘍モデルを作成して、抗VASH2抗体を投与した結果を解析した。抗VASH2抗体を投与した群では、コントロール群に比べて皮下腫瘍の著しい腫瘍体積縮小を認めた。また、皮下腫瘍の腫瘍組織切片を作成して病理学的に解析した。抗VASH2抗体を投与した群では、著しく腫瘍内の血管密度は減少していた。また腫瘍の分裂能の高さを示すKi-67抗体をもちいて皮下腫瘍の腫瘍組織切片の免疫染色を行った。結果、抗VASH2抗体を投与した群では、腫瘍のKi-67陽性細胞が減少しており、細胞増殖が抑制されていることが判明した。また、癌細胞のアポトーシスを測定するためにTUNEL法を用いて腫瘍組織切片を評価した結果、抗VASH2抗体を投与した群では、有意に癌細胞のアポトーシスが増加していることが判明した。抗VASH2抗体を投与することによって、腫瘍組織の血管新生だけでなく癌細胞の増殖も抑制して癌細胞のアポトーシスが増えていることが判明した。 ② 前立腺癌細胞株(DU145、PC3)、血管内皮細胞株(HUVEC)に対して抗VASH2抗体を投与を行い、マイクロアレイ解析にて発現が変動した遺伝子群を解析した。抗VASH2抗体によって変化が起きる遺伝子を同定して変化する遺伝子群の解析(パスウェイ解析)を行った。パスウェイ解析の結果、いくつかの候補を同定して、リアルタイムPCRによる遺伝子発現の変化の確認を行った。Epithelial Mesenchymal Transition (EMT)関連の遺伝子とangiogenesis関連の遺伝子の発現が抗VASH2抗体を投与することによって変動しており、今後さらに解析をすすめて発現調節のメカニズムについて同定する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
治療標的となり得る分子の同定が進んできており、実際に治療方法として抗体療法が効果がある可能性が得られていると考えられる。標的となる分子に対応した抗体を投与することで癌細胞の増殖と血管の新生を同時に阻害して抗腫瘍効果を発揮する治療薬の開発につながる可能性がでてきている。当初予定していた計画内容より、世界的な新型コロナウイルスの蔓延と国内、特に東京都での新型コロナウイルス蔓延に対する感染症対策のため実験環境が整い辛いことがしばしばあり、実験時間の確保が難しい状態が続いたためやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前立腺癌細胞株と血管内皮細胞株における検討を中心に、発現遺伝子の変化を同定することによりVASH2の発現制御のメカニズムをさらに探ることが必要と考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた計画内容より、世界的な新型コロナウイルスの蔓延と国内、特に東京都での新型コロナウイルス蔓延に対する感染症対策のため実験環境が整い辛いことがしばしばあり、実験時間の確保が難しい状態が続いたことによる使用物品の消耗が遅れたため。 また、研究用試薬において以前購入した共用品の試薬が使用可能であったため、試薬を新たに購入しなかったため。経費として本年度は未請求となった。次年度には試薬が新たに必要となるため、次年度に使用する額として請求する予定である。
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