2020 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌の骨転移における lncRNA の機能解明と新規治療法開発の基盤形成
Project/Area Number |
18K09181
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三沢 彩 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (20598453)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧澤 俊広 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (90271220) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ncRNA / lncRNA / 骨転移 / 前立腺癌 / インテグリン / サイトカイン / 細胞外小胞体 / 癌微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
lncRNA は癌を含む疾患において遺伝子発現を調節する重要な役割を担っていることが知られている。本研究では前立腺癌細胞のRNA シークエンスデータを用いて、 癌の骨転移に関与する長鎖非コード RNA (lncRNA) の同定と機能解析を行った。その結果、骨転移した前立腺癌細胞株で lncRNA HOXA11-AS が高発現していることを見出した。HOXA11-AS は細胞浸潤と細胞増殖を促進し、転移に関わる遺伝子及び特定のサイトカインの発現を制御していることを検証した。公開データベースより転写因子 HOXB13 が HOXA11-AS の上流で機能していることを見出し、HOXB13 と HOXA11-AS が骨転移に関与することが知られているインテグリンの発現を調節していることを明らかにした。臨床サンプルのデータ解析より、インテグリン結合タンパク質 IBSP が骨に転移した前立腺癌で高発現しており、HOXB13 及び HOXA11-AS によって直接制御されていることが示唆された。前立腺癌細胞 PC3 と骨芽細胞 SaOS2 の共培養により、PC3 で過剰発現している HOXA11-AS が SaOS2 において CCL2 及び IBSP を発現誘導していることを見出し、前立腺癌細胞から HOXA11-AS が骨芽細胞に移動し、SaOS2 において遺伝子発現に影響を及ぼしていることが示唆された。そこで、PC3 の培養上清から exosome を分離、解析した結果、exosome を除いた区分に HOXA11-AS が濃縮されている結果となった。この区分には exosomes より小さい exomere として知られる細胞外小胞体が含まれているとされ、HOXA11-AS が exomere を介して癌微小環境における細胞間の情報伝達に関わっていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度末に本研究をまとめた論文が外国雑誌に投稿し、2021年1月に受理された。未使用の研究費に関しては本研究から得られた知見をもとに、lncRNA と癌の微小環境を軸に発展していく方針である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究より、HOXB13 と HOXA11-AS が協調して転移先における細胞の遺伝子発現を制御していることが示唆された。マイクロアレイ解析より HOXA11-AS が制御しているシグナルは主に免疫系に関与する経路であり、癌免疫における lncRNA の役割を明らかにしていく方針である。
|
Causes of Carryover |
昨年度研究を完結し海外へ移住する予定であったが、COVID-19 の影響で国内に留まり、研究を継続する運びとなった。今後、未使用の研究費で研究を継続、発展して行く予定である。
|