2021 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌の骨転移における lncRNA の機能解明と新規治療法開発の基盤形成
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18K09181
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
三沢 彩 国際医療福祉大学, 基礎医学研究センター, 講師 (20598453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧澤 俊広 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (90271220) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | lncRNA / 免疫チェックポイント阻害薬 / T 細胞 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで研究対象となってきた HOXA11-AS は、免疫関連 lncRNA の網羅的解析においてがんマーカーになり得る lncRNA として同定されている (Nat Commun. 11(1):1000, 2020)。令和 3 年度は新たな免疫関連 lncRNA に焦点を当て、以下の実験を行った。 免疫チェックポイント阻害薬を投与した肺癌患者の末梢血単核球 (PBMC) の RNA シークエンス解析より、治療効果が認められた患者 (PR) とがんが進展した患者 (PD) を比較し、in silico 解析より PR で特異的に変動している lncRNA の絞り込みを行った。その結果、PR で高発現している lncRNA として CASC を同定した。 免疫チェックポイント阻害薬の奏効性と相関が認められた CASC に関して、PBMC のどの細胞で発現しているか調べるため、single cell RNA 解析を行った。その結果、PR では CASC は一部の T 細胞サブセットと単球 (Monocyte) で発現が認められた。 免疫細胞における CASC の発現を検証するため、健常人の PBMC より単離した CD4+ T 細胞、及び CD14+ 単球にて発現解析を行った。その結果、 Bulk PBMC と比較して、 CD4+ T 細胞、及び CD14+ 単球で CASC の高発現が認められた。CASC 遺伝子の下流にはがん遺伝子 cMYC 遺伝子の発現領域が存在する。Jurkat CD4+ T 細胞株及び THP-1 単球細胞株に CASC 発現ベクターを挿入して cMYC 及び関連遺伝子の発現解析を行った結果、 CASC の過剰発現による cMYC 及び NAMPT, SIRT1 などのエネルギー代謝関連遺伝子の発現が上昇した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年1月に HOXA11- AS に関連する研究結果をまとめ、一報目の論文を投稿した。本研究は HOXA11-AS 同様、免疫とがんに関連することが報告されている lncRNA CASC に関する研究である。腫瘍免疫とエネルギー代謝という新たな切り口で研究を行っており、これまでの手法とはことなる実験を行っているため、実験系の立ち上げに時間を有した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果より、 CASC は免疫に関連する lncRNA として、免疫チェックポイント阻害薬の奏効と関連している可能性が考えられる。今後は CASC に siRNA を挿入した CD4+ T 細胞及び CASC の発現ベクターを挿入した Jurkat 細胞の RNA シークエンス解析を行い、下流因子や関連経路を明らかにして CASC の作用機序を解明していく予定である。特に、 cMYC 及びターゲットの NAMPT, SIRT1, FOXO1 など NAD+ 経路及びエネルギー代謝に関わる遺伝子に焦点を当てる。 CACS の発現によって T 細胞のエフェクター機構が上昇するか、stem cell memory T 細胞の割合が変化するか、 T 細胞疲弊が回避されるか、免疫チェックポイント因子の発現が変動するかなど解析していく方針である。 CASC はマウスに対応する遺伝子(オーソログ)が存在しないため、本研究はヒトの臨床サンプルを用いた in vitro および in silico 解析、ヒトがん細胞株を用いた in vitro 解析を中心に行う。
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Causes of Carryover |
研究室の移設により、設備の設置、移設先での各種手続きなどにより、実験の開始が遅れた。 また、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、実験が円滑に行えない時期があった。 繰越金は、 エネルギー代謝関連遺伝子のリアルタイム PCR プライマー、siRNA 及び抗体等を購入するために使用する。また、10月に予定している日本癌学会学術総会の参加費、旅費に使用する予定である。
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