2019 Fiscal Year Research-status Report
患者由来のエクソソームを用いた卵巣がん新治療の可能性の検討
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18K09227
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤田 健二郎 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (00452392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬淵 誠士 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00452441)
小玉 美智子 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70791391)
木村 正 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90240845)
橋本 香映 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90612078)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / マイクロRNA / エクソソーム / バイオマーカー / DDS / 腹膜播種 |
Outline of Annual Research Achievements |
エクソソームの核酸医薬の Drug Delivery System(DDS)の Carrier としての可能性を検討した。エクソソームの供給源として、卵巣癌手術の際に摘出する大網に着目し、以下の実験を行った。 卵巣癌手術の際に摘出された大網より、線維芽細胞を分離初代培養し、その細胞上清よりエクソソームを分離抽出した。そのエクソソームを卵巣癌細胞に添加した後にRNAを回収し、cDNA microarray 法で網羅的解析を行い、エクソソームに癌浸潤促進効果がないことを確認した。続いて抽出したエクソソームに腫瘍抑制 microRNA(miRNA)としてmiR-199a-3p を選択し、miR-199a-3pをエクソソームに電気穿孔法で導入し、治療用エクソソーム(M199-exosome)を作成した。続いて作成したM199-exosome の治療効果を検討した。In vitroで培養している卵巣癌細胞株に添加したところ、卵巣がん細胞株におけるmiR-199a-3pは1000倍以上になり、miRNA の良好な取り込みがみられた。M199-exosome の投与によりがん遺伝子c-Metの発現抑制が確認され、下流のシグナルの活性化も抑制され、癌細胞の浸潤能、増殖能が抑制された。さらに卵巣癌モデルマウスを作成し、M199-exosomeを投与、治療効果を判定した。M199-exosome を蛍光色素DiRで標識し、腫瘍における選択性の高い取り込みを確認した。M199-exosome は腹腔内投与のみならず、静脈内投与でも高い治療効果を認め、卵巣癌細胞の腹膜播種を抑制した。 以上、患者大網由来のエクソソームを核酸試薬のDDSをした用いた場合、卵巣がん細胞への選択性と効率の高い核酸の取り込みが期待でき、治療効果が期待できることを証明した。今後の新規の核酸治療への応用の可能性を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画で「本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか?」の問いに対して、立案したのは以下の3つである。 ① 卵巣がんが特異的に放出するexosomal miRNAの同定 ② exosomal miRNAの腫瘍マーカーとしての可能性の検討 ③ エクソソームのDDS(Drug delivery system)におけるCarrierとしての可能性の検討である。 ①と②に関しては昨年度報告した通り、二本論文を発表している(Yoshimura A, Sawada K, et al. BMC Cancer. 2018 Nov 5;18(1):1065. Kobayashi M, Sawada K, et al. J Ovarian Res. 2018 Sep 15;11(1):81.) 令和1年度は上述の通り、エクソソームのDDSとしての可能性を検討し、腹膜播種抑制の可能性を提言し、論文として発表した(Exploring the potential of engineered exosomes as delivery systems for tumor-suppressor microRNA replacement therapy in ovarian cancer. Kobayashi M, Sawada K, et al. Biochemical and Biophysical Research Communications 2020 June 18;527(1):153-161. )。以上、研究計画は順調に遂行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は1年度に続いて、エクソソームのDDSとしての可能性を以下の手順で研究を推進していく。エクソソームの産生源として繊維芽細胞の初代培養を行う。具体的には手術時に採取した大網を用いて、はさみで細切後、コラゲナーゼ処理で腹膜 中皮細胞を取り除いたのちに、トリプシン処方を行うことにより、繊維芽細胞を摘出する。さらに初代培養繊維芽細胞よりエクソソームの抽出を行う。ショ糖 密度勾配遠心法を用いて、純度の高いエクソソームの抽出に取り組む。続いて、令和2年度はエクソソームへのMet siRNAおよび抗がん剤であるPaclitaxel を試みる。外注で作成したsmall RNA と蛍光標識したPaclitaxel を電気穿孔法で作成した繊維芽細胞由来のエクソソームに封入する。具体的には 1μg の試薬を1x10^9個のエクソソームに大阪大学医学部共同研に設置しているGene Pulser Xcell PCシステム(Biorad)を用いて封入する。 さらに作成した“合成エクソソーム”を用いた卵巣がん細胞に対するIn vitro 実験を行う。“治療用エクソソーム”を蛍光色素 PKH26 (Sigma)で標識したうえで卵巣がん細胞株に添加し、その取り込みを共焦点蛍光顕微鏡で確認する。取り込みが確認出来れば、Western blot 法でMet など標的分子の発現抑制ができているか抗がん剤によるアポトーシスが誘導されているか確認する。その確認ができれば、この“治療用エクソソーム”の卵巣がん細胞の浸潤能、増殖能に与える影響をIn Vitro の実験系で検証する。以上の検討を経て、最終的には卵巣がん腹膜播種モデルマウスに対する“合成エクソソーム”の治療効果の検討する。
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